第341回 欧州選手権直前プレビュー(2) イングランドとフランスの意気込みの差

■多くの反響に感謝、フランス-イングランド戦の勝敗予想に多数のメール

 前回の本連載で欧州選手権の全試合の勝敗予想をしたところ、瞬く間に予想以上の数のメールをいただいた。勝敗予想だけではなく、解説が欲しいという多くのメールをいただくとともに、それぞれの試合結果の予想について賛否のご意見をいただき、筆者としても驚くとともに感謝する次第である。特にフランスに関わる勝敗予想に読者の皆様の関心が集中したようであり、今回はこの試合の勝敗予想について解説を加えたい。フランスのグループリーグの試合は、6月13日にイングランド戦(リスボン、ルス)、17日にクロアチア(レイリア、マガリャエス・ペッソア)、21日にスイス(コインブラ、コインブラ・シティ)という日程である。フランス-イングランドという注目の一戦は、イングランドが勝利すると前回の本連載で予想した。読者の皆様からは意外であるとのメールを多数いただいたが、イングランド勝利の根拠はいくつかある。

■イングランド勝利の根拠1:過去の本大会での対戦成績

 まず、歴史をさかのぼれば、フランスはイングランドにワールドカップや欧州選手権の本大会で勝ったことが無い。ワールドカップでは1966年イングランド大会で0-2、1982年スペイン大会で1-3と敗れている。そして欧州選手権では1992年スウェーデン大会で対戦し、スコアレスドローに終わっている。また親善試合でも両チームの最後の対戦となった2000年9月2日のスタッド・ド・フランスでの対戦も引き分けている。

■イングランド勝利の根拠2:準備期間と準備試合

 しかし、筆者が注目しているのはこの試合にかける両チームの準備の差である。まず、準備期間の長さに着目してみよう。本連載第337回で紹介したとおり、イングランドにおいてプレミアリーグが終了したのは5月15日、フランスリーグの終了は22日である。そして両国ともその翌週にカップ戦が行われている。特にフランスは国外のクラブに所属する選手も多いが、国内のスケジュールによって代表チームの始動の時期が変わってくる。フランスもFIFA創立100周年を記念して5月20日にブラジル戦、グランド・モット合宿中の5月28日にアンドラ戦を行っているが、シーズンが完全に終了して試合を行ったのは6月6日のウクライナ戦のみである。しかもウクライナ戦は守備の要マルセル・デサイー、攻撃陣の中心ダビッド・トレゼゲを欠く布陣でベストメンバーを組むことができなかった。一方のイングランドは5月24日からイタリアのサルディーニャで合宿を行い、FAカップのファイナルに進出したマンチェスター・ユナイテッドのメンバーなど数人を除くメンバーが長期の合宿を行い、ベストメンバーを揃えて6月1日には日本戦、5日にはアイスランド戦を行っている。チームの成熟度はイングランドのほうが高いと言わざるを得ない。
 また、イングランドは2月18日には本大会の会場でもあるファロ/ローレのアルガルベでポルトガルと対戦している。結果こそ引き分けであったが、ポルトガルでの試合を経験したということは大きい。翻ってフランスは同日にはフランス代表100周年を記念し、フランス代表にとって史上最初の対戦相手であったベルギーと対戦している。しかしベルギーは欧州選手権予選ではグループ8で3位にとどまり、予選で姿を消しているチームである。

■イングランド勝利の根拠3:宿泊地と試合会場の距離

 そして、初戦を迎えるまでのポルトガルでの宿泊地である。フランスはポルトの近郊のサント・チルソを本拠地として、試合の前日にリスボンに飛行機で移動する。一方のイングランドはリスボン近郊のリンダ・ア・ベルハに滞在する。このように大会、そして初戦への意気込みがイングランドとフランスとでは大きく違うことから筆者はイングランドの勝利を予想した次第である。
 しかし、フランスが初戦で敗れたとしても、セネガルに敗れてそのままアジアを去った2002年ワールドカップの二の舞にはならないと楽観視している。筆者にとってフランスのターゲットは初戦ではなく第2戦以降にあると思えるのである。(続く)

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