第1484回 フランスラグビー、最高の11月(6) ウェールズを破り、世界ランキングを上昇させたサモア

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■第1シード確保まであと一歩のフランス

 2015年ワールドカップ組み合わせ抽選前の重要な秋の戦い、フランスは苦手の豪州、アルゼンチンにそれぞれ15点以上の差をつけて大勝した。この結果、11月17日、18日の週末の試合を終えた段階での世界ランキングは、首位はニュージーランド、2位南アフリカ、3位豪州、4位フランス、以下イングランド、アルゼンチンアイルランド、ウェールズとなっている。12月3日の抽選会までフランスはあと1試合、イングランドは2試合残っているが、フランスは残る1試合で勝利すれば、イングランドの試合結果に関わらず第1シードとなる4位以内を確保することができる。

■カナダ、ウェールズを破ってフランスに挑むサモア

 さて、第3戦の相手はサモアである。日本の皆様にとってはパシフィック・ネーションズカップで対戦していることからよくご存じの相手であろう。6月の対戦では日本はトライ数で上回りながらも26-27と惜敗、日本と互角であると思っていらっしゃるファンの方も多いであろう。しかし、この秋の欧州遠征ではウェールズでカナダと対戦し、42-12と大勝、そしてウェールズとカーディフで対戦し、26-19と勝利している。サモアはこれまでにワールドカップではウェールズと3回対戦し2回勝利しているが、ウェールズは今年の6か国対抗ではグランドスラムを達成しているのである。

■第2シード入りも夢ではないサモア

 そして注目すべきはサモア自身がこの秋になってから世界ランキングを上昇させ、11月になる段階では10位だったが、ウェールズに勝利してスコットランドを抜いて9位にランクアップしている。8位以内に入ればワールドカップの予選プールで第2シードに入ることができる。サモアにとってはこのフランス戦が欧州遠征最終戦であり、ここで金星をあげれば、第2シードとなる8位以内に入り込むことができる。
 これまでのフランスとサモアの対戦はわずか2回、1999年6月にフランスが南半球遠征をした際に対戦し、39-22と勝利し、2009年11月には欧州遠征してきたサモアをフランスが43-5と一蹴している。過去の戦績はフランスが優勢であるが、今回のサモアはモチベーションが上昇しており、第1シードを確保しようとするフランスにとっては決して油断はできない相手になった。

■ほとんどが国外のクラブに所属、フランスにも5人

 フランスが前週対戦したアルゼンチン同様、サモアも選手のほとんどは国外のクラブに所属している。この日ベンチ入りしている23人の所属クラブはサモア国内はわずか3人、残り20人は文字通り海外組となる。最多はイングランドのクラブで8人、それに続いてフランスが5人、続いてニュージーランド4人、ウェールズ、南アフリカ、日本がそれぞれ1人という内訳であり7か国に分散して選手が活躍している。
 フランスのクラブに所属している5人を紹介すると、フッカーのティー・パウロ(クレルモン)、プロップのセンサス・ジョンストン(トゥールーズ)、ロックのイオセファ・テコリ(カストル)、フッカーのオレ・アベイ(ボルドー・ベグル)、プロップのビリアム・アファティア(アジャン)というメンバーであるが、全員6月の日本遠征に参加していることから日本の皆様はよくご存じであろう。このうち、ジョンストン、テコリ、アベイは先発メンバーとしてスタッド・ド・フランスのピッチに立つ。一方、6月の日本遠征では注目を集めたスタッド・フランセのセンターのポール・ウィリアムズはメンバーから外れている。
 そして忘れてはならないのが日本のサントリーに所属しているトゥシ・ピシである。サントリーでは今季移籍してきた小野晃征やピーター・ヒューワットの陰に隠れた存在ではあるが、サモア代表のスタンドオフを務めている。
 このような環境の代表チームにとって、各国のトップレベルで戦っているフィフティーンが母国を離れて一堂に会すウインドウマンスの存在は大きく、欧州での点線によってチーム力をアップさせているのである。(続く)

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