第350回 準々決勝ギリシャ戦(3) ギリシャに初黒星、連覇ならず

■フランス破れ、ポルトガルを去る

 大番狂わせか、いや試合内容を見れば順当な結果であろう。優勝候補の筆頭と目されていたフランスがDシードのギリシャに0-1というスコアで敗れ、ポルトガルを去ることになった。
 これまでの本連載で紹介してきたとおり、フランスはイングランド戦、クロアチア戦と勝ち点こそ稼いだものの、いずれも負けてもおかしくない内容で、ようやくメンバーとシステムを変えたスイス戦で危なげない勝利を収めることができた。ところが、決勝トーナメントを前にして前回の本連載でも紹介したとおり、守備陣に負傷者が続出した。結局、その守備陣の負傷者がギリシャ戦の敗戦につながってしまった。

■イングランド戦と同じ最終ライン、平均年齢29.9歳のフランス

 サイドバックのビリー・サニョルを欠くフランスの最終ラインは右にウィリアム・ガラス、ストッパーにリリアン・テュラムとミカエル・シルベストル、左にビシャンテ・リザラズというイングランド戦と同じ布陣である。守備的MFには負傷のパトリック・ビエイラに代えて初先発となるオリビエ・ダクール、そしてこれまで通りのクロード・マケレレ、左サイドやや高めの位置にロベール・ピレスを起用した。攻撃陣はトップ下に司令塔のジネディーヌ・ジダン、2トップはダビッド・トレゼゲよりもルイ・サアという声もあったがこれまで通りティエリー・アンリとトレゼゲを起用している。そしてGKはこれまで3試合連続失点をしているとはいえ、経験を買ってファビアン・バルテスを起用する。
 実はこのフランスとギリシャの対戦は今大会出場国中でメンバーの平均年齢が最も高い国(ギリシャ:28.5歳)と2番目に高い国(フランス:28.4歳)の対戦である。しかし先発メンバーについて比較するとギリシャが27.9歳、フランスが29.9歳と逆転する。ギリシャは数人若い20代前半の選手を起用しており、それがこの試合を左右している。

■試合の中心となった左サイドから失点

 試合は大会開幕戦のポルトガル-ギリシャ戦同様、ギリシャが積極果敢な攻撃を見せてあわや、というシーンを演出する。フランスにとって生命線は攻撃力に自信のある左サイド、リザラズ―ピレス―アンリという攻撃力に物を言わせ、左サイドにボールを集める。しかし、この試合唯一の失点もまたこの左サイドから生まれた。フランスが攻勢をかけながら、決定的なチャンスを奪えなかった展開の続く65分、フランスは左サイドのリザラズがドリブルで駆け上がってきたテオドール・サゴラキスに振り切られてクロスを許し、アンゲロス・ハリステアスが見事なヘディングでゴールネットを揺らす。ロスタイムに2点を奪ったイングランド戦を再現する力はフランスには残っていなかった。46年前の初対戦から今まで負けたことのなかったギリシャに敗れ、フランスの連覇の夢は消えたのである。
 1996年大会もグループリーグ最終戦でベストメンバーを見出し、準々決勝も同じメンバーでオランダに対し無失点でPK勝ち、ところがディディエ・デシャンの欠場した準決勝ではその代わりに最終ラインからマルセル・デサイーを起用したために最終ラインを変更し、チェコに敗れている。本連載第347回でファンは1996年大会の再現ではなく2000年大会の再現を望んでいると書いたが、結果的には負傷者によってベストメンバーを崩した試合を最後に大会から去るという点で1996年大会の再現となってしまった。

■フランス・サッカーの鬼門、リスボンで返り討ち

 敗者としてギリシャの戦いぶり、そしてオットー・レハーゲル監督には敬意を表したい。フランスのサッカーにとってリスボンは鬼門であるということは1990年のチャンピオンズカップ準決勝でマルセイユがベンフィカに敗れたことを本連載第266回でも紹介したが、その2年後、カップウィナーズカップ決勝にモナコが進出する。その決勝戦がリスボンのルス競技場で行われ、ドイツのベルダー・ブレーメンに敗れているが、そのときの監督がレーハーゲル監督であった。イングランド監督でかつてベンフィカの指揮を執ったスベン・ゴラン・エリクソン監督にはお返しをすることができたが、ベルダー・ブレーメンの監督だったレーハーゲル監督には返り討ちにあったのである。(この項、終わり)

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