第3072回 UEFAネーションズリーグ終盤戦(5) 大きな圧力の中で迎えるデンマーク戦

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■首位攻防戦となった第5節のクロアチア-デンマーク戦

 9月22日にスタッド・ド・フランスで行われたオーストリア戦、スコアこそ2-0であったが、フランスは攻撃的なサッカーでオーストリアを圧倒し、最下位を脱出した。
 グループ1の第5節のもう1つの試合は首位攻防戦となった。2位クロアチアが首位デンマークをザグレブに迎えた。デンマークの勝ち点は9、クロアチアは7、すなわち、デンマークが勝利すれば、最終節を待たずして首位を確定する。デンマークはアウエーの試合で勝利して、最終戦はワールドカップに向けた調整の試合としたい。ただ、ここまで3勝1敗というデンマークの唯一の敗戦が、ホームでのクロアチア戦である。
 迎え撃つクロアチアはこの試合で勝利すれば、デンマークを勝ち点で1上回って逆転、最終戦を優位な立場で迎えることができる。

■3連勝のクロアチアがデンマークに代わって首位に

 試合は前半はデンマークがやや優位な展開であったが、両チーム得点はなく、後半に入る。後半の立ち上がりに均衡を破ったのは逆転を狙うクロアチアであった。49分にCKのチャンスからヘディングでシュートする。デンマークの守備陣が防いだこぼれ球を左足でシュートを決めたのはDFのボルナ・ソーサであった。ザグレブのマクシミール競技場に集まった2万人のファンを歓喜させる。このゴールを機に、両チームは積極的に選手を交代させる。次のゴールはデンマークであった。77分にMFのクリスチャン・エリクセンが目の覚めるようなロングシュートを決めて、同点に追いつく。
 これで試合は振出しに戻ったかに見えたが、決勝点はその直後に決まった。クロアチアは再開のキックオフ時に交代出場してきたロブロ・マイエルが強烈なシュートを決める。マイエルはレンヌに所属している。勝ち点で逆転されてしまうデンマークは反撃を試みるが、クロアチアの守備陣を崩すことができず、クロアチアは6月のコペンハーゲンでの試合に続いてデンマークを連破する。第1節で負け、第2節で引き分けたクロアチアは第3節から第5節まで3連勝、勝ち点を10として、初めて首位に立ったのである。

■最終戦で勝てば首位となるクロアチア、最下位の可能性もあるフランス

 最終節を前にしたグループ1の順位は、1位クロアチア(勝ち点10)、2位デンマーク(9)、3位フランス(5)、4位オーストリア(4)となり、ファイナルズ進出となる首位はクロアチアとデンマークに絞られた。
 最終戦は9月25日、デンマーク-フランス、オーストリア-クロアチアの2試合が20時45分に同時にキックオフされる。クロアチアは勝利すれば首位となるが、引き分け以下だとデンマークの結果次第となる。デンマークは逆転首位のためにはまずは目の前のフランスから勝ち点3が必要である。デンマークが引き分け、クロアチアが敗れた場合は勝ち点10で並ぶが、当該国間の直接対決ではクロアチアが連勝しているため、デンマークは首位を奪うことができない。
 フランスは、このように勝利が絶対的に必要なデンマークとアウエーで対戦することになる。さらに、オーストリアがホームでクロアチアに勝利した場合は、フランスは引き分け以下で最下位となる。

■ワールドカップ本大会で対戦するデンマークと戦うフランス

 そしてこの試合がフランスにとって厳しいのはUEFAネーションズリーグの順位だけが理由ではない。この試合はワールドカップ前最後の試合であり、対戦相手のデンマークはワールドカップのグループリーグの第2戦、11月26日に対戦する。すなわち、次の次の試合で対戦することになる。ワールドカップのグループリーグで対戦するチームとワールドカップ前最後の試合で対戦するということはこれまではあり得なかったことである。従来はワールドカップ予選が終了してから本大会までは親善試合しか行われず、その中で本大会で対戦するチームとの対戦を回避していたが、UEFAネーションズリーグの出現によりこのようなケースが起こった。
 フランスは大変な圧力の中で最終戦を戦うことになったのである。(続く)

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