第1121回 揺れるフランス、グループリーグで敗退(1) 韓国で奇跡を起こしたパラグアイ

■3試合連続でノーゴールのフランス

 慣れ親しんだ4-2-3-1システムに戻して攻撃の形は作られたものの、0-2と敗れてしまったメキシコ戦。フランスは大ピンチを迎えた。これまで得意としていたメキシコに敗れたわけであるが、実はフランスにとってこれが初めての北中米カリブ海のチーム相手の敗戦である。さらにフランスはこれで親善試合の中国戦から3試合連続でノーゴール。フランスの3試合連続ノーゴールは2002年ワールドカップのグループリーグ(セネガル戦0-1、ウルグアイ戦0-0、デンマーク戦0-2)以来のことである。

■フランスの決勝トーナメントの可能性

 そしてメキシコ戦と同日に行われたウルグアイ-南アフリカ戦はウルグアイが3-0と勝利する。グループAは勝ち点4でウルグアイとメキシコが並び、勝ち点1でフランスと南アフリカが並んでいる。最終戦は勝ち点4同士、勝ち点1同士が対戦する。勝ち点4同士のウルグアイ-メキシコ戦が引き分けになれば、両チームが決勝トーナメントに進出する。
 フランスが決勝トーナメントに出場する可能性は極めて低い。このウルグアイ-メキシコ戦で勝敗がつき、フランスが南アフリカの勝利することが最低限の条件となる。この場合ウルグアイ-メキシコ戦の敗者とフランスが勝ち点4で並ぶが、この場合得失点差で順位を決めることになる。第2戦を終了した段階で各チームの得失点差はウルグアイが+3、メキシコが+2、フランスが-2、南アフリカが-3である。すなわち、ウルグアイが3点差で敗れるか、メキシコが2点差で敗れた場合でも、フランスが2点差で勝利しなければ得失点差で並ぶことはできない。したがって、ウルグアイ-南アフリカ戦が1点差の試合となった場合、フランスには3点差あるいは4点差で勝利しなくてはならない。(得失点差で並んだ場合、総得点の多い方が上位となり、同じ場合は直接対決の結果、それでも差がつかない場合は抽選となる)

■勝ち点1から決勝トーナメントに進出した2002年大会の2チーム

 ワールドカップの歴史をさかのぼると1982年のスペイン大会から1994年の米国大会までは出場チーム24チームの3分の2にあたる16チームが決勝トーナメントあるいは2次リーグに進出することができた。したがって、1次リーグで3引き分けに終わりながらも優勝した1982年大会のイタリアのような例もあったが、1998年のフランス大会以降は32チームが出場し、半分の16チームしか決勝トーナメントに進むことができない。
 したがって1998年のフランス大会以降、2試合が終わって勝ち点1(1分1敗)という成績で決勝トーナメントに進出したケースは2回しかない。そのいずれもが2002年の韓日大会で起こったのである。

■最後の25分間で奇跡を起こしたパラグアイ

 そのうちの1つがパラグアイである。グループBのパラグアイは第1戦で南アフリカと2-2の引き分け、第2戦でスペインに1-3と敗れる。最終戦を迎える段階で勝ち点6のスペインが首位ですでに決勝トーナメント進出を決め、南アフリカが勝ち点4、勝ち点1のパラグアイが3位であり、4位のスロベニアは勝ち点0でグループリーグ敗退が決まっていた。3位のパラグアイがスロベニアに勝利し、南アフリカがスペインに敗れれば、パラグアイと南アフリカは勝ち点で並ぶが、得失点差や総得点で上回らなくてはならない。パラグアイはこの段階で得失点差は-2、南アフリカは+1とパラグアイが不利である。
 最終戦でパラグアイはスロベニアと、南アフリカはスペインと6月12日に直接対決した。この前日に決勝トーナメント1回戦で対戦するグループEの順位が決まっており、グループBで1位になるとアイルランドと対戦、2位になるとドイツと対戦することになる。すでに決勝トーナメントを手中にしているスペインもドイツとの対戦を避けるために南アフリカ戦は勝ちに来るはずである。したがって、パラグアイにもチャンスはある。
 2試合同時にキックオフされたが、スペインは2度追いつかれたが、南アフリカを突き放し、3-2で勝利する。そしてパラグアイは前半終了間際に先制を許してしまう。パラグアイは最後の25分間で奇跡を起こす。65分に追いつき、74分に勝ち越す。そして84分に追加点を奪い、3-1と2点差の勝利を収める。勝ち点、得失点差でパラグアイと南アフリカは並んだが、総得点でパラグアイが6、南アフリカの5をわずかに上回り、決勝トーナメントに進出したのである。(続く)

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