第1309回 欧州選手権予選フィナーレ(3) アルバニアに完勝、ボスニア・ヘルツェゴビナとの決勝へ

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■出場停止で主力選手を欠くアルバニア

 カリム・ベンゼマ、フランク・リベリー、バカリ・サーニャと言う主力選手の負傷離脱により大幅なメンバー変更を余儀なくされたフランス代表、ほぼ1年ぶりの2トップでアルバニア戦に臨む。
 半ば鎖国状態であったアルバニアはかつては欧州の中でも弱小国であったが、近年は他国へ移籍する選手もおり、それとともに実力を高めてきたことは本連載第1293回と第1294回で紹介した通りである。そして今予選では台風の目となった。9月2日のアウエーでの戦いもベンゼマの2得点により2-1とフランスはようやく逃げ切っている。
 しかし、アルバニアは9月6日のルクセンブルク戦で1-2と敗れ、ルクセンブルクに今予選初の白星を献上してしまう。さらにこの試合でアンシ・アゴリ、ボグダニの2人がレッドカードで退場してしまう。また主将のアルティン・ララは警告を受け累積警告数が2となる。そのため、この3人はフランス戦は出場停止となる。アゴリはウクライナのクリブバス・クルビーイ・リフ、ボグダニはイタリアのチェゼーナ、ララはドイツのハノーバーにそれぞれ所属する国外組である。アルバニアはルクセンブルク戦の敗戦で気落ちしているところに加え、主力選手不在の中でアウエーでフランスと戦わなくてはならない。アルバニアは負傷を押してロイック・カナが出場しキャプテンを務める。

■フローラン・マルーダの先制点

 フランスにとってボスニア・ヘルツェゴビナ戦が決勝であるならば、このアルバニア戦はいわば準決勝である。会場のスタッド・ド・フランスは3階席に空席が目立ち、6万7000人の観衆が集まり、パリサンジェルマンのユニフォームを着た親子の姿も見える。試合開始前の選手紹介ではパリサンジェルマンとマルセイユに所属したロイック・カナに大きな名誉のブーイングが浴びせられる。
 試合は、立ち上がりからフランスがテンポよく攻め込む。2トップの右側のロイック・レミーが右サイドからクロスをあげると、左サイドのMFのフローラン・マルーダがシュートを放ち、ネットを揺らし、11分にフランスが先制点。アルバニアも反撃を試みるが、攻撃が組織的ではなく、なかなかシュートが枠に収まらない。一方、カナを中心とする守備陣はフランスの攻撃を組織的に封じ込める。

■サミール・ナスリの活躍でロイック・レミーが追加点

 フランスの攻撃の軸はサミール・ナスリ、右サイドのMFであるが、グラウンドを前後左右に走り回る。フランスの追加点は38分、ナスリがドリブルでアルバニアの選手の間をすり抜け、トップのレミーにパスを出す。このパスをレミーは強烈なシュート、アルバニアGKが反応するも、体にぶつけるところが精一杯で、ゴールネットに吸い込まれる。2点リードした後にアルバニアはロングシュートでフランスゴールを襲うが、ウーゴ・ロリスがCKに逃れ、フランス2点リードでハーフタイムを迎える。

■負傷による交代出場のコンビが3点目

 後半に入り、フランスにはアクシデントが続く。左サイドDFのパトリス・エブラが負傷退場、さらに守備的MFのヨアン・カバイエも負傷する。左サイドの控えを入れていなかったブラン監督は本来は右サイドのアントニー・レベイエールを左サイドに入れ、カバイエに代わってマルバン・マルタンを投入する。もし、先発メンバーの右サイドにマチュー・ドビュッシーではなくレベイエールを入れていたら、左サイドのエブラの負傷時にレベイエールを左サイドに動かし、代表デビューとなるドビュッシーを試合の途中から投入することができただろうか。
 そしてこの交代出場してきた2人は予想外の活躍をする。62分にはレベイエールがオーバーラップしてきたところをターゲットにマルタンがパスを送り、GKと1対1になったレベイエールが代表初ゴールを決める。
 3-0と言う完勝を収めたフランスは、いよいよボスニア・ヘルツェゴビナと決勝を争うことになったのである。(続く)

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