第1120回 メキシコに完敗、剣が峰に(3) 慣れたシステムで攻撃のリズムをつかむが敗戦

■長距離移動で迎える第2戦

 グループAの第2戦となるメキシコ戦、戦いの舞台はポロクワネのピーターモカバ競技場である。ポロクワネは南アフリカの北東部にあり、第1戦を行ったケープタウンは今大会で最西端にあるので、フランスは最も長い距離を移動することになる。近年のワールドカップはグループリーグの会場がランダムであり、時として長距離の移動になる。今回のフランスのケープタウンからポロクワネへの移動は今大会で最遠距離の移動である。ちなみにフランスは第3戦を中央部のブルームフォンテーンで戦い、グループリーグでの移動距離はかなり長い方である。このようにグループリーグの段階での長距離移動に備え、フランスは本大会直前の親善試合はランス、チュニジア、レユニオンと長距離移動しながらの開催となったが、結果的には振るわない内容であった。
 フランスは港町から高度1300メートルのポロクワネへの長距離移動、メキシコは高地1700メートルのヨハネスブルクから高度を下げての近距離の移動である。移動や高度の面ではメキシコに有利であり、さらにメキシコは高地での試合に慣れている。このように地の利はメキシコにある戦いとなった。

■4-2-3-1システムを復活

 さて、注目のフランスの先発メンバーであるが、前回の本連載で紹介したファンの期待とは異なるイレブンがピーターモカバ競技場のピッチに散らばった。
 まず、システムは親善試合のコスタリカ戦以来4試合続けていた4-3-3システムではなく、それまでの4-2-3-1システムを採用する。本来は4-2-3-1システムを採用するはずであったが、ジェレミー・トゥーラランと守備的MFとしてコンビを組むラッサナ・ディアラの病気による離脱でやむなく4-3-3システムを採用した。このシステムには2つのデメリットがある。まず、守備的MFの役割をトゥーララン1人で負わなくてはならないこと、そしてトップ下の位置の選手が不在となり、攻撃の中心となっているヨアン・グルクフを活かすことができないことである。またトゥーラランは第1戦のウルグアイ戦で警告を受けており、累積警告による出場停止のリスクも抱えている。

■期待のティエリー・アンリ、ヨアン・グルクフは先発から外れる

 このような背景から4-2-3-1システムに切り替えたが、メンバーはGKはウーゴ・ロリス、DFは右サイドにバカリ・サーニャ、中央にウィリアム・ギャラスとエリック・アビダル、左サイドはパトリス・エブラと固定メンバーである。守備的MFはトゥーラランとアブー・ディアビー、攻撃的MFは中央にフランク・リベリー、右にシドニー・ゴブー、左にフローラン・マルーダが入る。FWはニコラ・アネルカである。
 グルクフが先発からはずれ、第1戦は出場しなかったティエリー・アンリも先発メンバーから外れる。しかしながらトップ下に配したリベリーが攻撃の軸となり、立ち上がりからフランスは攻勢に出る。一方のメキシコもフランスのゴールを脅かすがロリスが攻守で切り抜ける。両チームとも第2戦ということで第1戦よりもよい試合内容で前半を終える。フランスにとって唯一の誤算は前半終了間際にトゥーラランが警告を受け、次の南アフリカ戦に出場停止となったことであろう。

■代役ストッパーのエリック・アビダル、痛恨の2失点

 そして後半開始時にアネルカの姿がピッチから消え、アンドレ・ピエール・ジニャックがトップの位置に入る。アネルカの前半の動きは悪くなく、不思議な交代であるが、フランスリーグの得点王であるジニャックにファンは期待する。一方のメキシコは55分に右サイドDFの選手に代えてFWの選手を投入し、FW4人と言う攻撃的な布陣となる。
 そしてフランスにとって弱点が露呈したのが64分、本職でないストッパーのアビダルが、ハビエル・エルナンデスに抜かれる。エルナンデスはロリスもかわして無人のゴールに先制点を決める。フランスはゴブーに代わってマチュー・バルブエナを投入し、同点に追いつこうとする。
 しかしながら、アビダルが78分にパブロ・バレーラのスピードについていけずにペナルティエリア内のスライディングで倒してしまい、PKを献上する。このPKをベテランのギジェルメ・ブランコが決める。フランスは0-2と敗れてしまい、窮地に追い込まれたのである。(この項、終わり)

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