第2476回 欧州選手権予選で連勝スタート(3) 初顔合わせとなるモルドバ

 8年前の東日本大震災、3年前の平成28年熊本地震、昨年の平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■旧ソ連でありながら、欧米派のモルドバ

 欧州選手権予選の初戦の相手はモルドバである。モルドバは旧ソ連から1991年に独立した人口350万人の小国である。ルーマニアとウクライナの間に位置しており、旧ソ連とはいうものの、文化的にはルーマニアと同じであり、公用語もルーマニア語である。独立以来、西欧、米国寄りの外交政策を進めてきた。日本の皆様であれば、モルドバ大使館がロシア大使館のある港区ではなく新宿区に所在していることからもその外交方針がお分かり頂けるであろう。EUやNATOへの加盟を目指してきた。

■親露派のイゴール・ドドン大統領の誕生

 しかし、3年前の大統領選挙でロシアとの関係強化を進めようとするイゴール・ドドン氏が当選、一方、首相をはじめとする議会は親欧米派というねじれ現象が起こり、ロシアのウラジミール・プーチン大統領もドドン大統領を軍事パレードなどに招き、経済協力を推進しようとしている。モルドバの数少ない産業がワインであるが、従来ロシアはワインの輸入を認めてこなかったが、モルドバに対する経済支援のためにワインの輸入を始めた。
 親欧米派は独立以来政権を維持しているが金権政治が問題となっており、2月下旬には総選挙があり、新ロシア派が多数になるかどうかが注目を集めたが、どの政党も過半数を取ることができず、親欧米派が引き続き多数となった。政治の混乱、経済の低迷の中で多くのモルドバ人が海外へ移住してしまった。この国力の低迷はサッカーの世界にも影響しており、代表チーム、クラブチームの成績は特筆するべきものがない。

■欧州選手権、ワールドカップ予選で敗退続きの歴史

 モルドバは、ワールドカップ予選には1998年フランス大会、欧州選手権予選は1996年イングランド大会から参戦しているが、いまだに本大会出場はない。そしてこれらの予選でも下位が指定席であった。唯一の例外が6チーム中5位に終わったものの、10試合で3勝をあげた2014年ワールドカップブラジル大会予選である。イングランドが首位、2位のウクライナはプレーオフに回ってフランスに敗れているがモルドバはホームゲームでウクライナ相手にドローに持ち込んでおり、もしもウクライナが勝利していれば、予選の順位はイングランドと入れ替わって首位になっており、ウクライナが本大会出場、イングランドはプレーオフとなっていたのである。当時のモルドバは世界ランキング80位台であったが、現在は170位となっている。直近の国際大会であるUEFAネーションズリーグでは最も低いリーグDに振り分けられ、グループ2で3位になっている。すなわち、現時点で欧州内でのランキングは49位となっている。

■復帰組のサミュエル・ウムティティ、レイバン・クルザワを先発させたフランス

 初対戦となるが、フランスにとっては不安を感じることなく戦うことのできる相手であろう。会場は首都キシナウのジンブル競技場、収容人員1万人強の小スタジアムである。  フランスの先発メンバーであるが、GKはウーゴ・ロリス、DFは右からバンジャマン・パバール、ラファエル・バラン、サミュエル・ウムティティ、レイバン・クルザワ、守備的なMFは右にエンゴロ・カンテ、左にポール・ポグバとなる。攻撃的MFは右にキリアン・ムバッペ、左にブレーズ・マツイディ、中央のトップ下にアントワン・グリエズマン、FWは1トップでオリビエ・ジルーとなる。
 GKで主将のロリスは2010年ワールドカップ予選から、ワールドカップ、欧州選手権の予選には欠かさず出場し、これが5回目の予選となる(2016年欧州s根h巣件は開催国により予選免除)。また、右サイドのMFは22歳のキングスレイ・コマンを起用すると思われたが、負傷によりマツイディとなった。
 昨年のワールドカップから先発出場を続けているメンバーが中心となったが、昨年9月を最後に代表から離れ、所属チームのバルセロナ(スペイン)でも出場機会が少なかっ他ウムティティ、そして前回の連載でも紹介したクルザワというカムバック組を最終ラインに起用したのである。(続く)

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