第324回 モナコ、3度目の挑戦で決勝進出

■準決勝で負け越しているフランス勢

 悲願の決勝進出に向けて準決勝第1戦を地元で3-1と先勝したモナコ。第2戦はドーバーを渡り5月5日に敵地チェルシーで行われる。これまでフランス勢はチャンピオンズリーグならびに前身のチャンピオンズカップで11回準決勝を戦い、その戦績は4勝7敗と負け越している。いままで、準決勝の壁を乗り越えたのは4回、第1回大会の1956年のランス(Reims:ハイバーニアンに勝利)、その3年後の1959年のランス(ヤングボーイズ)、1976年のサンテエチエンヌ(PSVアイントホーヘン)、1991年のマルセイユ(スパルターク・モスクワ)と3チームが準決勝を突破している。しかしながら、準決勝を勝ち抜いた4回とも、フランス勢は決勝で涙を飲んでいる。(このほかに1992-93シーズンは準決勝がなく、2次リーグの首位チームであるマルセイユが決勝に進出している。決勝ではACミランを破ったものの、八百長疑惑でタイトルを剥奪されていることは本連載の読者の皆様ならばよくご存知のことであろう。)

■唯一、2回準決勝で敗れているモナコ

 一方、準決勝でフランス勢は7回敗れているが、1975年のサンテエチエンヌ(バイエルン・ミュンヘンに敗退)、1985年のボルドー(ユベントス)、1990年のマルセイユ(ベンフィカ)、1994年のモナコ(ACミラン)、1995年のパリサンジェルマン(ACミラン)、1996年のナント(ユベントス)、1998年のモナコ(ユベントス)という具合であり、このところ4連敗を喫し、しかもその相手はすべてイタリア勢であった。さらに7回敗れたチームのうち2回敗れたのはモナコだけであり、この不名誉な成績にストップをかけたいところである。
 これまでのチャンピオンズリーグ、チャンピオンズカップの準決勝以上でフランス勢はイングランド勢との対戦がないが、これはちょうどイングランド勢が勢力を伸ばしてきた1970年代後半、そして1990年代後半から2000年代初めにフランスのクラブが不振であり、逆にフランスのクラブが好調であった1980年代後半から1990年代初めにかけてイングランドのチームが国際試合から締め出されていたという時代の流れによるものである。そういう点では50年の歴史を有する欧州最高峰の戦いでフランス勢とイングランド勢が頂点に近い準決勝以上で初めて対戦するということは、両リーグが初めて同時期に隆盛を迎えたということであろう。

■多国籍軍を率いるイタリア人監督クラウディオ・ラニエリ

 モナコの相手のチェルシーを率いるクラウディオ・ラニエリ監督はイタリア人である。ラニエリ監督は多くのタレントを抱える多国籍軍を4-4-2というイタリアン・スタイルのシステムと戦術で準決勝まで駒を進めた。モナコにとってチェルシーを倒すということはイタリア勢に対する自らの連敗、フランス勢の4連敗という苦手意識を払拭するための千載一遇のチャンスである。
 モナコを迎え撃つチェルシーは多国籍軍ゆえの悩みか、チャンピオンズリーグではなぜかホームよりアウエーのほうが成績がいい。しかもフランス代表のマルセル・デサイーとクロード・マケレレを出場停止で欠く。しかし、第1戦を1-3と落としているものの、49年ぶりの優勝を狙っていたリーグ戦でアーセナルに優勝を奪われたばかりであり、モナコがレアル・マドリッドに逆転勝ちしたようにチェルシーでの大逆転を狙う。

■チェルシーの歓喜はわずか3分、モナコ決勝進出

 試合は両チーム好機が続いたが、最初にゴールネットを揺らしたのはデンマーク代表としてワールドカップでフランスの希望を砕いたチェルシーのイエスパー・グリュンケアのクロスであった。クロスボールに両軍の選手が触ることなく、チェルシーの先制点となる。そして前半終了間際の44分にチェルシーのイングランド人選手フランク・ランパードが追加点、これで2試合合計スコアは3-3となり、アウエーゴールを奪っているチェルシーが優位に立つ。歓喜してハーフタイムの笛を待つ観客、しかし、前半ロスタイムに悪役となったのは訪日経験もあるモナコのウーゴ・イバラであった。イバラのゴールによってチェルシーの優位は3分で終わる。
 そしていよいよ試合は後半になる。モナコはこのまま45分守りきれば、初の決勝進出、逆にチェルシーが1点を取れば地元での延長戦。満員の観衆はチェルシーのゴールを期待したが、再び悪役は赤と白のユニフォーム、今大会絶好調のフェルナンド・モリエンテスが60分に同点ゴールを決める。チェルシーは残り30分で3点が必要となる。世界一の金満チームにも残り30分で3点は不可能であった。モナコは1勝1分、合計スコア5-3でクラブ史上初の決勝進出を決めた。フランス勢が決勝のピッチに立つのは、マルセイユ以来11年ぶり、今回も決勝の舞台はドイツである。(この項、終わり)

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