第276回 明暗の分かれた欧州カップ抽選

■年明けはクラシックなカップ戦形式

 欧州チャンピオンズリーグでリヨンとモナコの2チーム、UEFAカップでボルドー、ソショー、オセール、マルセイユの4チームと、合計6チームが越年した欧州カップ。近年にはない好成績でフランスのサッカーファンは年末年始の休暇を迎えた。
 欧州チャンピオンズリーグの決勝トーナメント1回戦は16チーム、UEFAカップの3回戦は32チームが参加し、ここから準決勝までホームアンドアウエーのノックアウト方式で争われ、決勝だけは1回戦制で行われる。本来の「カップ」とう名称にふさわしいクラシックなシステムに回帰したことは近年の欧州カップの人気低落に歯止めをかけようという主催者の判断であろう。

■シードの恩恵を受けたリヨンとモナコ

 さて、欧州チャンピオンズリーグのグループリーグが終了し、それぞれのカップへの出場チームが確定した12月12日に組み合わせ抽選が行われた。組み合わせ抽選に先立ち、シード分けが発表された。チャンピオンズリーグのシードは単純明快であり、グループリーグで1位となった8チームがシードされ、シード以外のチームと1回戦で対戦するとともに、第2戦をホームゲームとなり、有利な条件で決勝トーナメントを戦うことになる。リヨンもモナコもグループリーグを1位で突破したため、シード扱いとなる。また、グループリーグで対戦したチームや同国からの代表となったチームとの対戦も避けるように抽選が行われた。リヨンやモナコが対戦するシード以外、すなわちグループリーグでは2位にとどまったチームにもラコルーニャ(スペイン)、シュツットガルト(ドイツ)などの強豪チームがあったが、抽選の結果、フランス勢はシードの恩恵を受けることになった。
 リヨンはスペインのレアル・ソシアド、モナコはロシアのロコモティフ・モスクワと対戦することになった。実はこの2チームは決勝トーナメントに進出した16チームの中で最も評価の低い2チームであり、その幸運がフランス勢に巡ってきた。レアル・ソシアドはスペインリーグでも18位と低迷している。一方、ロコモティフ・モスクワはロシアリーグでは4位であるが、国内リーグの再開は3月であり、調整不十分な状態で2月下旬からモナコと対戦することになる。

■UEFAランキングが幸いしたボルドーとマルセイユ

 一方、UEFAカップのシードはUEFAのランキングに基づき上位16チームがシードとなり、3回戦ではシード以外のチームと対戦するが、シードチームが第2戦をホームで戦うと言う優位性は与えられていない。フランス勢ではボルドーとマルセイユがシード入りし、オセールとソショーはシードから外れた。今季の欧州カップでの戦い振りを考慮するならば、2回戦で強豪相手に大勝したソショーや、危なげない試合運びを続けてきたオセールの方が、チャンピオンズリーグでは1勝しかできなかったマルセイユや、試合内容の不安定なボルドーよりも高く評価されてしかるべきであるが、シード入りが組み合わせを大きく左右することになった。
 まず、シードになったボルドーはポーランドのグロクリン、マルセイユはウクライナのドニエプロペトルフスクとUEFAランキングで200位前後と言うかなり恵まれた相手と対戦することになる。3回戦の日程は2月26日と3月3日に行われる。2年前のこの時期に日本代表がポーランド代表、ウクライナ代表と対戦し、相手のコンディションの悪さに驚いた日本のファンの方も少なくないだろう。もともとの実力差に加え、コンディションの整っていない時期の対戦はボルドーとマルセイユにとっては追い風である。

■フランス勢に自信を持つ強敵と対戦するソショーとオセール

 一方、シードから漏れたソショーとオセールはとんでもないクリスマスプレゼントになった。ソショーはUEFAランキング12位のインテル・ミラノ(イタリア)、オセールはUEFAランキング22位のパナシナイコス(ギリシャ)という欧州チャンピオンズリーグから転戦してきた強豪と対戦することになってしまった。
 インテル・ミラノは過去3回UEFAカップを制覇し、欧州カップのトーナメントではこれまでフランス勢と7回対戦し、7回ともフランス勢を下している。なお、インテル・ミラノは、これ以外に昨季の欧州チャンピオンズリーグのグループリーグでリヨンと同組、リヨンには負け越しながら順位はリヨンを上回っている。そしてパナシナイコスは欧州チャンピオンズリーグのグループリーグでは2度フランス勢と対戦し、トーナメントでは1度だけ対戦している。その唯一の対戦は、1986-87シーズンのUEFAカップのオセール戦であり、1勝1敗ながら得失点差でパナシナイコスが2回戦に進出している。18年も前のことであるが、当時の指揮官は現在と同じギ・ルーであり、この敗戦はいまだに名将の脳裏に焼き付いているのである。(この項、終わり)

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