第1380回 マルセイユ、4強ならず(3) ミュンヘンでイビチャ・オリッチの2ゴールの前に屈す

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■窮地に追い込まれたマルセイユ

 国内で不振の続くマルセイユ、ドイツのバイエルン・ミュンヘンを3月28日にホームのベロドロームに迎えたが、0-2と完敗、非常に厳しい状況に追い込まれた。ホームでの第1戦を2点差で落として、アウエーの第2戦で2点差以上で勝利することは極めて難しい。これまでのマルセイユが欧州カップでホームの第1戦を落としたことは4回あるが、そのうち第2戦で逆転したことはわずか1回、2008-09シーズンのUEFAカップ1回戦でオランダのトウエンテ相手にマルセイユで0-1と敗れながら第2戦で1-0と勝利し、PK戦で勝ち上がっただけである。

■チームを立て直す時間も機会もないままミュンヘン入り

 チャンピオンズリーグの準々決勝は第1戦の翌週に第2戦が行われる。しかもマルセイユ-バイエルン・ミュンヘン戦は第1戦が水曜日、第2戦は1週間もたたない火曜日の4月3日に行われ、その間に国内のリーグ戦も予定されていないため、マルセイユにとってはチームを立て直す時間も、立ち直るきっかけもないままでのミュンヘン行きということになる。
 マルセイユがミュンヘンのオリンピックスタジアムで試合を行うのは19年前にACミラン(イタリア)と戦った決勝戦以来のことである。奇しくも今年のチャンピオンズリーグの決勝戦はこのオリンピックスタジアムで開催される。この準々決勝で逆転勝ちし、5月に再びミュンヘンに戻ってきたいという願望の実現の可能性は限りなく小さい。マルセイユにとって唯一の明るいニュースはインテル・ミラノ(イタリア)との決勝トーナメント1回戦でレッドカードを受けた正GKのスティーブ・マンダンダが出場停止の処分を解除され、戻ってきたことである。

■マリオ・ゴメスに代わって入ったイビチャ・オリッチが大活躍

 自信を失っているマルセイユのイレブンとは対照的に、バイエルン・ミュンヘンのイレブンは地元優勝を目指す意欲にあふれた中でピッチに入っていく。そしてバイエルン・ミュンヘンはエースのマリオ・ゴメス、アリエン・ロッベンと第1戦で活躍した選手を先発から外すという余裕の選手起用である。 マルセイユはモルガン・アマルフィターノをベンチに残し、1トップにブランドンを起用、かすかな望みを託す。バイエルン・ミュンヘンは試合開始早々からマルセイユのゴールを襲い、ゴメスの代役として貴重な出場機会を得たイビチャ・オリッチが13分に先制点をあげる。この得点をおぜん立てしたのはマルセイユの第1戦では古巣相手に力を発揮できなかったフランス代表のフランク・リベリーであった。
 バイエルン・ミュンヘンのワンサイドゲームになるところを防いだのがマルセイユのGKで主将を務めるマンダンダであった。マンダンダはバイエルン・ミュンヘンの至近距離から、あるいは中距離からのシュートを次々にセーブし、追加点を許さなかった。
 闘将ディディエ・デシャン率いるマルセイユもバイエルン・ミュンヘンのゴールをしばしば襲うが、バイエルン・ミュンヘンのGKはドイツ代表のマヌエル・ノイアー、2月のフランス代表との親善試合ではご当地GKのポジションを譲ったが、マルセイユ相手に好セーブを連発し、マルセイユの得点を許さなかった。

■ミュンヘンでも完敗、フランスの夢今年も敗れる

 一方のマンダンダは2点目を許してしまう。37分にダビッド・アラバからの低い弾道のセンタリングをオリッチがニアポストに押し込む。これで2-0、2試合通算で4-0となってしまい、マルセイユは大量点を奪う気力を完全に奪われてしまった。
 一方のバイエルン・ミュンヘンはリベリーが古巣相手に活躍し、追加点こそあげることはできなかったが、勝利に貢献する。そしてこの日殊勲の2ゴールをあげたオリッチはゴメスと交代し、スタンディングオベーションでベンチに迎え入れられる。
 マルセイユの指揮官、デシャンは、主将として19年前にビッグイヤーを掲げたミュンヘンで、監督として再びビッグイヤーを掲げるという夢は破れ、フランス勢は今年も5月を迎えることなく欧州の舞台から去ったのである。(この項、終わり)

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