第118回 スロベニア、マルタと連戦(3) 天王山にむけて2人を代表初選出

■1位通過を狙うスロベニア

 ポルトガルを目指すフランスにとって最大のライバルであるスロベニア。2000年欧州選手権予選は強敵相手の勝負を避け2位、2002年ワールドカップ予選は強敵とほぼ互角の戦いをして2位、そうなると今度の予選は強敵を破ってプレーオフなしの出場権を得ようとしているであろう。第109回の最後でも紹介した通り、スロベニアの初戦はマルタを3-0と破っている。また、1勝もすることなく敗退したワールドカップ後の最初の国際試合ではアウエーでイタリアを1-0と破っている。かつての世界王者フランスを恐れてはいないであろう。

■フランスを慌てさせた2年前の初対戦

 フランスは今までに1回だけスロベニアと対戦をしたことがある。スロベニアも出場した2000年欧州選手権を控えた4月にスタッド・ド・フランスにスロベニアを迎えて親善試合を行っている。フランスが東欧の自由化以降に新たに加わった国と親善試合を行うのは1996年6月のアルメニア、1998年11月のクロアチアに続くものであり、フランスのスロベニアに対する畏敬の念がうかがわれる。
 この試合は予想外の展開で始まった。フランス相手に立ち上がりからスロベニアが攻め、3分と9分にスロベニアがゴールを奪う。結局は後半から出場したダビッド・トレゼゲが63分に1点返し、77分にローラン・ブランが同点ゴール、そして終了間際のロスタイムにトレゼゲが決勝ゴールを決めて勝利をあげたのである。なお、スロベニアの先制点はゼリコ・ミリノビッチによるものである。この試合、日本から古河電工のOBが遠路はるばる観戦のために来仏した。この古河電工のOBの前でのミリノビッチの活躍が翌年のジェフユナイテッド市原への移籍につながっているのかもしれない。

■ガラスとモレイラが代表初選出、代表デビューを期すメクセス

 さて、早くも訪れたグループ1の天王山であるが、この連戦を戦う20人のメンバーの中に、代表初選出となる選手が2人いる。キプロス戦ではマルセル・デサイーとフィリップ・クリスタンバルが組んだセンターバックの乱れが課題となり、今回は誰と誰がセンターバックを組むのかが注目される。10月3日に発表されたメンバーにはセンターバックの候補としてチームの軸であるデサイー、8月のチュニジア戦のメンバーに選ばれながら出場機会のなかったフィリップ・メクセス、そしてウィリアム・ガラスという新たな名前があった。他方、攻撃陣ではランスのダニエル・モレイラも代表に初選出された。

■チェルシーでデサイーとコンビを組むガラス

 2人の代表初選出のうち、ガラスについては、チェルシーでデサイーとセンターバックのコンビを組んでいる選手である。昨年マルセイユからチェルシーに移籍している。奇遇なことにこの移籍は先代の代表ストッパーのルブッフとの交換移籍のような形になっている。チェルシーといえばロンドンのフレンチタウンであり、多くのフランス人の居住する地域である。また、チェルシーのチームはボスマン判決後の欧州を象徴する多国籍軍であるが、そのような土地柄からフランス人のガラスはあっという間に人気者になり、デサイーとのコンビも2シーズン目を迎えるのである。またDF陣ではバンサン・カンデラ、フィリップ・クリスタンバルをメンバーからはずしている。

■代役の代役でチャンスをつかんだモレイラ

 一方、攻撃陣の新顔であるモレイラは代役の代役という形でブルーのユニフォームを着ることになった。前回の対戦時にチームを救ったトレゼゲが選出されていたが、負傷のためにメンバーから外れ、キプロス戦で代表にデビューしたオリビエ・カポがメンバーに入った。ところがカポも負傷したため、招集されたのがモレイラである。ニコラ・アネルカをメンバーからはずし、カポやモレイラを選ぶ、すでに28歳であるオリビエ・ダクールを15月ぶりに代表に復帰させている。
 ガラスもモレイラもフランスサッカーの黄金世代といわれる1977年生まれであり、1997年のワールドユースでは同年のビリー・サニョル、ミカエル・シルベストル、ティエリー・アンリとともに活躍した。スロベニア戦は5月のベルギー戦以来久しぶりの国内の試合である。黄金世代の彼らの活躍が楽しみである。(続く)

このページのTOPへ