第2029回 アルバニアに苦戦しながら勝利(1) システムとメンバーを変えて臨むアルバニア戦

 平成28年熊本地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。お亡くなりになった方々に、謹んで哀悼の意を表します。 この地震が1日でも早く収まることと、被災地の皆様の安全とご健康をお祈り申し上げます。

■第1戦勝利で気になる第2戦以降の戦い方

 終了間際のディミトリ・パイエの見事なゴールで開幕戦のルーマニアに勝利したフランス、続く第2戦は6月15日のアルバニア戦である。アルバニアは今大会はサプライズの初出場、そして初戦も強豪スイス相手に0-1と食い下がり、予選突破がフロックではないことを示した。
 ここで気になるのがグループリーグの戦い方である。今回の欧州選手権は出場24か国のうち、16チームが決勝トーナメントに進出することができる。すなわち、勝ち点4をとれば高い確率で決勝トーナメントを戦うことができる。したがって、第1戦を勝利したチームは一安心といったところであるが、グループリーグを上位で通過した方が決勝トーナメントでは有利な組み合わせとなる。特にグループAの場合、首位で通過すれば決勝トーナメント1回戦の相手はグループリーグを3位で通過したチームとなる。したがってフランスとしては首位で通過をすれば、その後の戦いが楽になる。
 一方のアルバニアも第1戦のスイス戦で確実な手ごたえを感じたであろう。目標とする勝ち点4はフランス戦を引き分けに持ち込み、最終戦のルーマニア戦で勝利すれば快挙となる。

■5月末以降はメンバーとシステムを固定しているフランス

 5月末のカメルーンとの親善試合以来、フランスは布陣を固定し、ここまでの3試合で先発メンバーを入れ替えたのはわずか2人である。カメルーン戦に続くスコットランド戦では、守備的MFを負傷したラッサナ・ディアラからエンゴロ・カンテに変更した。またルーマニア戦では右サイドのウイングをキングスレー・コマンからアントワン・グリエズマンに変更した。グリエズマンはアトレチコ・マドリッド(スペイン)のメンバーとして5月日のチャンピオンズリーグ決勝の疲労をとるためにカメルーン戦、スコットランド戦は先発メンバーから外れていた。
 このような意味から前回の本連載では欧州選手権の開幕戦でフランスはようやくフルメンバーがそろった、と記したのである。

■4-3-3システムから4-2-3-1システムに変更したフランス

 しかし、この第2戦でディディエ・デシャン監督はシステムとメンバーを変えてきたのである。
 守備陣はこれまでの3試合と変わらない。GKはウーゴ・ロリス、DFは右からバカリ・サーニャ、アディル・ラミ、ローラン・コシエルニー、パトリス・エブラと並ぶ。カメルーン戦では守備に難が見られたが、スコットランド戦、ルーマニア戦では持ち直した。
 メンバーとシステムを変更したのは中盤および攻撃陣である。これまでは4-3-3システムを採用していたが、このアルバニア戦では4-2-3-1システムを採用する。中盤の低い位置の2人は右にカンテ、左にブレーズ・マツイディ、攻撃的MFは右にコマン、中央にパイエ、左にアントニー・マルティアルを配し、1トップはオリビエ・ジルーである。これまでの試合内容がよくなかったわけではない。

■思わぬメンバーの活躍で出場機会がなくなった若手の2人

 デシャン監督の狙いは2つあるといえよう。まず、これまでのフォーメーションでは試合出場の機会が限られてきたコマン、マルティアルという若手の起用である。この若手2人の出場機会がなくなったのはパイエの突然の大化けに起因することも多い。抜群の得点力を誇るカリム・ベンゼマ、デシャン監督就任以来全試合に出場していたマチュー・バルブエナが昨秋にメンバーから離脱した際は攻撃陣はどうなるかと思われたが、ジルーが代表入りしてから最高のパフォーマンスを見せ、パイエもルーマニア戦では最後の決勝点が印象的なパイエも実は先制点のアシストもマークしている。さらにグリエズマンも所属のアトレチコ・マドリッドではチャンピオンズリーグ決勝進出の立役者となるなど、予期せぬ攻撃陣の充実が、抜擢した若手の出場機会を少なくさせることになった。
 もう1つは決勝トーナメントでは最大4試合戦うことになるが、その中で攻撃のバリエーションを作っておきたい。グループリーグの対戦相手の中で力が劣るとみられるアルバニアとの試合の中でテストをしたいのである。(続く)

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