第1687回 準々決勝、2つの逆転劇(2) パリサンジェルマン、チェルシーに先勝

 3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■チャンピオンズリーグ優勝に燃えるズラタン・イブラヒモビッチ

 ロンドンのフレンチタウンにある多国籍軍のチェルシー、豊富な資金によるワールドクラスの選手の獲得という点ではパリサンジェルマンも負けていない。
 その中心はズラタン・イブラヒモビッチである。リーグ戦でも大活躍のイブラヒモビッチであるが、チャンピオンズリーグでの活躍は目覚ましく、本連載でもしばしば紹介しているが、昨季パリサンジェルマンに移籍してきて以来、イブラヒモビッチは決定的なゴールをいくつも決めている。そのイブラヒモビッチをして、今回のチェルシー戦が一番重要な試合であると言わしめるのは、スウェーデン代表がワールドカップ予選のプレーオフでポルトガルに敗れた今となっては、イブラヒモビッチにとって獲得できる最高のタイトルはこのチャンピオンズリーグだからである。
 イブラヒモビッチをマークするのは主将のジョン・テリーとゲリー・ケーヒル、テリーは前回の本連載で紹介した2004年の対戦の際にゴールを決めている。

■パリサンジェルマンのモウリーニョ・チルドレンたち

 イタリアのインテルミラノ時代に監督だったチェルシーのポルトガル人、ジョゼ・モウリーニョ監督もその点はよくわかっており、イブラヒモビッチをどう封じるかに腐心したはずである。またモウリーニョの下でプレーしたことのあるパリサンジェルマンの選手はイブラヒモビッチだけではない。アレックス(チェルシー)、マクスウェル(インテルミラノ)、チアゴ・モッタ(インテルミラノ)と目白押しである。
 これまでチャンピオンズリーグで115試合の指揮を執ってきたモウリーニョに対し、パリサンジェルマンのローラン・ブラン監督はわずか24試合(ボルドーで16試合、パリサンジェルマンで8試合)である。そしてブラン監督自身もスペインのバルセロナに所属した1996-97シーズン、ボビー・ロブソン監督のアシスタントだったのがモウリーニョという縁がある。

■イングランド勢に相性の悪いパリサンジェルマン

 チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグという欧州カップ戦のホームゲームで圧倒的な強さを誇るパリサンジェルマンであるが、気になる記録もある。それはイングランド勢に対して非常に相性が悪いことである。9季前にチェルシーと対戦し、ホームで引き分け、アウエーで敗戦ということは前回の本連載で紹介したが、通算成績は1勝3分3敗と歯が立たない。唯一の勝利は1996-97シーズンのカップウィナーズカップ準決勝のリバプール戦であり、それ以来、得点すら記録していない。

■エセキエル・ラベッシ大活躍、超満員の観衆の前で先勝

 さて、4月2日の満員のパルク・デ・プランス、45,517人の観衆が集まった。パリサンジェルマンは開始間もない3分、ブレーズ・マツイディの左サイドからクロスをあげる。このクロスに対し、テリーがヘディングでクリアするが、このクリアボールをエセキエル・ラベッシが左足のボレー、クロスバーに当たってゴールインし、パリサンジェルマンはイングランド勢相手に17年ぶりに得点を奪ったのである。この先制点で勢いに乗ったパリサンジェルマンは止まらない。ボールを支配し、次々とチェルシーのゴールに向けてシュートを放つ。しかし、プレミアリーグで首位争いをするチェルシーもこのまま引き下がるわけではない。27分にはオスカルが攻め込み、パリサンジェルマンの主将のチアゴ・シウバがファウル、PKを得たチェルシーのキッカーはエデン・アザール、リールから移籍したベルギー人はチャンピオンズリーグではその真価を発揮できないが、ここはPKを確実に決めて同点に追いつく。
 その後もパリサンジェルマン優勢の中で試合は後半に入り、61分、ラベッシが好位置からFKを得て、ゴール前にボールを蹴り込む。このボールをチェルシーの守備陣がうまく処理できず、ダビド・ルイスがオウンゴール、これでパリサンジェルマンは勝ち越す。さらにロスタイムの93分、今日殊勲のラベッシに交代して出場したハビエル・パストーレが今季のチャンピオンズリーグで初めてのゴールを奪い、パリサンジェルマンが3-1と先勝し、翌週の4月9日に行われる第2戦に向けて優位な位置を占めたのである。(続く)

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