第1310回 欧州選手権予選フィナーレ(4) 「決勝」でボスニア・ヘルツェゴビナに追いつき、本大会出場決定

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ともにベストゲームだった10月7日の準決勝

 10月7日、フランスは主力選手を負傷のため欠きながらもアルバニアに3-0と完勝する。フランスのライバルであるボスニア・ヘルツェゴビナも同じ日にルクセンブルクにホームで5-0と勝利している。今大会の予選で両チームはこれが9試合目であるが、この10月7日の結果は両チームとも最も多くの得点を奪った試合となった。
 このように格下相手のホームゲームとはいえ、ベストゲームで準決勝を乗り切った両チームが10月11日にスタッド・ド・フランスで雌雄を決する。フランスにとってワールドカップや欧州選手権の予選の最終戦で直接対決となるのは、1994年ワールドカップ予選のブルガリア戦以来のこととなる。この時はホームの試合で引き分け以上でワールドカップ出場というフランスが後半のロスタイムに勝ち越し点を奪われ、米国行きを逃している。今回もまた引き分け以上で本大会出場、しかもホームゲームである。

■アルバニア戦とシステムもメンバーも変えたローラン・ブラン監督

 すでに18年前の悪夢を知っている世代は監督のローラン・ブランだけである。そのブラン監督はこのボスニア・ヘルツェゴビナ戦に大方の予想とは異なるメンバーを起用してきた。負傷した主力選手はこのボスニア・ヘルツェゴビナ戦も不在である。アルバニア戦ではパトリス・エブラ、ヨアン・カバイエが試合の途中で負傷退場し、心配されたが復帰する。
 GKはウーゴ・ロリス、DFは右サイドにはアルバニア戦では途中交代で代表初ゴールをあげたアントニー・レベイエール、中央にアディル・ラミとエリック・アビダル、左サイドはエブラとなる。負傷を抱えたアビダルを起用した。そして中盤以降はシステムも変える。守備的MFはヤン・エムビラ1人に任せ、攻撃的な位置にカバイエとサミール・ナスリ、そして両翼には右にジェレミー・メネス、左はフローラン・マルーダとなる。攻撃陣は1トップでロイック・レミーが1人で陣取る。このように4-4-2システムから4-1-2-3システムへと変更し、負傷者や出場停止となる選手がいるわけではないが、アルバニア戦と先発が3人も入れ換わっている。

■パリの魔術師サフェット・スシッチ率いるボスニア・ヘルツェゴビナが先制

 一方のボスニア・ヘルツェゴビナを率いるのはかつてのパリサンジェルマンの名選手のサフェット・スシッチである。そして主将はサック念案でモンペリエに所属していたエミール・スパヒッチである。現在のボスニア・ヘルツェゴビナも、魔術師と言われたスシッチの系譜を受け継ぎ、テクニシャンぞろいである。1年前のサラエボでの戦いはフランスが2-0と勝利したが、この「決勝」でフランスはボスニア・ヘルツェゴビナに圧倒されてしまう。開始早々、右サイドのレベイエールがピンチを招く。フランスは緊張気味でボールを前に運ぶことができず、1トップのレミーは孤立する。一方、ボスニア・ヘルツェゴビナの1トップのエディン・ジェコはたびたび好機をつかむ。そして40分にはFKからジェコが豪快にゴールネットを揺らす。立ち上がりから動きが悪く、前半残り5分となったところでの失点はフランスに重くのしかかった。

■サミール・ナスリの活躍で同点に追いつく

 後半に入ったところでボスニア・ヘルツェゴビナはGKを交代させる。また、60分過ぎに何とか同点に持ち込みたいフランスはマルバン・マルティン、地元パリサンジェルマンのケビン・ガメイロを投入する。このあたりから少しずつリズムを取り戻したフランスはようやく攻撃を開始する。そしてこの日も攻撃の中心となって豊富な運動量を誇るナスリがペナルティエリアにボールを持ち込んだところをスパヒッチがファウル。主審はペナルティスポットを指さす。このPKを決めたのはジェコのマンチェスター・シティ(イングランド)でのチームメイトでもあるナスリである。
 フランスはその後のボスニア・ヘルツェゴビナの攻撃をしのぎ、1-1のドローでグループDの首位となり、6大会連続となる欧州選手権出場を決めたのである。(この項、終わり)

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