第346回 グループリーグ最終戦のスイス戦(1) フランスリーグ所属選手3人を擁するスイス

■混戦のグループB、全チームにチャンスの残された最終戦

 グループリーグ2試合終えた時点で決勝トーナメント進出を決めたチームがなく、4チーム全てに決勝トーナメント進出の可能性が残されているというのはフランスの所属するグループBだけである。前回覇者フランスの動向に注目が集まるグループBであるが、イングランド戦のロスタイムでの逆転劇により、クロアチア戦で決勝トーナメント一番乗りかと期待も膨らんだが、守備陣のもたつきで決勝トーナメント進出は最終戦のスイス戦に持ち込まれた。数字の上ではフランスが最終戦を迎える段階でトップに立っており、スイス戦に2点差で負けても決勝トーナメントに進出することができる。

■ベテラン大黒柱、ステファン・シャプイザ

 一方のスイスはフランス戦で3点差以上の勝利が必要である。スイスについては昨年夏の親善試合で対戦しており、本連載の第227回から第231回で紹介しているが、その中で本大会での対戦を予見している。大量得点で勝利を狙うスイスにとっての生命線は2人のFWであり、大黒柱は34歳の大ベテランのステファン・シャプイザである。現在は主とベルンのヤングボーイズに所属しているが、1990年から1999年までドイツのボルシア・ドルトムントに所属し、インターコンチネンタルカップで訪日した経験もあることから日本の皆様もよくご存知の選手であろう。ドルトムント時代にはチャンピオンズリーグなどの欧州カップ戦でフランス勢を退けてきた。1992-93シーズンのUEFAカップ準決勝ではオセールとホーム、アウエーとも2-0と同スコアでPK戦を制し、1996-97シーズンのチャンピオンズリーグでは準々決勝でオセールと対戦、3-1、1-0と連勝し、その後、優勝している。フランスのジネディーヌ・ジダンやマルセル・デサイーについてはこの大会が最後と言われているが、シャプイザにとってもこの大会が最後であるのは間違いなく、フランスからゴールを奪って有終の美を飾りたいと考えているはずである。

■フランスリーグで得点ランキング2位のアレクサンドル・フレイ

 そしてスイスにはフランスのリーグに所属している選手が3人いる。最初に、もう1人のFWであるアレクサンドル・フレイである。フレイは2002年のワールドカップ後、セルベット・ジュネーブからレンヌに移籍し、初年度は19試合出場でわずか1ゴールであったが、2シーズン目の今季は29試合出場で19得点という成績を残している。リーグ戦で19得点というのは26得点のジブリル・シセに次ぐ第2位の成績であり、9位レンヌの総得点56のうち3分の1以上をマークしている。フランスリーグの得点王に輝いたシセは昨年秋のU-21欧州選手権予選で長期出場停止を受けているため、今回の欧州選手権にもエントリーしていない。つまり、今回の欧州選手権に出場するフランスリーグ所属選手でもっとも得点をあげているのは、ポルトガル代表として注目を集めているパウレタ(パリサンジェルマン所属で18得点)ではなく、このフレイであり、フランスの守備陣にとっては脅威になるはずである。

■マルセイユの主将ファビオ・セレスティーニとリヨンの守備の要パトリック・ミューラー

 2人目はマルセイユのMFのファビオ・セレスティーニである。2000年にローザンヌからトロワに移籍し、2002年にマルセイユに移籍している。マルセイユではコンスタントに試合に出場し、主将も務め、今季のUEFAカップ決勝進出にも大きく貢献している。スイス代表としてはダイヤモンド型の中盤の底として相手の攻撃をつみとり、攻撃の起点となる。ジダン、ロベール・ピレスの変幻自在の動きを止める大役はセレスティーニに任されている。
 そして3人目がリヨンのストッパーのパトリック・ミューラーである。ミューラーは2000年にグラスホッパー・チューリッヒからリヨンに移籍している。すなわち、リヨンの3連覇全てを経験しており、4季にわたりリヨンのストッパーとしてほとんどの試合に出場している。逆転で3連覇を飾ったリヨンはモナコの優勝を最後の最後でさらったように見えるが、終わってみれば総得点、総失点ともリーグ1位であり、リーグ最少失点を支えたのがこのミューラーである。
 フレイ、セレスティーニ、ミューラーという3人のフランスリーグ所属選手の共通点はチームの柱として活躍し、所属チームも好成績を残している点である。そのような3人を擁するスイスが、3点差でフランスを下すことができるのであろうか。(続く)

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