第2983回 決勝トーナメントで苦戦するフランス勢(2) 世界王者チェルシーに連敗したリール

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■リーグトップのパリサンジェルマンが早期敗退

 欧州カップに参戦した6チームすべてが決勝トーナメントに進出したフランス勢であるが、最初に登場したパリサンジェルマンは3月9日にスペインのレアル・マドリッドに1-3と敗れて、姿を消した。この時点で決勝トーナメントの試合を戦っていたフランス勢は前回の本連載で紹介したベスト16決定戦に出場したマルセイユ、パリサンジェルマンよりも1週遅れで決勝トーナメントを戦うリール、同日の夕方にキックオフを迎えたリヨンだけであり、大将ともいえるリーグトップのパリサンジェルマンの早期敗退はフランスのファンにとってはショッキングであった。

■チェルシーと対戦するリール

 今回はパリサンジェルマンとともにチャンピオンズリーグに出場したリールを紹介しよう。リールは昨季のリーグチャンピオンとして第1シードとして参戦する。これまでの欧州カップでは特段の成績を残すことができず、今季もグループリーグの前半は第1シードらしからぬ低迷した成績であったが、後半戦で逆転し、首位突破、第1シードの面目を保つ。そして迎えた決勝トーナメントの1回戦、相手は2位通過のチームの中ではレアル・マドリッドと並ぶ強豪のイングランドのチェルシーである。昨季はチャンピオンズリーグで優勝、そして2月上旬に行われたクラブワールドカップでは、アルヒアル(サウジアラビア)、パルメイラス(ブラジル)を破り、優勝している。ディフェンディングチャンピオンにして、世界チャンピオンである。クラブワールドカップから帰国してからのリーグ戦でもクリスタル・パレスに勝利し、国内外で5連勝中である。 一方のリールであるが、年明けの初戦のフランスカップでRCランスに敗れ、リーグ戦では2勝2分2敗、特に2月6日のパリサンジェルマン戦は1-5と大敗している。

■ホームのチェルシーが先勝した第1戦

 チェルシーはフランス勢とのチャンピオンズリーグでは好成績を残しており、2月22日の試合も立ち上がりからリールのゴールを襲う。8分にはドイツ代表のカイ・ハバーツがCKを決めてあっさりと先制する。リールの守備陣の集中力の切れたところにチェルシーはすかさず入り込んで先制点。その後もボールを支配し、チェルシーの一方的な試合になるかと思われた。しかし、前半の半ばからリールはエンジンがかかる。リールは攻撃をシュートまでつなげ、しばしばチェルシーのゴールを襲い、胸を張ってロッカールームに戻る。
 後半に入ってもリールの積極性は変わらず、シュート数ではチェルシーを上回る。また、チェルシーは相次ぎ負傷者が出て予定外の選手交代を余儀なくされる。しかし、チェルシーは世界王者、カウンターアタックとシュートの精度ではリールを上回る。63分、チェルシーはエンゴロ・カンテ、チアゴ・シウバがスピードに乗った攻撃を展開、ロングゲインして最後はクリスチャン・プリシッチが追加点を決める。リールはその後も攻め続けたが、第1戦はチェルシーが2-0と先勝する。

■第2戦も果敢に攻めるが、逆転負けしたリール

 その2週間後、世界はロシアのウクライナ侵攻に揺れ、ロシア人のロマン・アブラモビッチ氏がオーナーを務めるチェルシーには衝撃が走る中で3月16日、リールはピエール・モーロワ競技場で第2戦を迎える。
 最低でも2点差の勝利が必要なリールは第1戦以上に攻撃的な試合を展開した。第1戦同様、前半はチェルシーがボール支配で上回るものの、シュート数はリールが勝る。35分過ぎにリールはチェルシーのペナルティエリア内の近くでFKを得る。このFKからのリールの攻撃に対し、チェルシーの選手のハンドがVARの末認められ、リールはブラク・イルマズがPKを決めて、1点差に迫る。このまま、ハーフタイムかと思われた前半のアディショナルタイム、48分にジョルジーニョのスルーパスをプリシッチが角度のないところからシュートを決め、同点に追いつく。
 後半はリールがポストやバーに嫌われた。一方、チェルシーは71分にセサル・アスピリクルタが勝ち越し点を決める。2試合合計でチェルシーが4-1と勝ち抜き、フランス勢はパリサンジェルマンに続いてリールもチャンピオンズリーグで敗退したのである。(続く)

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