第1369回 リヨン、アポエルに敗れる(2) アポエル、PK戦でリヨンを破り、準々決勝へ

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■国内リーグで5試合勝利から見放されているリヨン

 前回の本連載ではチャンピオンズリーグのグループリーグ首位突破チームが、そのアドバンテージをいかして、延長戦以降で勝利したケースが少ないことを紹介した。
 リヨンは2週間前の地元ジェルラン競技場でのアポエル(キプロス)との戦いは圧倒的に攻めながらも、わずか1点にとどまっている。さらに、試合終了間際にアポエルにこの試合初めてのシュートを許し、あわや同点かという冷や汗ものの勝利であった。また本連載第1363回と第1364回でリヨンはマルセイユとともに国内外の4タイトルを獲得する可能性があると紹介したが、国内リーグでの雲行きが怪しい。1月28日に行われた第21節でディジョンに3-1と勝利したのを最後に5試合勝ち星から遠ざかっている。キプロス行きの直前に行われた第26節ではナンシー戦には、2点差を追いつかれた前節のパリサンジェルマン戦と同じメンバーで臨んだ。しかし、0-2と敗れ、順位も7位まで下がり、首位とは勝ち点15の差がついてしまった。決して良いとは言えないチーム状態でキプロス入りしたリヨンであるが、アポエル相手に勝利して再び優勝戦線、チャンピオンズリーグ出場権争いに顔を出したいところである。

■チャンピオンズリーグのホームゲームで圧倒的な強さを誇るアポエル

 一方のアポエルであるが、今季のチャンピオンズリーグでの快進撃は本連載で取り上げたとおりである。実力的には劣っていても地元の大声援で、これまでにゼニト・サンクトペテルブルク(ロシア)やポルト(ポルトガル)を下してきた。2点差以上の勝利は難しいことではないと誰もが思っているはずである。これまでキプロス勢は欧州カップでフランス勢に対しては、アポエルのリヨンでの敗戦を含めて3戦全敗で無得点、しかしながらそのようなデータはキプロスの国民は誰しもが信じていないであろう。彼らが信じているのはアポエルはこれまでのチャンピオンズリーグのホームゲームの戦績だけである。実に6勝3分1敗、しかもその1敗はすでにチャンピオンズリーグの決勝トーナメント進出を手中にした後のグループリーグ最終戦のシャフタール・ドネツク(ウクライナ)戦である。直前の国内リーグ戦もアウエーで4-1と勝利している。

■開始早々にアポエルが先制点

 このようにチーム状態が低調なリヨンが、好調なアポエルの本拠地に乗り込んだが、リヨンのレミ・ガルデ監督はパリサンジェルマン戦、ナンシー戦とメンバーを1人入れ替えただけの布陣で臨む。
 試合は始まって間もない9分に、黄色いユニフォームのアポエルのブラジル人選手、グスタボ・マンドゥカが先制ゴールを奪う。これで試合はタイとなるが、その後は地力に勝るリヨンが試合を支配し続ける。前半はリヨンは攻め続けるものの得点をあげることができず、1点リードを許したまま試合は後半に入る。
 後半に入るとリヨンの足が止まってしまう。国内リーグと同じメンバーで戦い続けていること、その国内リーグでの調子が良くないことがこの理由であろう。アポエルの攻撃を許すが、リヨンの守護神はフランス代表の主将として精神的な支柱になっているウーゴ・ロリス、簡単に得点を許すわけにはいかない。時計の針が90分に近くなったときにアポエルは決定的なチャンスをつかむが、ゴールならず、90分が過ぎ、第1戦と同じ1-0でホームチームが勝利、試合は延長戦に入ったのである。

■チャンピオンズリーグの新たな歴史、PK戦勝利のアポエル

 延長戦で優位だったのはリヨン、次々にアポエルのゴールを襲うが得点ならず。そして延長後半の115分には今日唯一ゴールネットを揺らしたマンドゥカが2枚目のイエローカードで退場し、リヨンは数的有利に立つ。しかしながら、このアドバンテージをいかすことができず、120分の戦いのホイッスルが鳴らされた。
 試合はPK戦に突入した。PK戦は両チームの選手が3人ずつ成功させたが、リヨンの4人目アレクサンドル・ラカゼット、5人目のミッシェル・バストスがいずれもアポエルのギリシャ人GKのディオニシス・ヒオティスにストップされ、4人全員が成功させたアポエルが4-3で勝利。アポエルの奇跡は続くのである。
 そしてグループリーグ首位チームが2位チームと決勝トーナメント1回戦で対戦するようになってPK戦で初めてグループリーグ首位チームが勝ち抜き、チャンピオンズリーグの新たな歴史を作ったのである。(この項、終わり)

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