第3213回 ジブラルタル、ギリシャと欧州選手権予選(3) 歴史的な対戦となるフランスとジブラルタル

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■ホームゲームをポルトガルで開催するジブラルタル

 21世紀に入ってからUEFA、FIFAに加盟したジブラルタルはこれが3回目の欧州選手権予選である。前回の本連載で紹介した通り、これまで引き分けすらなく、20連敗中である。ジブラルタルはジブラルタルの空港の近くにあるビクトリア競技場でホームゲームを行っていたが、UEFA加盟後はこのビクトリア競技場がUEFAの基準を満たさず、欧州選手権やワールドカップの予選は空路で4時間かかるポルトガルのファロにあるアルガルベ競技場で試合を行った。ジブラルタルでは多目的競技場であるヨーロッパポイント競技場の建設が進んだが、ジブラルタルサッカー協会の満足のいくものではなかったため、ジブラルタルサッカー協会はそれまでは国が保有していたビクトリア競技場を買収して、2021年の欧州選手権予選、2022年ワールドカップ予選で使用した。

■女子サッカーのメッカ、アルガルベ競技場

 しかし、2023年からはジブラルタルは再びUEFAの基準を満たした競技場を求めてポルトガルに移動し、ホームゲームを行っている。アルガルベ競技場は2004年の欧州選手権のために開業したが、現在では女子サッカーのアルガルベカップを思い起こされるであろう。日本も2012年と2014年の2回準優勝を果たしている。女子サッカーとしてはオリンピック、ワールドカップに次ぐ位置づけにあり、男子にはこれに相当する大会は存在しないが、キリンカップの出場国を増やしたものと考えていただければよいであろう。
 この競技場でジブラルタル代表が初めて戦った試合は前回の本連載で紹介した2013年11月19日のスロバキアとの親善試合、初陣をスコアレスドローで乗り切ったのである。そして2回目にジブラルタル代表が姿を現した試合は翌年のマルタとの親善試合、1-0と勝利し、代表チームとしての初勝利を飾ったのである。しかし、その後は1回も引き分けることすらなく、2018年のワールドカップ予選を最後にアルガルベ競技場から離れた。

■世界ランキング2位のフランス、201位のジブラルタル

 そして6年ぶりにアルガルベ競技場に戻ってきた欧州選手権予選、ギリシャとの初戦は0-3と敗れてしまい、続くオランダ戦はロッテルダムのデカイプ競技場に移動し、ここでも0-3と連敗する。
 6月16日にジブラルタルはフランスに挑戦する。この挑戦はフランスにとってもいろいろな意味で歴史的である。まず、フランスにとってジブラルタルは対戦する86番目の国となる。ジブラルタルの世界ランキングは201位、世界ランキングは1992年に開始されたが、それ以降これまでにフランスが対戦した相手で最も低いランキングとなる。またフランスがアウエーゲームを相手国以外で対戦することは珍しく、1999年にアンドラとスペインで対戦して以来のこととなる。
 逆にジブラルタルにとって世界ランキング2位というのは最も高いランキングの国との対戦となる。3月のギリシャ戦では400人しかいなかった観衆が、このフランス戦は10倍近い3500人となった。

■ブリス・サンバとウェスレイ・フォファナが代表にデビュー

 このように力の離れている相手との対戦、ディディエ・デシャン監督はベテランと若手を起用した。GKにはこの試合が初めての代表戦となるブリス・サンバを指名する。DFは4バック、右からのバンジャマン・パバール、ウェスレイ・フォファナ、イブラヒマ・コナテ、テオ・エルナンデス、MFは右にアントワン・グリエズマン、中央の低い位置にオーレリアン・チュアメニ、左にエドゥアルド・カマビンガ、FWは中央にオリビエ・ジルー、右にキングスレー・コマン、左にキリアン・ムバッペという布陣である。ウェスレイ・フォファナも代表初出場であり、招集した23人のメンバーはこれで全員が代表戦に出場したことになる。
 一方のジブラルタルはほとんどが国内のクラブに所属するアマチュア選手、そしてその中に41歳の警察官のリー・カスシアロ、40歳で主将の会社員のロイ・チポリーナと2人の40代の選手がいる。40代の選手が複数いるチームと対戦するのもフランスにとって初めてのことなのである。(続く)

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