第345回 決勝トーナメントかけたクロアチア戦(2) フランスの進出はお預け、全チームにチャンス

■イングランド戦翌日の練習試合でマルセル・デサイーがフル出場

 イングランド戦に勝利したフランスはロスタイム逆転の興奮の残る14日の夕方に、イングランド戦に出場しなかったメンバーを中心にポルトガル2部リーグ7位のデポルティーボ・ダス・アベスと練習試合を行っている。試合はフランスが4-0と快勝したが、その中で注目すべきはマルセル・デサイーが90分間フル出場したことであろう。イングランド戦はデサイーの欠場により、リリアン・テュラムをストッパーに起用し、本来ストッパーのウィリアム・ガラスをサイドバックに起用するという布陣を取るとともに、ジダンが主将を務めた。この選手起用がイングランド戦の展開に微妙に影響を与えたことは前回の本連載で紹介したとおりだが、今大会で代表から引退と言われているデサイーが、クロアチア戦に出場するかどうかが試合前の注目の的となった。デサイーを起用するとなれば、右サイドバックの選択(ガラス、ビリー・サニョル)、もう1人のストッパーの選択(リリアン・テュラム、フランク・シルベストル)、左サイドバックの選択(シルベストル、ビシャンテ・リザラズ)などディフェンスラインは大きく変わるのである。

■イングランド戦の先発メンバーと3人を入れ替え

 試合直前までデサイーの起用は流動的であったが、結局デサイーを主将として起用、ディフェンスラインは右にガラス、ストッパーにテュラムとデサイー、左サイドにシルベストルとなり、イングランド戦に出場したリザラズはメンバーから外れた。そしてイングランド戦で肩を負傷した守備的MFのクロード・マケレレも出場が微妙であったが、このポジションにはオリビエ・ダクールが起用された。ここまでは想定内のメンバー変更であったが、驚きは右サイドの攻撃的MFにロベール・ピレスではなく、シルバン・ビルトールを起用したことである。

■セットプレーから先制点

 さて、これまで3戦3勝と相性のいいクロアチアに対し、フランスのファンは楽観的に考えていたのであろう。また、試合会場がフランスからフライトの便のよくないレイリアであったということも重なり、フランス側に割り当てられたチケットは大量に売れ残ってしまった。このような理由により試合会場のマガリャエス・ペッソアはクロアチアのファンが大多数を占めた。フランスにとってはイングランド戦に続き、応援では不利な立場で戦うことになった。しかしながら地力に勝るフランスは試合を支配する。先制点はイングランド戦同様セットプレーから生まれた。22分に左サイドからジダンが放ったFKがクロアチアのイゴーリ・トゥドールに当たってゴールイン、フランスはその後もたびたび追加点のチャンスをつかみながらも最少得点差でハーフタイムを迎える。

■フランス守備陣の混乱に付け込んだダド・プルソ

 ところが後半はフランスの動きが止まってしまう。そして48分にはシルベストルがドバンニ・ロッソに対してファウルを犯し、PKを与えてしまう。イングランド戦ではかつてのチームメイトであるデビッド・ベッカムのPKをストップしたファビアン・バルテスであるが、イタリアのアンコーナに所属するミラン・ラパイッチのPKを止めることはできず、同点に追いつかれる。この失点でフランス守備陣が崩れる。52分には前回の本連載でも紹介したダド・プルソの活躍の場面が訪れ、逆転ゴール。完全にリズムを失ってしまったフランスであるが、イングランド戦に続き、運をつかむ。64分にクロアチア守備陣のGKへのバックパスをダビッド・トレゼゲがカットして無人のゴールに同点ゴールを決める。クロアチアはトレゼゲのハンドを主張したが、認められない。そして後半ロスタイムにはクロアチアが絶好のチャンスを得るが、6分前に交代出場したばかりのイビカ・モルナルの至近距離からのシュートはバーの上を越え、試合はドローに終わる。
 スイスがイングランドに敗れたため、フランスが勝ち点4でトップ、以下勝ち点3のイングランド、勝ち点2のクロアチア、勝ち点1のスイスと続き、全てのチームに決勝トーナメント進出の可能性がある。フランスは引き分け以上ならば決勝トーナメント進出が決まるが、大会を迎える時点で1000分以上無失点であったが、イングランド戦もクロアチア戦も失点しており、どのようにディフェンスを建て直していくのであろうか。(この項、終わり)

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