第1520回 ヨーロッパリーグ決勝トーナメント1回戦(3) ガレス・ベイルの2本のFKに泣いたリヨン

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■イングランド勢を苦手とするリヨン

 ヨーロッパリーグの決勝トーナメント、期待のフランス勢は、リヨンがイングランドのプレミアリーグで上位にいるトットナム、ボルドーはチャンピオンズリーグから転戦してきたディナモ・キエフ(ウクライナ)と強豪との1回戦になった。
 注目を集めたのはリヨンとトットナムの対戦である。2000年代に入り、リーグ7連覇を果たしたリヨンはチャンピオンズリーグの常連チームとなり、イングランド勢と頻繁に対戦している。しかし、2000-01シーズンはアーセナル、2004-05シーズンと2007-08シーズンはマンチェスター・ユナイテッド、2009-10シーズンはリバプールと対戦し、いずれも対戦相手よりも悪い成績である。歴史をさかのぼるとリヨンは1900年代もイングランド勢を苦手としており、1990年代に2回イングランド勢とUEFAカップで対戦したが、いずれも敗れている。

■リヨンの唯一のイングランド勢相手の勝利、45季前のトットナム戦

 リヨンがイングランド勢に対して唯一勝ったのが最初の対戦、今から45季前の1967-68シーズンのカップウィナーズカップ、トットナムとの戦いである。2回戦で両チームは対戦し、第1戦はジェルランで行われ、リヨンが1-0と勝利する。第2戦はロンドン北部のホワイトハートレーンで行われ、トットナムが4-3と勝利し、2試合通算スコアは4-4となったが、アウエーゴール2倍ルールで、リヨンが準々決勝に進出したのである。

■古巣と対決するウーゴ・ロリスとスティード・マルブランク

 このような歴史的背景だけではなく、トットナムには今季リヨンから移籍したウーゴ・ロリスがいる。ロリスは本連載で紹介している通り、フランス代表の正GKにして、主将である。しかしながら移籍した先のトットナムでは試合出場機会に恵まれず、米国代表のブラッド・フリーデルの控えの位置にとどまっているが、ターンオーバー制でヨーロッパリーグのグループリーグでは6試合中5試合に出場している。
  一方のリヨンのスティード・マルブランクはフランス人であるが、かつてトットナムに所属したことがある。リヨンでプロとしてのキャリアを始め、その後、イングランドに渡り、フラム、トットナム、サンダーランドで合計10年間プレーし、その後フランスのサンテチエンヌに戻ってきてからは精彩を欠いたが、今季古巣のリヨンに戻り、かつての輝きを取り戻した。全盛期を知るトットナムのファンに久しぶりの雄姿を見せることになる。

■前後半の終了間際にFKを直接決めたガレス・ベイル

 ホワイトハートレーンでの第1戦、トットナムのGKは背番号25のロリスではなく、背番号24のフリーデルであった。リヨンのGKは、ロリス在籍時には控えとしてまったく注目されなかったレミ・ベルクートルであり、マルブランクも先発メンバーである。
 試合は両チームともゴール前での好機を作るが、なかなかゴールネットを揺らすに至らない。この試合最初の得点は前半のロスタイム、ガレス・ベイルがFKを直接ゴールに突き刺す。後半に入ってリヨンは積極的に攻める。このところのリーグ戦では足踏み状態でパリサンジェルマンに差をつけられているが、このヨーロッパリーグでリズムを取り戻したいところである。リヨンが同点に追いつくのは時間の問題であり、55分にトットナムの元フランス代表のウィリアム・ギャラスのクリアボールをサミュエル・ウムティティが鮮やかにボレーシュート。試合はリヨンのリズムになる。そして最後の1点を巡って両チームともシュートの応酬となり、両GKが好守を見せる。後半ロスタイムにトットナムはFKのチャンスを得る。キッカーは前半の終了間際にFKを決め、前後半通じてリヨンのゴールを何度も襲ったベイルである。ベイルのFKはまたもリヨンのゴールネットを揺らす。ベイルの2本のFKによって、トットナムは第1戦を2-1と勝利し、1週間後のジェルランへと舞台は移すことになるのである。(続く)

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