第284回 フランスカップ本格化(5) 1部勢対決を制したオセール、トゥールーズ

■1部勢対決は16試合中3試合

 本連載第280回以降のシリーズではベスト16決定戦で対戦したマルセイユとパリサンジェルマンを中心に取り上げてきたが、頂点を目指して戦いを繰り広げているのはこの2チームだけではない。1月最後の週末に行われたベスト16決定戦では様々なドラマが生まれている。
 ベスト16決定戦の組み合わせでは本連載でも取り上げたマルセイユ-パリサンジェルマン戦がクローズアップされたが、それ以外にも興味深いカードは少なくなかった。12チームが残っている1部勢同士の対戦はマルセイユ-パリサンジェルマン戦以外にオセール-モンペリエ戦、トゥールーズ-ニース戦が行われた。

■中国・胡錦濤国家主席の訪仏

 土曜日の午後に行われたオセール-モンペリエ戦はわずか4500人しか観衆が集まらなかったが、多くの日本人ファンが集まった。モンペリエの広山望、かつてフェイエノールトで小野伸二のチームメートであったオセールのボナバンチュール・カルーが予想先発メンバーに入っていることを知ってパリから駆けつけたのであろう。おりしもパリは22日からの旧正月を祝う春節祭に加え、26日からの中国・胡錦濤国家主席の訪問を控え、中国一色となった。中国とフランスは国交を結んで40年以上も経過し、親密な関係にある。フランスのアジア政策といえばまず中国である。国家主席の訪仏にあわせ、フランス側はエッフェル塔を赤くライトアップ。小雪の舞う上空から胡錦涛国家主席に赤くライトアップされたエッフェル塔を見せると言う演出を準備した。実は南仏のカダラッシュと青森県の六ヶ所村がワールドカップやオリンピック並みの激しい誘致合戦を行っているITER(国際核融合実験炉)のサイト決定の投票権を中国も有していることから、フランスではこのようなエスカレートした熱烈歓迎になったのである。中国対応でフランス外交筋が手一杯のため、同時期に行わなくてはならないシンガポール対応はフランスのかわりに日本が行うことになってしまったのである。2002年ワールドカップ、2008年オリンピック、そして今回のITER誘致とことごとく日本の対抗馬を支援してきたフランス外交であるが、ホームゲームでの粋な演出を見たパリ在住の中国人はパワーアップし、一方の日本人は悔しさを感じるばかりである。
 さらに新年の小泉純一郎首相の靖国神社参拝で中国人の対日感情は悪化しており、パリ在住の日本人にとって赤く染まったパリの生活は居心地が悪く、パリを脱出してオセールへ向かう気持ちはよくわかる。

■広山望の先発も実らず、モンペリエは敗退

 さて、広山の活躍を見てパリでの憂さを晴らしたい日本人観客であるが、見事にその期待は裏切られた。13分にオセールのカルーが先制点。22分にも移籍で揺れるジブリル・シセが追加点。これで勝負あったと判断したモンペリエのジェラール・ベルナルデ監督は前半で試合をあきらめ、満を持して投入した広山、ジェローム・ラフルカドをハーフタイムにベンチに下ろす。結局オセールが2-0と勝利し、連覇にまた一歩近づいたのである。

■古豪対決、トゥールーズが競り勝つ

 もう1つの1部勢の対戦となったトゥールーズ-ニース戦は日曜日に行われた。両チームは古豪であるが、トゥールーズは1部復帰初年、ニースは1部復帰2年目であり、近年はリーグでは上位に進出していない。また、フランスカップでも過去10年の成績を振り返ると1997年にニースが優勝したことはあるものの、それ以外は早期に敗退しており、両チームがベスト8入りしたのはこの時だけである。さらに歴史をさかのぼるとフランスカップが2回戦制だった最後の2年間に連続して対戦している。1988年はホーム、アウエーとも同スコアで、PK戦を行ってニースが勝ち、1989年は1勝1敗となったが得失点差でニースが勝っている。ニースの方がわずかながら分のいいフランスカップであるが、今年は古豪対決にふさわしく、120分経過しても両チーム譲らない熱戦となり、PK戦で決着をつけることになった。PK戦でも接戦となったが、地元のトゥールーズが競り勝ち、2年連続でベスト16決定戦に進出したのである。(続く)

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