第1011回 チャンピオンズリーグ本戦開幕(5) 神童対決を制したリヨン、開幕戦勝利

■注目度は低かったリヨン-フィオレンチーナ戦

 今年のチャンピオンズリーグの第1節は9月15日と16日に行われ、フランス勢はイタリア勢との戦いとなった。初日の15日にボルドーとマルセイユが登場し、アウエーで戦ったボルドーがユベントスと引き分け、ホームにACミランを迎えたマルセイユが引き分けと言う結果で長い欧州の頂点への戦いが始まった。そして2日目の16日にはリヨンが登場する。昨季のリヨンの順位はボルドー、マルセイユに次ぐ3位、そして第1節の相手はチャンピオンズリーグでの優勝経験のないフィオレンチーナということで他の2チームに比べて低いのは否めない。

■今季無敗同士の戦い

 しかし、第1005回で紹介したとおり、グループリーグにおけるシード順は過去数年間の欧州カップの成績で決まることからリヨンはフランス勢の中では最高の第2シードにランクされている。また、シーズン前のリヨンは本連載で紹介したとおり不振であり、リーグ開幕戦も引き分けたが、第2節からリヨンはよみがえった。第2節から第5節までリーグ戦では4連勝、そしてチャンピオンズリーグのプレーオフでもアンデルレヒト(ベルギー)に連勝しており、6連勝してグループリーグの第1節を迎える。
 イタリアリーグはフランスリーグよりも開幕が遅く、フィオレンチーナはリーグ戦でまだ3試合しか戦っていないが、2勝1分、そしてフィオレンチーナもリヨン同様プレーオフからの参戦であり、プレーオフではスポルティング・ポルトガルと2引き分けでアウエーゴールの差で勝ちあがってきた。つまり両チームとも今季の公式戦では負け知らずである。

■注目の19歳、ミラレム・ピヤニッチとステファン・ヨベティッチ

 さて、両チームの注目選手は10番の位置にいる東欧出身の19歳の若武者である。リヨンは、昨季までこの位置にいたジュニーニョが抜け、ミラレム・ピヤニッチがリヨンの攻撃の軸になっている。ピヤニッチは、アンダーエイジ時代はルクセンブルク代表であったが、昨年出身地のボスニア・ヘルツェゴビナのフル代表にデビューしている。
 一方のフィオレンチーナであるが、モンテネグロ代表のステファン・ヨベティッチが、昨季パルチザン・ベオグラードからフィオレンチーナに移籍してきた。2人とも欧州を代表する神童と言われており、同ポジションでの対戦は非常に興味深い。ヨベティッチが生まれたのは1989年11月2日、ベルリンの壁崩壊の直前であり、ピヤニッチは1990年4月2日生まれ、すでに東欧が自由化されていた。東欧の自由化の最中に東欧で生まれた2人の神童が、西欧のチームの主力となったこと、時代の流れを感じさせる。

■ピヤニッチのゴールでリヨンが勝利

 19歳対決が注目されたが、リヨンのピヤニッチは先発したものの、フィオレンチーナは、ヨベティッチはベンチスタートとなり、ルーマニア代表のアドリアン・ムトゥが先発する。ムトゥは太ももを負傷しており、欠場が濃厚であったが、経験を買っての出場となった。
 昨年はホームゲームでリードを許したリヨンであり、今年は慎重な立ち上がりとなったが、前半終盤にフィオレンチーナの選手がリヨンの選手との空中戦でレッドカードを受け、リヨンは数的優位に立つ。後半はリヨンの一方的な試合となる。フィオレンチーナは、ゴールを守るフランス代表の経験もあるセバスチャン・フレイが好セーブを連発し、イタリアのチームらしく堅守を誇る。そして58分にはフィオレンチーナはムトゥに代えヨベティッチを投入、ファンが待ち望んでいた東欧出身の19歳の神童の対決が実現する。
 そして76分、その19歳の神童が輝くシーンがやってきた。好セーブを続けてきたフレイが、キム・カールストロームのセンタリングをはじき、そのチャンスにピヤニッチがゴールに押し込み、リヨンが先制点を奪ったのである。このピヤニッチのゴールがそのまま決勝点となる。リヨンはホームで価値ある勝利をあげ、フランス勢として唯一、開幕戦での勝利を記録したのである。(この項、終わり)

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