第1413回 開催国ウクライナと対戦(2) フランスの6年ぶりの勝利は開催国相手の初勝利

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ドネツクで行われた昨年6月の親善試合

 前回の本連載で紹介したとおり、フランスは、最近の欧州選手権、ワールドカップで初戦に引き分けた後、連敗しグループリーグで敗退している。さらに、フランスは欧州選手権、ワールドカップでは開催国に勝利したことがない。
 このようにフランスにとって鬼門ともいうべきウクライナとの試合は6月15日にドネツクのドンバスアリーナで行われる。近年のチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグで活躍目覚ましいシャフタール・ドネツクの本拠地のこの巨大競技場は2009年にオープンし、欧州でも有数のハイランクのスタジアムであると評されている。このスタジアムでフランスはほぼ1年前の2011年6月6日にウクライナと親善試合を行っている。この試合は欧州選手権予選を戦っていたフランスが東欧勢対策としてベラルーシ、ウクライナ、ポーランドを転戦したもので、本連載の第1259回と第1260回で紹介している。この試合は終盤にゴールラッシュを見せ、4-1と勝利している。また、この試合は3連戦の第2戦ということで、若手中心のメンバーで戦い、今回の欧州選手権のメンバーにもなっているユネス・カブール、マルバン・マルタンが代表にデビューしている。

■サイドを重視し、ジェレミー・メネスとガエル・クリシーが先発

 さて、試合前の雷雨も一段落し、満員のスタジアムに姿を現したフランス、4-0と大勝したエストニア戦、19本のシュートを放ってサッカーの母国を圧倒したイングランド戦は同じメンバーが先発したが、このウクライナ戦はメンバーを2人だけ入れ変えた。GKはウーゴ・ロリス、DFは右にマチュー・ドビュッシー、中央にアディル・ラミとフィリップ・メクセス、左にガエル・クリシー、守備的MFはアルー・ディアラ、攻撃的MFは右がヨアン・カバイエ、左がフローラン・マルーダ、そしてFW人は右にジェレミー・メネス、左にフランク・リベリー、中央はカリム・ベンゼマである。
  左サイドDFがパトリス・エブラからクリシーに、右サイドのFWがサミール・ナスリからメネスに代わっており、サイドからの攻撃を強化しようとするローラン・ブラン監督の意図が伝わってくる。

■試合開始4分で雷雨のため、50分以上中断

 さて、試合は雨の中キックオフ、しかし、開始4分立ったところで強い雨に加えて雷鳴が鳴り響く。選手並びに観客の安全を考慮し、審判団は試合を中断し、50分以上の中断ののち、試合が再開されるというアクシデントに見舞われた。
 50分間の中断ののち、ドロップボールで試合は再開される。フランスは再開後からボールを支配し、目論見通りにサイドからの攻撃を仕掛ける。10分には右サイドのドビュッシーが強烈なシュートを放つが得点ならず、17分にはメネスがゴールネットを揺らすが、惜しくもオフサイドの判定。その後もフランスは試合を支配し、39分にはナスリのFKをメクセスが頭で合わせるが、これも得点には結びつかない。スコアこそ動かなかったものの、フランスは再三の好機をつかみ、圧倒的優勢の中でハーフタイムを迎えた。

■後半に入ってフランスが目の覚めるようなゴールで完勝

 後半に入っても試合を支配したのはフランスであった。そのフランスのシュートをよく防いだのがウクライナのGKのアンドリー・ピヤトフである。ピヤトフは地元シャフタール・ドネツクに所属し、2009年のヨーロッパリーグの優勝、そして国内リーグの4連敗も貢献している。地元の大観衆の前でゴールを許すわけにはいかない。昨年の親善試合で終盤に4得点を奪われた悔しさをよく知っている選手の鬼気迫るセービングが光る。
 この攻守のGKを破ったのはこの日先発に起用されたメネスであった。53分、左サイドからリベリーがペナルティエリア内のベンゼマにパス、ベンゼマが後方にパスしてきたところをメネスが強烈なシュート、フランスが先制する。フランスの国際大会本大会での先生は2006年ワールドカップ決勝のジネディーヌ・ジダン以来のことである。
 さらにその3分後、今度はベンゼマからのパスをカバイエがピヤトフの位置をよく見てシュートを決めて追加点。
 フランスは開催国ウクライナを2-0と下す。長いフランスの国際大会の歴史の中で初めて開催国に勝利したのである。
 そしてフランスは2006年ワールドカップ準決勝のポルトガル戦以来8試合ぶりの国際大会本大会での勝利をあげたのである。(この項、終わり)

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