第513回 1部勢がフランスカップに参戦(2) カレー、6年ぶりにベスト32に進出

■本拠地から離れたホームゲームに5000人のファン

 2000年のフランスカップのファイナリスト、カレーは前回の本連載で紹介したとおり、その後、クラブの成績も財政面でも振るわず、まさに失われた新世紀となった。そのカレーは今年のフランスカップではベスト32決定戦に進出し、1部のトロワに挑戦する。昨年もオセールに敗れているカレーにとってこのトロワ戦は新たな世紀を迎えるための機会とも言えよう。
 本拠地が未完成であるため、ブローニュ・シュール・メールでトロワを迎えることになった。カレーにとってはベスト64決定戦に相当する8回戦でもこのスタジアムで戦い、カンヌを延長の末、下しているという相性のいい競技場である。この日もカレーから駆けつけたファンを中心に5000人近くの観衆が集まった。

■交代選手のファーストタッチが決勝点となったカレー

 試合は1部のトロワが貫禄を見せて25分に先制点、ところがカレーも30分にすぐさま同点に追いつく。後半に入ってリードしたのもトロワであり、52分に2点目をあげるが、カレーは63分に追いつき、試合は終盤を迎える。長いロスタイムとなった94分、カレーは絶好の得点機を迎えるが、このチャンスをグレッグ・バシュールがはずして試合は延長戦に突入する。これまでの90分間選手交代のなかったカレーは延長開始時にジェローム・デュティートルを投入する。前後半15分ずつの延長戦が始まって間もなく、デュティートルがファーストタッチのチャンスが来る。なんとデュティートルはファーストタッチがシュートであり、91分に放たれたこのシュートは決勝点になったのである。
 2000年以来、これが4回目のベスト32決定戦となったカレーはようやく今年、この壁を乗り越え、財政難に苦しむこのクラブは賞金9万ユーロを獲得したのである。

■1部チームの本拠地で1部の強豪を迎えたバスケアルとベルメル

 ノール・パ・ド・カレーから参戦している7チームのうち、1部リーグのリールとランスはアウエーでフランスカップの初戦を迎えた。両都市は静かな週末になるはずだったが、リールもランスも多くのサッカーファンでにぎわった。
 なぜならば、カレー同様ホームゲームを本来の本拠地以外で戦うチームがあったからである。リールの今シーズンの本拠地であるビルヌーブ・ダスクのリール・メトロポール競技場にはカレーと同じCFAに所属するバスケアルがボルドーを迎え、ランスの本拠地であるフェリックス・ボラールにはDHのベルメルがパリサンジェルマンを迎える。1部に所属する人気チームの来訪とあっては通常の競技場ではなく、ワールドカップクラスの競技場でなければ対応できない。ビルヌーブ・ダスクには3000人、ランスには1万5000人といつものリーグ戦よりは少ない観衆しか集まらなかったが、その多くは普段は観衆数百人の前で試合をしているバスケアルやベルメルのファンである。またバスケアル、ベルメル両チームの選手にとっては、これほど多くの観衆の前で試合をするのは初めてのことであろう。一方のボルドーとパリサンジェルマンの選手にとってはリーグ戦で年に1度訪れる競技場であるが通常はもっと多い観衆の前で試合を行っているはずである。しかし、リールやランスのファンとは異なり、この日集まったバスケアルやベルメルのファンにとっては、文字通り、歴史的な対戦である。数は少なくともその思いは1部の強豪チームのファンよりも熱いはずである。
 パリサンジェルマン、ボルドーという1部の強豪に対して、バスケアルとベルメルは善戦し、ともに前半を1失点に押さえる。しかしながら、後半に地力の差が出てしまい、結局、ベルメルは0-4というスコアでパリサンジェルマンに敗れ、バスケアルは1-3でボルドーの前に屈した。

■敗退したが、サッカー熱を感じさせたアマチュアチーム

 そしてPHのロングネスは2部のカーンと対戦した。バスケアルやベルメルと同様に本拠地を離れたサントメールでの対戦となる。このサントメールは昨年カレーがオセールを迎えた地である。ロングネスは2500人のファンの声援を受けたが、前半から失点を続け、0-4で敗れる。カレー以外のアマチュアチームは残念な結果に終わったが、本拠地を離れた試合に多くのファンが駆けつけ、この地域のサッカー人気の高さを示したのである。(続く)

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