第303回 春を迎えたフランス・サッカー(1) アウエーでモナコ惜敗、リヨン先勝

■厳寒のモスクワ、シーズンオフのロコモティフ・モスクワ

 今シーズンのチャンピオンズリーグでのフランス勢の活躍については本連載第267回から第272回で紹介してきたが、リヨンとモナコが決勝トーナメントに進出する。決勝トーナメントはクラシックなホームアンドアウエーのノックアウト方式で行われる。16チームで争われる決勝トーナメントは2月24日から始まった。
 フランス勢で先陣を切るのはモナコ、ロシアのロコモティフ・モスクワとの厳寒のアウエーでの戦いである。本来ならばフランス時間のゴールデンタイムに試合を行いたいところであるが、そこまで待つと気温が低下し、試合を開催できる条件ではなくなるため、モスクワ時間で16時30分、フランス時間で18時30分という夕食前のゲームとなった。ロシアリーグは3月に始まり11月に終了する。日本のJリーグと同じ日程で行われるというのは1941年の日ソ不可侵条約の締結以来、両国が密接な関わりを持っていることを意味しているのであろう。ロコモティフ・モスクワは11月以来、国内リーグの試合がなく、公式戦は昨年12月のチャンピオンズリーグのアーセナル戦以来である。ロコモティフ・モスクワにとってモナコ戦はプレシーズンマッチと言う意味合いもあり、モナコ有利という下馬評であった。

■鬼門モスクワで2点のリードを許したモナコ

 しかし、コルス島出身のナポレオンにとってモスクワが鬼門であったように、地中海のチームがモスクワで勝つことは難しい。試合会場のロコモティフ・スタジアムは厳寒のモスクワとは思えない見事なピッチ状態、そしてテクニックに勝るロコモティフ・モスクワは押し気味に試合を進め、一昨年のワールドカップで19歳の新星として日本でアイドルとなったマラト・イズマイロフが32分に先制点を奪う。さらに試合を支配し続けるロコモティフ・モスクワは再三再四追加点のチャンスをつぶすが、59分にはウラジミール・マミノフが2点目、ロシア代表の可能性もあったが、ウズベキスタンの国籍を取得して代表入り、アジアのライバルである日本の読者の皆様はよくご存知の選手であろう。この試合だけを考えれば2点差というのは安全圏であるが、2週間後のモナコでの試合を考慮するとこれでは物足りない。なぜならば、モナコはグループリーグ6試合で15点をあげるという爆発的な得点力を誇っているからである。

■フェルナンド・モリエンテス、貴重なアウエーでの得点

 その後もモナコゴールを脅かすが、ホームの観客の歓声には至らず、逆に69分にはモナコのフェルナンド・モリエンテスがFKから流れてきたボールをヘッドでゴールに押し込む。モリエンテスは本連載第269回ならびに第271回でも紹介したとおり、チャンピオンズリーグのグループリーグでは活躍、貴重なアウエーでの得点での得点はチャンピオンズリーグ通算4得点目となる。ラッキーボーイの活躍によってモナコは1-2というスコアで第2戦を迎えることになったのである。

■リヨン、幸運な得点を守ってアウエーで先勝

 翌25日にはチャンピオンズリーグで初めて16強に進出したリヨンが登場する。リヨンもシードチームであるため、アウエーゲームからスタート。リヨンのイレブンが姿を現したのはスペイン、サンセバスチャンのアノエタ競技場、バイヨンヌがホームゲームを行おうとした競技場であることは本連載第287回で紹介したとおりである。レアル・ソシエダのフランス人監督レイノー・ドヌエ監督はバレリー・カルピンを先発起用するという必勝の構え。一方、リヨンのポール・ルグアン監督も負傷上がりのジュニーニョを起用する。第1戦から勝負に出た両チームであるが、明暗の分かれる結果となった。18分にフローラン・マルーダがクロスを上げる。このクロスがレアル・ソシエダのストッパーのガブリエル・シュレールに当たり、コースが変わって自陣ゴールの中にボールは吸い込まれ、バスクの都には悲鳴が上がる。オウンゴールで失点を許したレアル・ソシエダは負傷を押して出場したカルピンがゴールを狙うが2度クロスバーをたたき、ゴールネットを揺らすことはできなかった。結局、幸運なゴールを守りきったリヨンが逃げ切り、スペインで5度目の戦いにして初勝利を上げたのである。(続く)

このページのTOPへ