第2270回 フランス勢のヨーロッパリーグ (3) パトリス・エブラの暴行事件で足踏みしたマルセイユ

 6年前の東日本大震災、昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■パリサンジェルマン相手に引き分けたマルセイユ

 前回の本連載では第1節と第2節で連勝しながら中盤戦で連敗したニースが第5節で勝利して決勝トーナメント進出を決めたことを紹介したが、ニースを長いトンネルに追いやったマルセイユを今回は紹介したい。
 マルセイユは第1節でトルコのコンヤスポルに勝利し、第2節ではオーストリアのザルツブルクに惜敗する。そして10月1日にニースとリーグ戦で対戦し、アウエーながら4-2と快勝する。
 10月は全敗だったニースとは対照的にマルセイユは10月は無敗で乗り切った。リーグ戦では2勝2分、1分の中には22日のパリサンジェルマン戦がある。ホームで引き分けは負けに等しいとよく言われるがパリサンジェルマン相手となれば話は違う。今季のパリサンジェルマンは国内外で無敵、この時点でリーグ戦は8勝1分、6万人以上の観客の集まったベロドロームでマルセイユは防戦一方の展開となる。しかし少ないチャンスを生かして16分にはルイス・グスタボが先制点、前半のうちにネイマールのゴールで追いつかれたものの、78分にはフローリアン・トーバンが勝ち越し点をあげる。後半アディショナルタイムの93分にエディンソン・カバーニのゴールで追いつかれたが、今季初めてパリサンジェルマンを追い込んだチームとなった。

■ギマラエスに逆転勝ちし、2位に浮上したマルセイユ

 このパリサンジェルマン戦の3日前にベロドロームに迎えたのがポルトガルのギマラエスである。パリサンジェルマンとの決戦の前にここまで1分1敗と元気のないギマラエスに勝利したいところである。観客はわずか1万3000人と寂しく、マルセイユは17分にカウンターアタックから先制点を許してしまう。しかし、試合を支配していたマルセイユはパスをつなぎ、シュートを浴びせ続ける。28分にルーカス・オカンポスが同点ゴール、後半に入ってマキシム・ロペスが76分に逆転ゴールを決めて2勝目をあげる。
 グループIは第3節を終えた時点で、首位がザルツブルク(勝ち点7)、2位がマルセイユ(6)、3位がコンヤスポル(3)、4位ギマラエス(1)となる。マルセイユは第4節で最下位のギマラエスに連勝すれば、ザルツブルクが引き分け以上の場合は決勝トーナメント進出を決めることができる。

■ファンに対して暴行を働いたパトリス・エブラに試合前にレッドカード

 第4節の行われる11月初めは万聖節の休暇と重なることから、多くのマルセイユのファンがギマラエスまで駆けつけた。試合前のウォーミングアップ時にマルセイユから来たファンは歌って、盛り上がるが、事件が起こった。ファンは今季は貢献度の低いパトリス・エブラを揶揄する歌を歌い始める。これに対してエブラが応酬し、スタンドの中にボールを蹴りこむ。これに対してサポーターはフェンスを乗り越えてピッチに入り込む。このサポーターに対してエブラは左足のキックで一撃した。チームメイトが止めに入ったが、この試合前のファンに対する暴行で主審はエブラにヨーロッパリーグ史上初めて試合前にレッドカードを提示する。
 原因を作ったのはサポーターの方であり、ピッチに入ってきたことは認められないが、それに対して暴行を働いたエブラの行為は、日本における日馬富士事件と似た構造であろう。
 このような事件の影響か、マルセイユは2週間前同様にギマラエスを圧倒したが、なかなか得点を奪うことができず、逆に80分にギマラエスに得点を許し、0-1と敗れてしまう。
 エブラは翌週の10日にマルセイユとの契約を解除、マルセイユはUEFAから2万5000ユーロの罰金を科され、エブラは来年6月末まで出場停止となる。

■コンヤスポル戦はアディショナルタイムに相手のオウンゴールで追いつく

 このようなショッキングな事件が起こり、マルセイユは第5節のアウエーのコンヤスポル戦も押し気味に試合を勧めながら終盤にPKを与えてリードを許す。このままでいくとコンヤスポルに2位の座を奪われるところであったが、アディショナルタイムにクリントン・エンジエのクロスをコンヤスポルのストッパーがオウンゴール、マルセイユには奇跡的な勝ち点1がもたらされたのである。
 そして最終節は首位突破を決めているザルツブルクとホームで対戦する。引き分け以上で決勝トーナメント進出のマルセイユはスコアレスドローで2位を確定した。
 フランス勢のリヨン、ニース、マルセイユはいずれも2位で決勝トーナメントに駒を進めたのである。(この項、終わり)


本年の入稿はこれが最後となります。読者の皆様、よいお年をお迎えください。

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