第1418回 スペイン相手に沈黙、またも惨敗(3) シャビ・アロンソ2ゴール、フランス完敗

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■意外なメンバー起用となったDFライン

 決勝トーナメント初戦の準々決勝で王者スペインと戦うフランス、スウェーデン戦の予期せぬ敗北、さらにストッパーのフィリップ・メクセスの出場停止ということもあり、フランス代表の首脳陣の表情はさえない。
 このような状況で通常のシステム、メンバーで戦ったのでは勝機は廻ってこない。さて、フランスの布陣であるが、GKは主将のウーゴ・ロリス、ほかに選択肢は考えられない。DFラインは中央のストッパーにアディル・ラミとローラン・コシールニで前回の本連載で紹介したとおり、これ以外に選手がいない。そして驚きは両サイドバックである。左は経験が豊富なパトリス・エブラの起用も予想されたが、グループリーグのウクライナ戦とスウェーデン戦で起用されたガエル・クリシーに落ち着く。
 右サイドはグループリーグ3試合でフル出場したマチュー・ドビュッシーかと思われたが、最終ラインにはドビュッシーの姿は見当たらない。右のサイドバックは今大会初出場となるアントニー・レベイエールが務める。レベイエールは大会直前に行われた親善試合でも3試合中1試合しか出場しておらず、その前に代表の試合に出場したのは昨年11月のベルギーとの親善試合だけである。予選の終盤は試合に出場していたが、予選を突破してから本大会までに行われた親善試合では6試合中2試合にしか出場していない。

■好調なメンバーをそろえたMF陣

 中盤は3人、中盤の底にはヤン・エムビラ、スウェーデン戦に次ぐ先発出場となる。攻撃的な位置には右にヨアン・カバイエ、左にフローラン・マルーダのコンビである。このコンビはイングランド戦、ウクライナ戦とフランスがいいリズムで戦った試合のメンバーである。

■本来はDFのマチュー・ドビュッシーをFWで起用

 そして攻撃的な位置には3人、中央は今大会に入って決して良い結果を残していないがスペインのレアル・マドリッドに所属するカリム・ベンゼマにすべてを託す。また左サイドは今季所属するバイエルン・ミュンヘンで無冠に終わり、この欧州選手権にかけるフランク・リベリーがベンゼマ同様本大会に入ってから4試合連続で先発メンバーになる。驚きは右のFWである。イングランド戦はサミール・ナスリ、ウクライナ戦はジェレミー・メネス、スウェーデン戦はハテム・ベンアルファとなかなか固定しない。スウェーデン戦でトップ下を務めたナスリかウクライナ戦で得点をあげたメネスが出場すると思われたが、なんとDFのドビュッシーをこの位置に起用する。

■ボールを支配したスペイン、シャビ・アロンソが2ゴール

 このような苦心の先発メンバーであったが、スウェーデン戦同様上から下まで純白のユニフォームで挑んだフランスは、試合を一方的に支配される。グループリーグの3試合で圧倒的なボール支配率をベースに次々とシュートを放ったフランスであるが、この試合はスペインのボールを完全に支配されてしまう。スペインは得意のパスだけではなくドリブルでもフランスを圧倒、次々とシュートを放ち、フランスの3倍以上の13本のシュートをロリスの守るゴールに浴びせた。
 スペインの先制点は19分、左サイドバックのジョルディ・アルバが攻め上がり、マークしていたドビュッシーが交わされクロスをあげられる。ファーサイドにいたシャビ・アロンソは完全にノーマーク。簡単にヘッドで合わされてしまったフランスは先制点を許す。フランスの反撃は極めて限られており、32分にFKをカバイエが蹴ったが、スペインの主将のイケル・カシージャスに難なくセーブされる。
 後半に入っても状況は変わらない。スペインがボールをキープし、競り合いの少ない試合となった。不安要因であった2人のストッパーはセスク・ファブレガスをトップにおくスペインの攻撃に対して難なく対応したが、ボールがつながらない。
 追加点を狙うスペインはストライカータイプのフェルナンド・トーレスをファブレガスに代わって投入する。そして最少得点でスペインが逃げ切るかと思われたロスタイムにまたスペインはペドロがレベイエールに倒されてPK。このPKを代表100試合目のシャビ・アロンソが決める。スペインに完敗したフランスは準々決勝敗退となったのである。(終わり)

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