第1417回 スペイン相手に沈黙、またも惨敗(2) 最低の成績でグループリーグ突破、ストッパー問題浮上

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■1勝1分1敗での突破は最低の成績

 過去の欧州選手権、ワールドカップの予選並びに本大会ではフランスはスペインに5勝1分と圧倒的に優位な戦績を残している。しかしながら、2008年以降の親善試合では連敗しており、4年前の欧州選手権と2年前のワールドカップで優勝しているスペインは今回も優勝候補筆頭である。グループリーグでは初戦こそイタリアと対戦してドローに終わるが、第2戦のアイルランド戦は4-0と大勝、さらに第3戦のクロアチア戦も1-0と勝利してグループ首位突破を決める。
 一方のフランスであるが、イングランド戦は試合内容で圧倒するが、1点どまりでドロー。負けに等しい勝ち点1であった。そして第2戦のウクライナ戦はワールドカップ、欧州選手権の本大会で初めて開催国に勝利し、完璧な内容であり、このままの勢いですでにグループリーグ敗退が決まったスウェーデンを一蹴するかと思われたが、決定力不足で、逆にスウェーデンに2点を許し、0-2と敗れる。1勝1分1分けでのグループリーグ突破は今大会ではグループAのギリシャと並ぶ最低の成績である。また、フランスの過去のワールドカップ、欧州選手権の本大会でグループリーグを突破した際の成績を見ても1勝1分1敗でのグループリーグ突破は1982年ワールドカップの一次リーグ以来2度目のことである。

■フィリップ・メクセス、累積警告で出場停止

 さらにフランスにとってはこのスウェーデン戦で手痛いミスを犯している。それは68分にストッパーのフィリップ・メクセスが危険なタックルで警告を受け、累積警告で次の試合に出場停止となってしまった。本連載第1406回で紹介したとおり、今回のフランス代表はストッパーをメクセス、アディル・ラミ、ローラン・コシールニーの3人しか登録しておらず、さらに他のポジションの選手でストッパーを務めることができる選手もおらず、この3人だけで中央の守備をまかなうことになっている。負傷、警告などでストッパーが足りなくなる危険性はあったが、それを承知でストッパー出身のローラン・ブラン監督はメンバーを選出したが、その危惧が現実のものとなった。

■3人目のストッパーはローラン・コシールニー

 祖父がポーランド人であるコシールニーはポーランド国籍も有し、ポーランド代表からも声がかかっていたが、フランス代表となることを熱望し、ついに昨年2月のブラジル戦で代表のメンバーに入る。ブラジル戦では出場機会に恵まれず、その後5月に負傷して長期離脱し、ようやく11月の米国との親善試合で代表にデビューした。そしてユーネス・カブールの負傷もあり、自らのルーツ国も共同開催する欧州選手権のメンバーに入ったのである。
 コシールニーが代表にデビューしたのは、欧州選手権の予選を突破した後である。今回の23人のメンバーの中で、欧州選手権予選が終わってから代表にデビューしたのはコシールニー以外にはコシールニーとともに米国戦でデビューしたオリビエ・ジルーだけである。ジルーは今季のフランスリーグの得点王になり、米国戦の後もコンスタントに試合に出場し、2月のドイツ戦では得点を挙げる活躍をし、米国戦以降の6試合行われたすべての親善試合に出場し、欧州選手権本大会ではイングランド戦には出場しなかったが、ウクライナ戦、スウェーデン戦に出場している。

■出場機会が少なく、コンビネーションにも不安

 一方、コシールニーは、米国戦以降は出場機会が少なく、5月31日のセルビア戦に先発、6月5日のエストニア戦には終盤に交代出場しただけであり、スペイン戦が初めてのタイトルマッチ出場となる。そしてこのスペイン戦でコンビを組むラミとともにストッパーを務めたのはセルビア戦の終盤にラミが交代出場してきた12分間だけである。
 このように、もともと人材不足であり、代表メンバーの数も少なかったストッパーに不安を抱えて、フランスは攻撃力のあるスペインと対戦するのである。(続く)

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