第727回 欧州選手権予選、首位攻防戦(2) 3回目の対戦で初勝利を記録した強敵

■リーグ戦終了直後に試合を行うフランス

 欧州選手権予選グループBで4勝1敗勝ち点12同士の首位決戦となるフランス-ウクライナ戦はフランスでリーグ戦が終了したちょうど1週間後の6月2日に行われる。フランスでリーグ戦が終了した翌々日の月曜日に23人の代表選手はクレールフォンテーヌに集結し、練習を開始した。フランス代表選手が所属する欧州各リーグの日程であるが、イングランドはフランスよりも2週間早い5月13日で終了し、5月20日にFAカップ決勝が行われている。イタリアとスペインはフランスリーグ最終戦の翌日の28日が最終節である。すなわち大多数の選手は前日あるいは前々日までリーグ戦を戦っており、気持ちの切り替えも重要であろう。

■リーグ終盤にリーグを中断して戦うウクライナ

 一方のウクライナは21人のメンバーで試合の前日にフランス入りした。ウクライナはフランスの23人よりも少ない21人の選手団であるが、この6月の予選はこのフランス戦だけであるからこの一戦に全力を傾けてくるであろう。21人の所属リーグをみると、17人がウクライナリーグの選手であり、ロシアが2人、イングランドとオランダが各1人となっている。ウクライナリーグは冬季の間は試合ができないため、6月までシーズンが行われる。フランスリーグで最終節が行われた5月26日に第28節が行われ、フランス戦の翌週の6月10日に第29節が行われ、6月17日に最終節が行われる。

■国内リーグ上位チームから大量選出した両チーム

 フランス戦を迎える段階でリーグ首位の名門ディナモ・キエフ、2位につけ近年欧州カップでフランス勢とも対戦しているシャフタール・ドネツク、そして1つ飛んで4位のドニエプロペトロフスク、この3チームから5人ずつが選出されている。
 フランスのメンバーについては前回の本連載で紹介したとおり、23人選出されているが、このうち9人がリーグ優勝のリヨン、3人がリーグ2位のマルセイユの選手である。両チームとも国内リーグで上位のチームから大量の選手が代表チームのメンバー入りしている。
 そしてウクライナのメンバーにアンドレイ・シェフチェンコの名がない。昨年イタリアのACミランからイングランドのチェルシーに移籍したが、その実力を発揮せぬまま、シーズンを終えている。5月19日のFAカップ決勝でチェルシーはマンチェスター・ユナイテッドを下して優勝したが、レイモン・ドメネク監督が視察したこの試合にシェフチェンコはベンチ入りすら果たしていない。

■2試合ともスコアレスドローだった2000年欧州選手権予選

 ウクライナはソビエト連邦の崩壊によって誕生した国であるが、フランスはウクライナとこれまでに3回対戦している。2000年欧州選手権予選で同じグループに入っており、サンドニとキエフでそれぞれ対戦している他、親善試合で1度対戦している。初対決は1999年3月27日のスタッド・ド・フランスであり、両チーム無得点で終わる。そして同じ年の9月4日、今度はキエフで対戦するが、この試合もスコアレスドローとなる。この時の欧州選手権予選は大激戦となり、世界王者フランスに対して2分と健闘したウクライナは最終戦を迎える段階で首位、2位にロシア、フランスは3位であった。最終戦でロシアとウクライナがモスクワで対戦し、ウクライナは試合終盤のロシアGKのオウンゴールで引き分けるが、首位の座をアイスランドに勝ったフランスに奪われ、プレーオフに回ることになった。フランスがベルギーとオランダで開催された本大会でミラクルゴールを連発し優勝したことは記憶に新しいであろう。
 そしてタイトルホルダーとして臨んだ2004年の欧州選手権の直前に、フランスはウクライナをスタッド・ド・フランスに招いて壮行試合を行う。本連載第338回と第339回で紹介しているが、試合終了間際にジネディーヌ・ジダンのゴールで勝ち越し、3度目の対決でようやく勝利をあげている。1990年代以降、東欧の自由化、アジア、アフリカの台頭により、これらの地域の国を中心に多くの国とフランスは初対戦をしているが、3戦目にして初勝利と言うのはウクライナだけであり、いかに難敵であるかを物語っている。
 今回もシーズンが終了した直後で緊張から一旦放たれたフランス、シーズン終盤で緊張の中にいるウクライナと言うことで予断は許さない。(続く)

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