第2727回 第2回UEFAネーションズリーグ開幕(4) アドリアン・ラビオが2年半ぶりに復帰

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■最大の驚きとなったアドリアン・ラビオ

 昨年11月以来の代表の試合は9月初旬から始まるUEFAネーションズリーグのグループリーグのスウェーデンとクロアチアとの連戦である。この2試合のためにディディエ・デシャン監督は23人のメンバーを選出し、その中には3人の選手が初めての代表招集となることを前回の本連載で紹介した。
 ダヨ・ウパメカノ、ホッセム・アウア、エドゥアルド・カマビンガという初招集の選手についてはそれぞれの驚きもあったが、今回の23人のメンバーのうち最大の驚きは別の選手であった。それはアドリアン・ラビオである。

■ワールドカップの予備メンバー入りを辞退

 代表入りはロシアでのワールドカップを控えた2018年3月のコロンビア、ロシアとの親善試合以来、実に2年半ぶりとなる。その後、ワールドカップではメンバーに入ることができなかったが、11人の予備メンバーに選出される。当時のラビオはパリサンジェルマンで守備的MFとしてレギュラーのポジションを獲得した若手の実力派であった。しかし、ラビオは「所属クラブで実績を残している選手を選出すると言いながら、自分は正規メンバーに入ることができず、予備メンバーにとどまっている」と敢然とデシャン監督とフランスサッカー連盟を批判し、予備メンバーとしてチームに帯同することを断ったのである。
 結果的にはロシアでのワールドカップではフランスは優勝し、このラビオの予備メンバーからの離脱はあまり話題にならなかったが、もし2002年や2010年のようにグループリーグで敗退していれば、ラビオの反逆とそれを押さえることができなかったチームマネジメントがやり玉にあがっていたであろう。
 もちろん、デシャン監督はこのラビオの言動に対し、チームスピリットが理解できていない、と厳しいコメントを残し、フランスサッカー連盟のノエル・ルグラエ会長も苦言を呈している。このような前歴があればデシャン監督ならずとも二度と代表には選ばないであろう。

■所属チームのパリサンジェルマンともトラブル

 さらに、ラビオは実績を残していた所属チームのパリサンジェルマンともトラブルを起こした。ラビオはパリ近郊の出身でパリサンジェルマンの育成組織からそのままプロ契約を17歳の時に結んだ。トゥールーズに1年間レンタル移籍された後はパリサンジェルマンに戻り、ちょうどクラブがカタール資本になり、大型補強をしている中で、パリ近郊の出身の生え抜き選手として期待を集め、2013-14シーズンはほとんどの試合に出場した。そして2018-19シーズン終了までの5年間の契約を結んだ。
 この期間中も順当に成長したが、ワールドカップの予備メンバー事件後のシーズンである2018-19シーズン中に、トーマス・トゥヘル監督はラビオをメンバーから外し、戦力外となってしまった。契約満了時に他のクラブに移籍された場合は移籍金が発生しない。フィナンシャルフェアプレーで常に俎上に上がるパリサンジェルマンとしては移籍金の発生しない他チームへの移籍は避けたいところであるから契約延長を申し出るもののラビオ側は応じなかった。そして、チャンピオンズリーグの決勝トーナメントでパリサンジェルマンが敗退した日にはラビオはナイトクラブに出入りし、クラブ内外から厳しい非難の声を浴びた。

■ユベントスに移籍し、同ポジションの候補の不在により選出

 ラビオの代理人を務める母親はクラブ側の対応を批判し、泥仕合の様相となり、結局ラビオはイタリアのユベントスへ移籍することとなった。ユベントスではコンスタントに試合に出場し、チャンピオンズリーグの決勝トーナメント1回戦でのリヨン戦にも出場している。
 ラビオのイタリアでの活躍は認めないわけにはいかないが、デシャン監督が代表に呼び戻した理由は中盤のポール・ポグバ、タンギ・エンドンベレ、ブレーズ・マツイディ、フローラン・トリッソという同じポジションの選手たちが負傷や新型コロナウイスルのために選出できなかったからである。さてラビオの2年半ぶりの代表戦の出場はあるだろうか。(続く)

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