第1982回 ヨーロッパリーグ、フランス勢は初戦で敗退 (3) マルセイユを沈黙させたアリツ・アドゥリス

 5年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■得点力があるアスレティック・ビルバオ

 攻撃サッカーをモットーとしたマルセロ・ビエルサを前監督とするマルセイユとアスレティック・ビルバオ(スペイン)の対戦、グループリーグで両チームが残した数字を見ると気がかりである。それは両チームの得点力である。マルセイユはグループリーグ6試合では12得点であるが、ホームのベロドロームでの3試合では3点しか挙げることができなかった。ここまでマルセイユはリーグ戦で26試合で36得点、ベロドロームでは13試合で21得点であった。国内リーグとの単純な比較は必ずしも正しくないが、ベロドロームでのヨーロッパリーグの得点力はリーグ戦を下回る。
 片やアスレティック・ビルバオはグループリーグの6試合で16得点をマークしている。この数字を上回る得点をあげたのはイタリアのナポリ(22得点)だけである。このアスレティック・ビルバオの得点源となっているのが35歳の大ベテランのアリツ・アドゥリスである。ヨーロッパリーグの16得点のうち6得点をあげ、アウクスブルク(ドイツ)のラウル・ボバディーヤと並んで得点ランキングのトップである。それ以外にリーグ戦でも13得点、国王杯でも2点をあげている。アドゥリスはこのマルセイユ戦でも1トップを務める。

■アリツ・アドゥリスが30メートルのボレーシュート

 マルセイユはアブー・ディアビの復帰が待ち望まれたが、結局この試合もベンチ入りしなかった。マルセイユの攻撃陣は2トップでニコラ・エンクルと1月末に加わったスティーブン・フレッチャーである。約3万の観客の集まったベロドローム、試合はマルセイユが優勢に進めるが、なかなか得点をあげることができない。前半は両チーム無得点で後半を迎える。後半、3万観衆を驚かせるプレーが起こる。54分、アドゥリスは35メートルのボレーシュートをスティーブ・マンダンダの守るゴールに突き刺したのである。アドゥリスはこれヨーロッパリーグでは7点目、同日に行われたリバプール(イングランド)戦で無得点だったアウグスブルクのボバディジャを押さえてヨーロッパリーグの得点王争いで単独トップに立つ。マルセイユはこのスーパーゴールの一撃に泣き、0-1とホームでの第1戦を落としてしまう。
 スペイン勢は好調で、この日出場した4チーム(アスレティック・ビルバオ、セビリア、バレンシア、ビジャレアル)はいずれも完封勝ちを収めたのである。

■第2戦までの間にリーグ戦で対戦したマルセイユとサンテチエンヌ

 このようにフランスから出場した2チームはホームで第1戦を戦ったが、サンテチエンヌは3-2とわずか1点差の勝利、さらにマルセイユは0-1の敗戦と厳しい結果になったが、第2戦はちょうど1週間後に行われる。この1週間しかインターバルのないところがこのヨーロッパリーグの決勝トーメンとの1回戦と2回戦の特徴である。すなわち第1戦と第2戦の間に国内リーグ戦を戦うわけであるが、この試合でどれだけ気持ちの切り替えと戦術的な修正ができるかが第2戦を迎えるための鍵となるであろう。そして奇しくも2月21日のリーグ戦ではマルセイユとサンテチエンヌが対戦したのである。

■ロスタイムのミッチー・バシャウィのゴールで追いついたマルセイユ

 マルセイユは1トップにフレッチャーを起用、アスレティック・ビルバオ戦でベンチだったミッチー・バシャウィはこの日もベンチスタートである。一方、サンテチエンヌはヨーロッパリーグには規定により出場できないノルウェー勢も先発メンバーに名を連ねている。
 試合は両チーム譲らず、マルセイユは後半の60分にDFのニコラ・ヌクルがレッドカードで退場する。マルセイユは数的不利になりながらも持ちこたえ、スコアレスドローの予感もしたが、サンテチエンヌは85分にケビン・モネ・パケが先制点、これで勝負あったかと思われた。ところが、マルセイユはフレッチャーに代わって途中出場したバシャウィがロスタイムの94分にゴールを決め、1-1の引き分けに持ちこむ。5万観衆が集まった前で追いついたマルセイユは第2戦への希望をつないだのである。(続く)

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