第3074回 UEFAネーションズリーグ終盤戦(7) ワールドカップに向けて不安な結果

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■多くの負傷者を抱えるフランス、新人の活躍は限定的

 UEFAネーションズリーグの最終戦でデンマークに敗れたフランス、もう1つの試合でオーストリアがクロアチアに敗れたために2部に相当するリーグBへの降格は免れたものの、ワールドカップに向けて深刻な結果となった。
 まず、これは対戦する前からわかっていたことであるが、多くの負傷者を抱えて最後のオーストリア戦、デンマーク戦を迎えたが、この連戦中にマイク・メニャンが負傷、最後のデンマーク戦は第3GKのアルフォンス・アレオラが出場することになった。今回のワールドカップはシーズン中の大会となる。欧州のクラブに所属している選手はリーグ戦が15試合程度、それに欧州カップのグループリーグ6試合、あわせて20試合強をこなしてからカタールでの戦いに入る。所属クラブでの試合で今後負傷する選手が出る可能性もある。
 オーストリア、デンマークとの連戦では5人の新人選手が招集されたが、オーストリア戦ではブノワ・バディアシルとユスフ・フォファナが先発し、ランダル・コロムアニが後半アディショナルタイムに出場した。デンマーク戦で先発したのはバディシアルのみ、フォファナとアドリアン・トリュフェールは交代出場であり、活躍の時間は限定的であった。

■決着のつかないシステム論争、負傷者の後の埋まらない左サイドDF

 また、3バックか4バックかという議論にもピリオドは打たれていない。オーストリア戦はほとんど守備陣は評価の対象とならなかったが、デンマーク戦ではダヨ・ウパメカノの守備に疑問符が付いた。そして4バックとした際の左サイドDF、ルカ・エルナンデスの不在を埋めるのは誰なのかが明確ではない。そしてカリム・ベンゼマが本大会に間に合わなくなった時点で、オリビエ・ジルーに託すという選択肢で正解なのかは誰にもわからない。

■3位グループでは最も成績が悪かったフランス

 最下位を免れたとはいえ、フランスの勝ち点5、1勝2分3敗という成績は納得できるものではない。他のグループの下位チームを見ると、グループ2は3位のスイスが勝ち点9(3勝3敗)、最下位のチェコが勝ち点4(1勝1分4敗)、グループ3は3位のドイツが勝ち点7(1勝4分1敗)、最下位のイングランドが勝ち点3(3分3敗)、グループ4は3位のポーランドが勝ち点7(2勝1分3敗)、最下位のウェールズが勝ち点1(1分5敗)であり、フランスの勝ち点5というのは各グループの3位チームの中で最も少ない。これら他のグループの勝ち点と比較すると、いかに今回のフランスが最下位に近い3位であったかがわかる。

■これまでのワースト記録に並んだタイトルマッチで年間3敗

 UEFAネーションズリーグでフランスはデンマークに連敗、ワールドカップ本大会でも対戦することになっており、苦手意識を持って本大会に臨むことになった。そのデンマーク戦を含み、今年1年でフランスは早くも3敗をしている。それがすべてタイトルマッチであったということが深刻な結果である。
 フランスが年間にタイトルマッチで最も多く負けたのは3敗であり、これまでに4回ある。近いところでは2010年、この時は南アフリカでのワールドカップのグループリーグで1分2敗、初秋の欧州選手権予選でベラルーシに敗れている。その前は2008年、欧州選手権のグループリーグで1分2敗、秋のワールドカップ予選でオーストリアに敗れている。そして最初に年間3敗した1966年も同じパターンであり、ワールドカップのグループリーグで1分2敗、秋の欧州選手権予選でベルギーに敗れた。これらはワールドカップや欧州選手権の本大会の開催年であったが、例外としては4位になった1982年のワールドカップスペイン大会の予選を行っていた1981年である。この年はワールドカップ予選だけで6試合を行い、3敗(オランダ、ベルギー、アイルランド)しているが、最後にオランダとルクセンブルクに連勝し、本大会出場を決めた。
 今年はUEFAネーションズリーグだけで3敗、そして11月からはカタールでワールドカップ本大会が行われる。フランスが不名誉な成績を更新しないということはカタールで1回も負けないということを意味する。はたしてディフェンシングチャンピオンのフランスは無敗で栄冠を守ることができるのであろうか。(この項、終わり)

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