第1147回 2012年欧州選手権予選開幕 (2) ベストメンバーとは程遠い布陣で予選が開始

■ロリアン躍進の原動力ケビン・ガメイロ、初の代表入り

 前回の本連載では9月3日と7日に行われる欧州選手権予選に臨む21人のメンバーを発表したことを紹介した。21人中9人がワールドカップからの復権組、10人がノルウェーとの親善試合に選ばれた選手、それ以外の2人がサプライズであった。サプライズのうちの1人は4年ぶりの代表復帰となったルイ・サアであり、前回紹介したが、もう1人は初めての代表入りとなったロリアンのケビン・ガメイロである。
 ガメイロは昨季フランスリーグで17得点をあげている。ロリアンは1998年に初めて1部に昇格したが、その後2部に降格、2006年に1部に再昇格したが、順位は中位以下で常に2桁順位であった。そのロリアンはこのガメイロの活躍でチーム史上最高の7位になる。ガメイロが初めてこのクラブに1ケタ順位という栄光をもたらしたのである。昨季のフランスリーグの得点王は18得点のマルセイユのママドゥ・ニアンであり、ガメイロはそれに次ぐ得点ランキング2位である。ニアンはセネガル代表であり、ガメイロはフランス人の中での得点王である。
 ガメイロはポルトガル人の祖父を持ち、ポルトガル代表入りを打診されていたが、フランス代表入りを熱望し、それが実現した。ポルトガル系のフランス代表選手というとロベール・ピレス、コランタン・マリティンスなど、ポルトガルサッカーを体現するような名手がおり、ガメイロもその系譜を担っている。今回のワールドカップのアルゼンチン代表で活躍したイグアインはアルゼンチン系のフランス人であり、当時のレイモン・ドメネク監督がフランス代表入りを試みたが、失敗し、アルゼンチン代表を選択されてしまった。イグアインの南アフリカでの活躍は本連載の読者の皆様はよくご存じであろう。ガメイロをポルトガル代表に獲得されることなく、フランス代表入りさせたことは、ローラン・ブラン監督にとっては先制点と評価できるであろう。

■4人が代表試合未経験

 ただし、21人全体を見渡すと頼りなさは否めない。ワールドカップ組に関して言えば、ニコラ・アネルカ、パトリス・エブラ、フランク・リベリー、ジェレミー・トゥーラランというリーダー格の選手たちはワールドカップの際のボイコット騒動により出場停止である。サミール・ナスリ、アンドレ・ピエール・ジニャック、ジブリル・シセは負傷のため欠場している。また、21人のうち今回初代表入りしたガメイロだけではなく、第3GKのセドリック・カラッソ、守備陣のママドゥ・サコとブノワ・トレムリナスもフランス代表として試合に出場したことはない。

■キーマンのラッサナ・ディアラも欠場

 さらに、ワールドカップ前に病気のためメンバーから外れ、災い転じて福という形でノルウェー戦のメンバーに復帰したラッサナ・ディアラも負傷で辞退してしまった。ラッサナ・ディアラの欠場がフォーメーションの変更とチームの混乱を招いたことは本連載の読者の皆様ならばよくご存じのことであろう。ブラン監督はワールドカップ組のリヨンのアントニー・レベイエールとノルウェー戦で代表にデビューしたリールのヨアン・カバイエを招集するが、カバイエも負傷してしまう。カバイエの代わりにノルウェー戦の際に招集されたが試合には出場しなかったブレーズ・マツイディをサンテエチエンヌから呼び寄せた。

■ベストメンバーとは程遠い陣容を率いるローラン・ブラン監督

 このように、ワールドカップ組を呼び寄せたものの、現在最もフランス人として評価が高い選手であり、ボルドーからリヨンに移籍したヨアン・グルクフの名前はない。そしてチームの主柱となるべき選手の出場停止や相次ぐ負傷でベストメンバーとは程遠いメンバー構成である。試合内容がよかったとはいえ、ノルウェー戦でも敗れている。このようなチーム状態でブラン監督は欧州選手権予選の開幕を迎えることになったのである。(続く)

このページのTOPへ