第3462回 UEFAネーションズリーグでファイナルラウンドに進出(3) 厳重な警備の元に最少観衆の前でキックオフ

 平成23年東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨、令和6年能登半島地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■1年5か月ぶりにスタッド・ド・フランスに戻ってきたサッカーフランス代表

 本連載第3459回で紹介した通り、ラグビーワールドカップ、パリオリンピック、パリパラリンピックと国際的な面がスポーツイベントが続き、サッカーのフランス代表は昨年6月19日の欧州選手権予選のギリシャ戦を最後にスタッド・ド・フランスから離れていた。そのイレブンがスタッド・ド・フランスに戻って来る。

■ガザ侵攻で非難を浴びるイスラエル、異例の警備の中で試合を開催

 しかし、手放しでは喜べない外部要因がある。それは対戦相手がイスラエルであり、ちょうどガザ侵攻で国際的な非難の声が高まっている。フランスでも同様であり、非常に厳しいセキュリティの元で試合が行われることになった。警戒するのは観客も同様であり、チケットの販売状況は極めて厳しい。そして、イスラエル戦の前週にオランダのアムステルダムで行われたヨーロッパリーグのアヤックス(オランダ)-マッカビ・テルアビブ(イスラエル)ではマッカビ・テルアビブのファンが襲撃されて5人が負傷するという事件が起こっている。
 会場の変更もうわさされたが、フランスの公安当局は特殊部隊を含む警官4,000人、民間警備員1,600人をスタッド・ド・フランスならびにその周辺の鉄道駅に配備し、試合の決行を支える。また、警備当局として観客数の制限などを要望せず、サッカーの国際試合を利用して社会を混乱させようとする勢力に対して毅然とした態度で臨む。そしてエマニュエル・マクロン大統領もこの試合に立ち会う。国家として反ユダヤ主義に屈することなく、暴力や脅迫に立ち向かうという姿勢の表れである。

■コロナ禍を除くと史上最少観客数となる16,611人の前でキックオフ

 結局、514日ぶりにフランスで最高のイレブンを迎えたスタッド・ド・フランスに集まった観衆はわずか16,611人にとどまった。これはコロナ禍の無観客試合、人数制限のある特殊な例を除くと、1998年のスタッド・ド・フランスが開業してから最も少ない観客数である。コロナ禍の期間を除くと、これまでのフランス代表のスタッド・ド・フランスでの最少観客数は2003年6月に行われたコンフェデレーションズカップのニュージーランド戦の36,842人であり、その半数以下である。また、スタッド・ド・フランス以外での開催を含めてもスタッド・ド・フランス開業後については2009年10月10日にギャンガンのルドゥルー競技場で行われた16,755人が最少である。もっともルドゥルー競技場は収容人員が18,462人であり、ほぼ満員の状況で行われており、今回のように8万人収容の巨大スタジアムに収容人員の5分の1しか観客がおらず、警官や警備員の姿ばかりが目立つというのは異様である。さらにスタッド・ド・フランス周辺ではガザに侵攻するイスラエルへの抗議デモが起こり、フランスはイスラエルと試合をすべきではないと訴える市民団体が声をあげる。
 フランス当局は万全の準備をして試合を開催し、安全をイスラエル側にも伝えたが、イスラエル側は自国民に対して危険なので観戦をしないように呼びかけたが、熱心なファン約100人がスタッド・ド・フランスに駆け付けた。

■復帰したエンゴロ・カンテがキャプテンマーク

 このように試合は異様な雰囲気の中でキックオフを迎えた。フランスの先発メンバーを紹介しよう。GKはマイク・メニャン、DFは右からジュール・クンデ、イブラヒマ・コナテ、ダヨ・ウパメカノ、テオ・エルナンデス、MFは中央の低い位置にエンゴロ・カンテ、高い位置の右にはウォーレン・ザイール・エメリ、左にはエドゥアルド・カマビンガ、FWは右にミカエル・オリーズ、左にブラッドリー・バルコラ、中央にランダル・コロムアニという布陣である。
 このチームの主将を務めていたキリアン・ムバッペが10月に続きメンバーから外れ、ムバッペ不在の10月の連戦で主将を務めたオーレリアン・チュアメニも負傷でメンバー外となっている。10月には負傷で不在だったカンテが戻ってきたため、カンテにキャプテンマークを託すことになったのである。(続く)

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