第2709回 パリサンジェルマンとリヨン、準決勝進出 (10) 初めてフランス勢が準決勝に2チーム進出

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■過去に14回準決勝に進出したフランス勢

 パリサンジェルマンとリヨンがチャンピオンズリーグの準決勝に進出したが、これは歴史的なことである。
 リヨンは10年ぶり、パリサンジェルマンに至っては25年ぶりであるが、フランス勢としても10年ぶりのことである。過去にチャンピオンズリーグ、そして前身のチャンピオンズカップで準決勝にフランス勢が進出したのは第1回の1956年のスタッド・ド・ランスに始まり、1959年にもスタッド・ド・ランスが進出する。その後、長いブランクとなり、1975年、1976年のサンテチエンヌに連続して準決勝に進出、1980年代から1990年代にかけては1985年のボルドー、1990年、1991年、1993年のマルセイユ、1994年のモナコ、1995年のパリサンジェルマン、1996年のナント、1998年のモナコとフランスのクラブの黄金時代となる。今世紀に入ってからは2004年のモナコと2010年のリヨンだけが準決勝にたどり着いただけである。
 このようにみるとフランスサッカーは1990年代にピークを迎えたが、その後のボスマン判決によって、主役の位置をイングランドやスペイン勢に奪われたということができるであろう。

■初めて2チームが準決勝に進出したフランス勢

 そのような状況にあって初めてフランス勢2チームが準決勝に残ったということは快挙であろう。1990年代の前半までは各国1チームずつしか出場枠がなかったため、単純に比較はできないが、当時はチャンピオンズカップ、チャンピオンズリーグ以外のカップウィナーズカップ、UEFAカップでもフランス勢が上位に進出していた。もし、1990年代も現行と同じ大会方式であったならば、フランス勢が複数上位進出していたことがあったであろう。

■残り2つはドイツ勢、イングランド勢とスペイン勢の不在は24年ぶり

 そして残り2つの準決勝の進出チームはRBライプチヒとバイエルン・ミュンヘンというドイツ勢になった。近年チャンピオンズリーグの上位進出を占めてきたイングランド勢、スペイン勢である。昨年はイングランドのリバプールとトットナム・ホットスパーで決勝が行われたが、準決勝にはスペインのバルセロナとオランダのアヤックスが残っている。その前年も決勝はレアル・マドリッド(スペイン)とリバプールでの争いである。
 しかし、今年は近年のチャンピオンズリーグの終盤の主役であるイングランド勢のマンチェスター・シティとスペイン勢のバルセロナとアトレチコ・マドリッドは準々決勝で姿を消した。スペインとポルトガルがイベリア半島の隣国であり、縁が深いのはご存じのとおりである。また、ポルトガルの国名の由来となったのはポルト、ポルト酒はイングランドの人々に愛されて発展した。イングランド勢、スペイン勢がこのポルトガルの地で姿を消すのは意外な結果である。イングランド勢、スペイン勢のいないチャンピオンズリーグの準決勝はナント、アヤックス(オランダ)、ユベントス(イタリア)、パナシナイコス(ギリシャ)で争われた1995-96シーズンまでさかのぼらなくてはならず、24年ぶりのこととなった。

■準決勝の2試合はいずれも独仏対決

 準決勝は2試合とも独仏決戦となった。とかく勝負弱いとされるフランスサッカー、そしてゲルマン魂という言葉の通り勝利を引き寄せるドイツ勢というステレオタイプ的に論じられるが、チャンピオンズリーグの終盤戦ではまさにその通りである。先述の通り、フランス勢が準決勝に進出したのはこれまでに14回、そのうちで決勝に進むことができたのはわずか5回である。ほぼ6割は敗退しているが、この中で1975年のサンテチエンヌ、2010年のバイエルン・ミュンヘンはいずれもバイエルン・ミュンヘンに敗れて決勝進出を阻まれている。
 欧州五大リーグ(イングランド、スペイン、ドイツ、イタリア、フランス)と言われながら、21世紀に入ってからはリヨンとパリサンジェルマンが国内一強時代を築いたものの、欧州では成績を残すことができなかった。そして今年は21世紀のフランスサッカーの主役2チームがそろって準決勝に進出、新たな扉を開いたのである。(この項、終わり)

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