第412回 波乱の予感するフランスカップ(3) 人気チームの初戦敗退、注目の次戦

■順当にアウエーで勝利した土曜日の1部勢

 例年、ジャイアントキリングの多発するフランスカップのベスト32決定戦であるが、今年の1部勢に関しては、初日はストラスブール、2日目はマルセイユが2部リーグのチームに敗れただけで波乱の少ないスタートとなった。
 特に2日目の土曜日はマルセイユ以外のアウエーで下位リーグのチームの挑戦を受けた10チームの成績は特筆すべきものであり、10試合とも延長戦やPK戦ではなく規定の90分で勝利を収め、1点差勝ちは2試合だけ、さらに相手に得点を許したのはわずか2チームだけ、アウエーでの10試合で総得点34に対し総失点はわずかに2という誰もが予想しない順当勝ちばかりだったのである。

■ニームに敗れたサンテエチエンヌ

 このような順当なスタートで1部勢のしんがりとして日曜日に登場した唯一のチームが人気チームのサンテエチエンヌである。マルセイユの前にフランスで黄金時代を誇ったチームであり、久々のビッグタイトルを狙いたいところである。相手は1996年の準優勝チームであるニームである。この年の優勝チームのオセールがリーグも制覇していることからニームは翌シーズンのカップウィナーズカップにも出場している。その後もニームはたびたびフランスカップで上位チームを破ってきた実績がある。ニームは現在3部リーグに相当するナショナルリーグに所属しているが、サンテエチエンヌにとっては油断ならない相手である。
 サンテエチエンヌは開始早々の6分と8分にフレデリック・ピキオンヌが連続ゴールをあげる。ピキオンヌはニューカレドニア出身であり、プロ生活をニームでスタートしており、見事に成長した姿を第二の故郷のファンに見せ付ける。しかし、ニームはこのままピキオンヌをヒーローにすることは許さなかった。ニームは31分に1点返し、44分に同点に追いつき、69分に逆転に成功する。緑の軍団サンテエチエンヌは早々とフランスカップから姿を消したのである。

■4チームがベスト64に残ったバ・ラン県勢

 結局、1部20チームのうち、1部同士の対戦で敗れたイストル、バスティア以外に初戦で姿を消したのはストラスブール、マルセイユ、サンテエチエンヌの3チーム。マルセイユはサッカーの都、そしてサンテエチエンヌは熱心なファンがチームを支えていることで知られているが、ストラスブールも忘れてはならない存在である。
 ストラスブールは、1998年ワールドカップの開催候補地となっていたが「1月のイベントのために市民生活が乱される」と言う理由で開催を返上している。しかし、サッカー不毛の土地ではない。ワールドカップ開催返上の際も市民レベルでのサッカーの普及に力を注いだ。そして今回のフランスカップではその地道な努力が実るような結果となった。ストラスブールはバ・ラン県の県庁所在地であるが、なんとこのバ・ラン県からフランスカップのベスト32決定戦に1部のストラスブール、アマチュアリーグのシルティグハイム、DHリーグのガンブシェイムとアグノーと4チームが進出している。フランスには海外県4県を含む100の県があることを考えれば、64チームのうち4チームを占める人口100万人強のバ・ラン県はサッカーどころであるといえよう。残念なことに4チームともベスト32決定戦で負けてしまったが、ワールドカップ開催時の判断が間違っていなかったことを証明したのである。

■今から注目のベスト16決定戦

 このように人気チームやサッカーの盛んな地方のチームが姿を消したことは大会の盛り上がりに水を差すことになるが、逆にこれがカップ戦の魅力である。すでにベスト16決定戦の組み合わせが発表された。注目のカードは強豪同士という点ではパリサンジェルマン-ボルドー戦。そしてニース-ランス(Reims)の古豪同士の対戦も見逃せない。忘れてはならないのは図らずもダービーマッチとなったカードである。東部の工業都市同士のメッスとソショーの対戦はそれぞれの親会社の思惑もあり、熱い試合になるであろう。なんといっても注目は北東部の炭鉱都市のリールとランス(Lens)の対戦である。リーグ2位のリールは、ポールの本拠地としてそのプライドをかけた戦いとなるであろう。近年、フランジパン以外にもバラエティを拡げ、多彩な攻撃を試みるポールであるが、大味になり繊細さが失われたため、今年のガレットの戦いは惨敗してしまった。ランスを撃破して面目を取り戻したいところである。
 ベスト16決定戦は2月12日から行われる。今年も栄光のフランスカップを目指す戦いから目が離せない。(この項、終わり)

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