第1744回 ヨーロッパカップ本戦への道(3) サンテチエンヌ、リヨンともプレーオフ第1戦を落とす

 3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ライバルのサンテチエンヌとリヨンがプレーオフに進出

 前回の本連載ではチャンピオンズリーグのプレーオフでリールがポルトガルのポルトに連敗し、敗退ことを紹介したが今回はヨーロッパリーグのプレーオフのリヨンとサンテチエンヌの戦いを紹介しよう。
 昨季リーグ4位のサンテチエンヌはプレーオフが初戦、5位のリヨンは予備戦3回戦を勝ち抜いての登場となるが、この両チームの戦いはベストセラーとなった傍士銑太の「百年構想のある風景」でも紹介されている通り、フランスを代表するダービーである。したがって、両チームともこのプレーオフに勝利し、グループリーグへ出場する思いは強いはずである。

■トルコの八百長疑惑で繰り上げ出場となったカルデミル・カラブクスポル

 ヨーロッパリーグのプレーオフは第1戦が8月21日、第2戦が28日に行われ、サンテチエンヌはアウエー、リヨンはホームで第1戦を迎える。サンテチエンヌの相手はトルコのカルデミル・カラブクスポル、昨季のリーグ順位は7位であったが上位チームが八百長疑惑のためUEFA主催の大会の出場権が剥奪されたため、チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグに初出場となり、繰り上げでヨーロッパリーグの予備戦3回戦を戦うことになり、デンマークのローゼンボリを下している。

■フランス生まれのトルコ代表メブリュト・エルディングは得点ならず

 サンテチエンヌは好調で、リーグ戦では第1節でギャンガンに2-0、第2節でもスタッド・ド・ランスに3-1と勝利し、連勝スタート。連勝しているチームはサンテチエンヌ以外にはボルドーだけであり、得失点差、総得点で並び、ボルドーと首位を分け合っている。このサンテチエンヌを支えるのがエースのメブリュト・エルディングであり、ギャンガン戦は2点ともエルディングのゴール、スタッド・ド・ランス戦でも1点をあげている。エルディングはフランス生まれのトルコ代表、アンダーエイジではフランス代表であったがフル代表ではトルコ代表を選択している。両親がフランスに移住してきた時に、役所の手違いでエルディンクという名字がエルディングになってしまったという逸話を持つ。エルディングにとってトルコのクラブと対戦するのは特別な意味があるであろう。
 プレーオフとはいえ、初めての欧州の舞台に立つカルデミル・カラブクスポルに対し、工業都市の地元ファンは熱い声援を送る。前半は無得点で終わるが、後半になるとファウルが目立ち、しばしばイエローカードが提示される。そしてこの試合唯一のゴールは60分、カルデミル・カラブクスポルのキンシャサ(ザイール)生まれでドイツ育ち、コンゴ民主共和国代表のドミニク・クンベラがゴールを決める。サンテチエンヌはエースのエルディングがノーゴールで0-1と第1戦を落としてしまった。

■ホームで逆転負けを喫したリヨン

 同日にリヨンのジェルラン競技場ではリヨンがルーマニアのアストラ・ジュルジュを迎える。昨季のルーマニアカップの覇者というよりは日本の瀬戸貴幸の所属チームということで日本の皆様にはおなじみのチームである。また、このジュルジュはドナウ川沿いのブルガリア国境にある都市であり、このクラブのオーナーのヨアン・ニクラエはルーマニアを代表する大富豪である。クラブは事務所も練習場も首都ブカレストにあるが、試合だけをオーナーの出身地のジュルジュで行っている。
 ジェルラン競技場には2万人の観衆が集まった。ホームのリヨンは前半は試合を支配する。試合開始から攻め続けたリヨンの先制点は25分、パリサンジェルマンから移籍してきたクリストフ・ジャレのクロスから最後はスティード・マルブランクがゴールを決める。
 後半もこのペースが続いたが、71分、アストラ・ジュルジュが追いつく。自陣ゴール前からのロングボールのパスに対し、リヨン守備陣の反応が遅れ、同点ゴールを許す。この1点でリズムが変わる。リヨンは78分にストッパーのリンゼイ・ローズが2枚目の警告で退場、さらに浮足立ったリヨンは80分にはクレマン・グルニエがファウルを犯し、PKを与えてしまう。このPKを成功させたアストラ・ジュルジュが2-1とアウエーで逆転勝利する。
 フランス勢2チームともプレーオフの第1戦を落としてしまったのである。(続く)

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