第252回 欧州選手権予選を振り返る(1) ワールドカップ惨敗からグランドスラムへ

■2度目のグランドスラム達成

 豪州で開催されているラグビーのワールドカップの陰に完全に隠れてしまった感のあるサッカーの欧州選手権予選のグランドスラムであるが、その偉業は称えられるべきである。本連載第247回でも述べたが、欧州選手権予選でグランドスラムを達成したのは1992年大会予選のフランス、2000年大会予選のチェコの2回しかない。予選の8試合についてはその都度本連載で紹介してきたが、その足跡をたどり、来年の欧州選手権を展望してみよう。

■強豪相手にグランドスラムを達成した1992年大会予選

 1992年大会当時の本大会出場国はわずか8か国。開催国を除くとわずか7チームにしか出場権が与えられていなかった。したがって、予選の1位チームしか本大会に出場することができなかった。1992年大会の予選でフランスはスペイン、チェコスロバキア、アイスランド、アルバニアと戦った。1990年のワールドカップ・イタリア大会でチェコスロバキアは準々決勝に進出、スペインは決勝トーナメント1回戦に進出している。予選前の大方の予想はスペインとチェコの一騎打ちで、ワールドカップ・イタリア大会に出場できなかったフランスはダークホースという位置付けであった。
 ところが、前年のワールドカップでの世界の16強が2チーム存在する激戦区でフランスはあれよあれよという間に連戦連勝。チェコスロバキア、スペインという強豪との対戦で、まずホームで戦うことができたというくじ運にも恵まれたが、これらの強豪チームに対し、ホーム、アウエーとも難なく勝ちを収めたということは高く評価できるであろう。チェコスロバキアに対してフランスはそれまで18回対戦して4勝4分10敗と大きく負け越しており、4勝はいずれもフランス国内のものであり、本大会出場に王手をかけることになった1991年9月4日のブラチスラヴァでの勝利は国外でのチェコスロバキア戦初勝利である。そして本大会出場を手にした1991年10月12日のセビリアでの勝利はそれまで通算5勝5分11敗と大きく負け越していたスペインとの対戦において36年ぶりの敵地での勝利となったのである。

■1996年大会以降は本大会出場が簡単に

 今回の予選においてライバルの力については1992年大会と比較すればやや見劣りする。フランスは第1シードになり、第2シード以下もスロベニア、イスラエル、キプロス、マルタと比較的戦いやすい相手との戦いとなった。しかも、東欧の自由化によるUEFAの加盟国が多くなったものの、1996年大会以降は本大会出場国が16か国となり、予選で1位でなくとも2位になればプレーオフに出場することができる。1992年大会の予選時とは大きく状況は異なり、本大会に出場することは以前ほど難しくなくなった。フランスの欧州における地位も高くなり、今回のグランドスラムは1992年大会予選の時よりも驚きが少ないのは事実である。

■ワールドカップ惨敗後、急速に立ち上がった新監督と新チーム

 それでは、今回のグランドスラムには価値がないのかと言えばそうではない。今回の予選でグランドスラムを達成したのはフランスだけであることはまぎれもない事実である。そして、1992年大会の予選との比較をするならば、チームの始動次期に大きな差がある。1992年大会予選に臨んだチームは1990年ワールドカップ・イタリア大会予選で敗退し、ワールドカップ予選途中で代表監督の座につきながら状況打破できなかったミッシェル・プラティニ監督が率いたチームであった。プラティニ監督は1988年秋の就任直後から新しい選手を試し、1990年9月に予選が始まる段階でほとんどチームの骨格は形成されていた。また、ワールドカップ・イタリア大会には出場できなかったものの、1989年春以降は負け知らずでワールドカップ前の親善試合では西ドイツ、ハンガリーなどの強豪を一蹴している。
 一方、今回の予選は2002年9月に始まったが、2002年6月のワールドカップでは惨敗。しかもワールドカップ前の親善試合でも韓国に勝ったくらいでこれと言った成績を残していない。ワールドカップ前の1年は本大会に出場するような相手との対戦は少なかったからにもかかわらず、黒星を重ね、チームの状態は長期低落傾向にあった。ワールドカップでの敗退後、新監督のジャック・サンティーニが就任したが、予選前には1回しか親善試合の機会はなく、それもチュニジアと1-1のドロー。1992年大会予選時にはバックアップメンバーの調整と言うことでホームでのチェコスロバキア戦の直前にフランスBチームを編成し、5-0という一方的なスコアで破った相手とドローである。
 初代グランドスラム監督のプラティニも就任直後の成績は芳しくなかった。そう考えるとワールドカップ惨敗後に就任したばかりのサンティーニ監督のチームがグランドスラムを達成したことの意義は計り知れないのである。(続く)

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