第623回 欧州選手権予選、秋の陣(1) 現在首位のスコットランドと対戦

■序盤が重要な意味を持つ予選の日程

 ワールドカップ終了後間もなく始まった欧州選手権予選、これまでの本連載でも紹介したとおり、フランスはグループBに入り、イタリア、ウクライナ、スコットランドという強豪とともに本大会を目指すことになった。
 代表チーム軽視の傾向が続く中で何とかその威厳を保つために日程面での配慮がなされ、短期間に2試合を行うことが定着した。また、クラブシーンが佳境を迎える春には試合を行わないようにする。その結果、フランスの場合、すべてで12試合行うが、2006年9月初旬に2試合、10月初旬に2試合と最初の2月で3分の1の日程を消化することになる。さらに10月の試合を終えると次の予選の試合は来年の3月末まで予定されていない。

■2試合終了時点の首位はスコットランド

 そういう日程の中で天王山とも言うべき9月6日のイタリア戦に3-1と勝利したことは非常に意味がある。しかしながら、忘れてはならないのはイタリア以外にフランスのライバルとなりうるチームがスコットランド、ウクライナと存在することである。今回の欧州選手権予選にはプレーオフはなく、各グループの2位までに入れば本大会の出場権を得ることができる。第1シードのフランスと第2シードのイタリアが2強であるならば、第2グループは第3シードのウクライナと第4シードのスコットランドであり、両国はフランスもしくはイタリアに対して勝ち点をあげてなんとか2位以内に入ろうとするであろう。その気になる第2グループであるが、ウクライナはまだ1試合しか行っておらず、9月6日にホームのキエフでグルジアと対戦し、アンドレイ・シェフチェンコが先制したものの逆転されるという苦しい展開であったが、終盤に再逆転し、3-2と勝利している。そしてスコットランドは9月2日にホームのグラスゴーでフェロー諸島に6-0と大勝、そして9月6日にはリトアニアとアウエーのカウナスで対戦し、2-1と勝利している。ここまでの勝ち点、得失点差だけで順位をつけるならばグループBの首位はイタリアに勝利したフランスではなく、フランスと同勝ち点で並び、得失点差で上回るスコットランドなのである。

■本大会まであと一歩のスコットランド

 そのスコットランドの10月の戦いは少々ヘビーである。10月7日にはホームでフランス戦、11日にはアウエーでウクライナ戦が控えている。逆にこの2試合を乗り切れば、久しぶりの国際舞台へのチケットをつかむことができる。かつてはワールドカップには必ず出場するが、本大会ではグループリーグで敗退というのがスコットランドの評価であったが、ワールドカップは1998年大会を最後に本大会から遠ざかり、欧州選手権でも1996年大会に出場した後は、2000年大会はイングランドにプレーオフで敗れ、2004年大会もプレーオフでオランダに敗れている。すなわち、本大会まであと一歩のところまで来ており、10年ぶりの本大会にかける意気込みが感じられる。

■参考にはならない最近の親善試合

 フランスとスコットランドの対戦というと本連載の第44回から第48回で紹介したとおり、韓国と日本で行われたワールドカップを控えた2002年3月27日にスタッド・ド・フランスで親善試合を行っている。このときはフランスが両国史上最多の得点差となる5-0というスコアで勝利し、フランスは親善試合で3連勝、そして通算の対戦成績を7勝6敗と勝ち越した。しかし、この勝利は、その3月後の韓国でのフランスの成績を考えるならば、ワールドカップ予選で敗れて新チーム結成間もないスコットランドとの対戦であり、あまり参考にはならない。

■唯一のアウエーでのタイトルマッチでは完敗

 フランスがスコットランドとタイトルのかかったワールドカップあるいは欧州選手権の予選でスコットランドで対戦したのは過去にわずか1回だけ、1990年ワールドカップ予選だけである。この予選でフランスはキプロスにアウエーで引き分け、アンリ・ミッシェル監督が更迭され、ミッシェル・プラティニが新監督となるが、ユーゴスラビアに負け、初勝利を目指してグラスゴーに乗り込む。しかし、1989年3月8日にハンプデン・パークで行われた試合で、モーリス・ジョンストンの2ゴールによりフランスは沈没する。
 タイトルマッチでは勝ったことのない競技場でフランスは勝利することができるであろうか。(続く)

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