第1122回 揺れるフランス、グループリーグで敗退(2) 2002年に大逆転を演じたトルコ

■最初の2試合で先制しながら勝利できなかったトルコ

 前回の本連載ではワールドカップのグループリーグの最初の2試合で1分1敗の勝ち点1となったフランスの決勝トーナメント進出の可能性と、同じ状況から決勝トーナメントに進出した2002年大会のパラグアイの例を紹介した。2002年大会にはグループリーグの最終戦を勝ち点1で迎えながら決勝トーナメントに進出したチームがパラグアイ以外にもう1チーム存在した。それがグループCのトルコである。
 トルコは初戦でこの大会で優勝することになるブラジル相手に先制するものの、1-2と逆転負けを喫する。そして第2戦もコスタリカ相手にまた先制する。しかし、試合終盤に追いつかれてしまい、1分1敗の勝ち点1で最終戦を迎える。この時点での順位は1位が勝ち点6のブラジルで決勝トーナメントを確定しており、2位は勝ち点4のコスタリカ、3位が勝ち点1のトルコ、そして初出場の中国で勝ち点0であり、すでにワールドカップ敗退が決まっていた。2位コスタリカと3位トルコの勝ち点差が3というのは前回紹介したパラグアイと同様である。

■勝ち点3、得失点差3の逆転に挑むトルコ

 最終戦はトルコは敗退が決まった中国と、コスタリカはすでに決勝トーナメント進出を決めているブラジルとの対戦となる。最終戦を迎える段階の順位を確認しよう。首位はブラジル(勝ち点6、得点6 失点1、得失点差+5)、2位はコスタリカ(勝ち点4、得点3 失点1、得失点差+2)、3位トルコ(勝ち点1、得点2 失点3、得失点差-1)、4位中国(勝ち点0、得点0 失点6、得失点差+6)となっていた。最終戦でコスタリカがブラジルに敗れ、トルコが中国に勝利すればトルコはコスタリカと勝ち点で並び、得失点差の争いになる。コスタリカとトルコの得失点差の差は3であり、これもグループBの南アフリカとパラグアイの差と同じである。

■コスタリカが大敗、トルコは大勝

 6月13日に行われたブラジル-コスタリカ戦で、ブラジルは全力回転で立ち上がりからロナウドが連続ゴール、さらにエジミウソンも追加点をあげる。コスタリカも反撃したものの、ブラジルは後半にも得点をあげ、結局ブラジルがゴールラッシュで5-2と勝利した。一方のトルコであるが、こちらも得失点差を意識した戦いで開始早々から中国のゴールをおとしいれ、前半に2点、後半に1点をあげ、3-0と勝利する。この結果、グループリーグが終了した段階で、勝ち点4でコスタリカとトルコが並んだが、トルコは得点5、失点3、得失点差+2、コスタリカは得点5、失点6、得失点差-1となり、トルコが決勝トーナメントに進出したのである。

■大逆転を生んだ韓日大会特有の大会形式

 この大逆転の理由は大会形式にあった。このグループCは韓国で行われていたが、グループCからの勝者は決勝トーナメントで地元日本の所属するグループHからの勝ち上がり組と日本国内で対戦する。グループHの最終戦はグループCの最終戦の翌日に行われるため、ブラジルが決勝トーナメント1回戦の相手を選ぶことができない。通常は同一のグループリーグで1位になったチームと2位になったチームは決勝戦まで対戦がないが、この大会は日本と韓国という海を渡って離れている国の共同開催となったため、決勝トーナメントが変則的なものになった。すなわち、グループA、C、H、Gの勝ち上がりチームが日本で準決勝までの決勝トーナメントを戦い、それ以外の4グループの勝ち上がり組は韓国でもう1つの準決勝までの決勝トーナメントを争う。つまり、決勝トーナメントの相手を選ぶ意味はあまりなく、ブラジルが大勝したのである。
 このように2002年の韓国ではパラグアイとトルコが勝ち点1からの決勝トーナメント進出という奇跡を起こしたが、この大会で勝ち点1で最終戦を迎えたのは両チームだけではなかったのである。(続く)

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