第2396回 チャンピオンズリーグ開幕(3) ナイキ社のエア・ジョーダンとのコラボレーション

 7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■国際戦略に力を入れるパリサンジェルマン

 チャンピオンズリーグの初戦で昨季準優勝のリバプール(イングランド)とアウエーで対戦するパリサンジェルマンが注目を集めるのはピッチ内の選手のプレーだけではない。カタール資本となってからはビッグクラブとして競技面だけではなく営業面などにも力を入れてきた。
 そのパリサンジェルマンが注力しているのが国際戦略である。従来は国際戦略というと国外からの選手の獲得という強化面でとらえられてきたが、興行、グッズ販売という営業面に力点が置かれるようになった。そしてそのターゲットはアジア・パシフィック地域、北米地域といういわゆるサッカー後進地域である。パリサンジェルマンはシンガポールにアジア・パシフィック地域のオフィスを構えている。

■サッカーで初めてナイキ社を利用したパリサンジェルマン

 今回のリバプールとの試合ではパリサンジェルマンのユニフォームが注目を集めた。ユニフォームの新調は珍しいことではなく、その都度ファンの関心が高まるが、今回の新ユニフォームはこれまでとは違った意味で注目を集めたので、それを紹介しよう。
 パリサンジェルマンのユニフォームのサプライヤーは1980年代から米国のナイキが務めている。それまではフランスのメーカーであるルコックスポルティフが担当していたが、ナイキに代わり、パリサンジェルマンは初めてナイキがサプライヤーとなったサッカーチームのである。米国、バスケットボールのイメージが強いナイキは欧州のパリサンジェルマンとの契約をきっかけに世界中のサッカーチームのサプライヤーとなったのである。そのナイキから最もイメージされるアスリートはバスケットボールのヒーロー、マイケル・ジョーダンであろう。ジョーダンとのコラボレーションにより発売されたバスケットシューズのエア・ジョーダンは世界中の若者のあこがれであり、ナイキ社のスウォッシュというウイングロゴに代わり、ジョーダンがワンハンドダンクする姿をイメージしたロゴのジャンプマンも世界中の人たちに知られている。

■パリサンジェルマンとエア・ジョーダンがコラボレーション

 9月14日にパリサンジェルマンはエア・ジョーダンとのコラボレーションを発表した。パリサンジェルマンはホーム用のファーストユニフォームとアウエー用のセカンドユニフォームがあるが、これに加えてエア・ジョーダンとのコラボレーションによりサードユニフォームとフォースユニフォームを準備する。パリサンジェルマンのチームカラーはパリ市の色である青(紺)と赤を基調としているが、ジョーダンのメインカラーは黒と白、この2色を基調にしたユニフォームとなる。そしてパリサンジェルマンのロゴのエッフェル塔に代えて、エア・ジョーダンのジャンプマンをデフォルメしてエッフェル塔に模したものを使った。早速この新しいユニフォームをリバプール戦で着用することになった。

■サッカー界での地位を高めたいナイキ、アジア、北米戦略の一環とするパリサンジェルマン

 ナイキ社のエア・ジョーダンとのコラボレーションの目的は明確である。フランスの若者に人気のあるジョーダン、バスケットボールの勢いを使ってサッカーの世界に繰り広げていこうとすることである。ナイキ社としてはサッカー市場で成功したのと同じく、パリサンジェルマンを嚆矢にエア・ジョーダンとのコラボを他のサッカーチームにも進めていく考えである。
 一方のパリサンジェルマンにとってはこれを国際戦略の一環、特に北米、アジア・パシフィック地域へのマーケテイング策としている。パリサンジェルマンはセバスチャン・バッゼルを東京に派遣し、フランス大使館でこの構想を発表している。このエア・ジョーダンとのコラボレーション製品のインターネットでの初日の売り上げのうち、56%が北米、20%がアジア地域であった。この地域におけるバスケットボール人気、エア・ジョーダン人気を当て込んだパリサンジェルマンの戦略が見事的中したのである。(続く)

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