第342回 欧州選手権直前プレビュー(3) 全31試合が好試合であることを予想

■上位シード国から順に対戦するフランス

 前回の本連載ではフランスの初戦となる6月13日のイングランド戦の予想について解説した。イングランド戦の敗戦を予想しているが、2002年ワールドカップの二の舞にはならないと楽観視していると最後の部分で述べた。今回はその理由を述べるとともに、フランスのイングランド戦以降の展望をしてみよう。
 本大会のグループリーグは上位2チームが決勝トーナメントに進出する。すなわち、もし初戦で勝ち点を奪うことができなくとも、第2戦と第3戦で勝ち点を積み上げれば、決勝トーナメントに進出することは十分に可能である。AシードのフランスはBシード(イングランド)、Cシード(クロアチア)、Dシード(スイス)というようにシード順位の高いチームから低いチームへと順に対戦していく。シード順位から考えれば、フランスがクロアチア戦とスイス戦に確実に連勝するというプランを持っていることも想定できる。クロアチア戦、スイス戦は宿泊地のポルトからはバスで移動する距離であり、飛行機で移動するイングランド戦よりも負担は少ない。

■クロアチアとスイスには最近の対戦で快勝

 クロアチアもスイスも欧州選手権は本大会出場国枠の増加した1996年イングランド大会に初出場し、今回が2回目の本大会出場となる。クロアチアは1998年ワールドカップで3位と躍進し、スイスは今大会予選ではロシア、アイルランドをおさえてグループ10で通過している。決して侮れない相手であるが、フランスにとって近年はいい成績を残している。
 クロアチアとは1998年ワールドカップ準決勝で初対決、先制ゴールを奪われたものの、リリアン・テュラムの連続ゴールで逆転勝ちしている。以後、2回親善試合で対戦しているものの、フランスは危なげなく連勝している。スイスは本連載第227回から第231回で紹介したとおり、昨年夏にジュネーブで親善試合を行っているが、フランスが2-0で勝ち、通算成績を14勝6分12敗としている。

■開催国を含むグループAに有利な日程

 したがって、フランスが決勝トーナメントに進出する可能性は高いが、問題は決勝トーナメントである。筆者はグループリーグの順位はフランスを破ったイングランドが1位、イングランドに敗れたフランスが2位で通過と予想している。決勝トーナメントはグループBを勝ち抜いたチームはグループAを勝ち抜いたチームと対戦する。グループAも激戦区でAシードは開催国のポルトガル、Bシードはスペイン、Cシードはロシア、Dシードはギリシャとなっている。通常ならばグループリーグを1位で通過するか2位で通過するかで、決勝トーナメントの試合会場などの条件が大きく変わることもあるが、今大会は大都市の少ないポルトガル特有の事象が存在する。それは開催都市の数が少ないため、グループAあるいはグループBから決勝トーナメントに進出した場合、いずれもリスボンにある2つのスタジアムで準々決勝を戦うことになるということである。ポルトガルは決勝トーナメントに進出した場合、グループリーグから連続して4試合、リスボン市内で試合をすることになる。グループリーグの序盤でポルトガルがもたつき、結局グループAは1位スペイン、2位ポルトガルと予想しているが、グループAの両チームはグループリーグ最終戦を準々決勝と同じリスボンで戦い、準々決勝までの休息日も一日多いことから、準々決勝でイングランドとフランスが姿を消すと予想している。開催国の属するグループA有利の試合日程、試合会場にグループBのイングランドとフランスが泣くということが想定される。

■勝敗より難しい好試合の予想

 ベスト4はイベリア半島の両国のほかにイタリアとドイツ。ドイツの高評価を不思議に思われる読者の方も少なくないが、グループリーグから準々決勝まで似たタイプのチームとの対戦が続く。6月15日のオランダ戦さえ乗り切れば、準決勝進出も夢ではない。準決勝の組み合わせはスペイン-イタリア、ポルトガル-ドイツ、決勝にイタリアとポルトガルが進出し、イタリアが優勝すると予想している。
 これらの予想が当たるかどうかはさておき、試合の結果を予想することより、その試合が好試合になるかどうかを予想するほうがはるかに難しく、楽しいことである。いよいよ、欧州選手権が開幕する。その名にふさわしい好試合もあるが、凡戦もあるであろう、しかしここはあえて全31試合が好試合である、と願望をこめて予想したい。(この項、終わり)

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