第1294回 アルバニア、ルーマニアと連戦(4) カリム・ベンゼマの活躍でアルバニアを下す

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■欧米諸国よりも早くアルバニアと国交を樹立した日本

 前回の本連載では、アルバニアがワールドカップや欧州選手権の予選で最下位を近年脱出し、今回の予選では台風の目となり、パリサンジェルマン、マルセイユで活躍した主将のロリック・カナを紹介した。
 前々回の本連載でアルバニアは中国だけと国交を結び、半鎖国状態であり、1980年代の東欧の自由化以降に欧米諸国と国交を回復したことを紹介したが、日本の皆様もよくご存じのとおり、日本とアルバニアはそれよりも10年は約1981年に国交を樹立している。当時も日本は鈴木善幸首相で、1978年に米国のスリーマイル島で起こった原発事故でエネルギー政策は大きな懸案であった。自然エネルギーである水力発電に98%を依存しているアルバニアに接近したのは石油ショックで大打撃を受けた日本としては当然であろう。

■日本人にゆかりのあるチームで活躍するアルバニアの選手

 このような日本とアルバニアの政治的な関係もあり、現在のアルバニアの選手には日本の読者の皆様にもなじみの深いクラブで活躍している選手も少なくない。
 例えば、GKのサミール・ウィカニはイタリアのノバーラに所属しており、日本の森本貴幸のチームメイトである。カナ同様、コソボ出身で幼少時にベルギーに移住、アルバニア以外にベルギーやセルビアなどの代表入りの道もあったがアルバニアを選択した。またCFのエリオン・ボグダニはイタリアのチェゼーナの選手であり、今年の初めまで長友佑都とともに戦っていた。

■守備陣に不安の残るフランスの先発メンバー

 国外組も里帰りし、ワールドカップ出場に望みを託すフランス戦にティラナのケマル・スタファ競技場は2万人の観衆で満員になった。アルバニアもこの第二次世界大戦の英雄の名を冠した競技場では12試合連続で負けなしである。ティラナの日中の気温は35度を超え、暑い中で試合が行われる。  白地に紺の横縞のユニフォームのフランスの布陣であるが、GKはウーゴ・ロリス、DFは右からアントニー・レベイエール、ヨアン・カブール、エリック・アビダル、パトリス・エブラ、MFは守備的な位置にヤン・エムビラと主将のアルー・ディアラ、攻撃的な位置には中央にサミール・ナスリ、右にフローラン・マルーダ、左にフランク・リベリー、そしてFWは1人でカリム・ベンゼマである。

■守備の不安を打ち消したカリム・ベンゼマの活躍

 注目はDFラインで右サイドには発熱上がりのバカリ・サーニャを外してレベイエールを起用、懸案のストッパーは若いカブールと本職はサイドDFのアビダルで臨む。守備陣に不安が残ることから何としても先制点が欲しい攻撃陣はナスリ、リベリーと役者がそろった。その攻撃陣が期待に応えた。立ち上がりからフランスはエンジン全開で攻撃を続ける。早くも11分、最前線のベンゼマが相手ボールを奪って、20メートル弱の位置からシュート、このシュートが決まり、フランスは先制点をあげる。さらに18分にもエムビラがトップのベンゼマにパスを送る。オフサイドライン上で受けたパスをベンゼマはエヌビラに戻し、エヌビラがシュートしてフランスは早くも追加点を奪った。ベンゼマの活躍でフランスは2点をリードしてハーフタイムを迎える。
  後半立ち上がり早々の47分、アルバニアはロングボールでフランスのゴールを狙う。後方からのロングボールのターゲットはエースのボグダニ、アルバニアの背番号15をマークするのはカブールとアビダルであるが、心配した通り、ロングボールに対してうまく対処できずに、ボグダニにボールをさらわれ、ボグダニのシュートはロリスの股間を通り抜け、1点差に詰め寄られる得点を献上してしまう。
 フランスはその後45分間、前半と同じリズムで試合を進め、2-1と勝利する。台風の目となったアルバニアを下したフランスは首位をキープ、そして注目の2位争いのベラルーシ-ボスニア・ヘルツェゴビナ戦はボスニア・ヘルツェゴビナが勝利し、フランスとの勝ち点を3のままキープして2位に浮上したのである。(続く)

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