第512回 1部勢がフランスカップに参戦(1) ノール・パ・ド・カレーからの挑戦

■後半戦とともに参戦するフランスカップ

 前回までの本連載ではフランスリーグについてご紹介したが、1部リーグのチームにとってフランスリーグの後半戦とともに始まるのが、今回から紹介するフランスカップである。
 これまでも、1部リーグのチームが参戦する1月初めにフランスカップについて紹介してきたことがあるが、それらのテーマは下位リーグのチームが1部リーグのチームを下すというジャイアントキリングが主であった。今回はジャイアントキリングだけではなく、フランスにおけるサッカーの地理的な勢力分布という点からも紹介しよう。
 ベスト32決定戦には1部リーグ所属の20チーム以外に2部リーグからは10チームが出場する。そしてさらに3部リーグにあたるナショナルリーグ、4部リーグに相当するCFA(フランスアマチュア選手権)、5部リーグに相当するCFA2、6部リーグに相当するDH(ディビジョン・オヌール)、7部リーグに相当するDSR(地域スーパーディビジョン)とPH(プロモーション・オヌール)からも参戦している。

■サッカーどころノール・パ・ド・カレー地方の7チーム

 今季のフランスリーグはリヨンが独走しているが、リヨンやサンテエチエンヌのあるローヌ・アルプ地方はフランスを代表するサッカーどころである。そして追う第二集団にリール、ランスなどのクラブがあるが、このベルギー国境に近いノール・パ・ド・カレー地方もまたサッカーの盛んな地域である。両地域とも鉱業を中心に発展してきたという歴史を有するが、この炭鉱や工場に勤める労働者がこの地域のサッカーを支えてきた。その地域において今でも多くの労働者がサッカーを愛し、フランスカップを目指しているのである。
 64チームのうちなんと7チームが北部のノール・パ・ド・カレー地方からの出場となっている。まず1部からはリーグ戦で2位を争い、UEFAカップの決勝トーナメントにも進出したリールとランス、2部からは1990年代初めに1部に所属し、マルセイユの八百長疑惑の対象となったバランシエンヌが出場する。そしてCFAからは1990年代には2部にも所属したバスケアルと2000年にフランスカップ決勝に進出して強い印象を与えたカレー、さらにDHからはベルメル、PHからはロングネスが年を越してトップクラスのチームに挑戦する。

■2000年のファイナリスト、カレーのその後

 2部以下のチームでなんと言っても注目すべきはカレーである。2000年の決勝に進出し、ナントに1-2で敗れたものの、カレー現象という言葉が生まれた。
 カレーはその後2001年の夏にナショナルリーグに昇格したものの、1年後には降格の憂き目を経験する。アジアがワールドカップで未曾有のフットボールブームに沸く中、その年にはカレーは財政難に直面する。自治体側の補助金では到底カバーできない金額の45万ユーロという赤字がカレーを襲ったのである。もしも韓国でワールドカップが開催されていなければ、韓国資本が従来のようにフランスの財政難のクラブを救済していたはずであるが、カレーにとっては運が悪かったとしかいえない。その後、カレーはCFAにとどまり、アマチュアリズムを追求したクラブ運営を行ってきた。
 そのカレーにとってフランスカップは貴重な大会である。もちろん、名誉、そして欧州への道と言うだけではない。上位に進出すれば、賞金をフランス協会から獲得することができるのである。今なお10万ユーロ以上の赤字に悩むカレーにとってベスト32決定戦に進出すれば4万5000ユーロの賞金が入り込んでくる。

■1部のトロワとブローニュ・シュール・メールで対戦

 昨年もカレーはベスト32決定戦に進出し、オセールに敗れている。今年もカレーはくじ運に恵まれず、ベスト32決定戦では1部のトロワと対戦する。原則としてベスト32決定戦では下位チームのホームグラウンドで試合が行われるが、カレーには1部リーグのチームを迎えるような競技場はない。というのも現在カレーでは新しい競技場を建設中であるが、上記のような財政面の問題により工事は遅れに遅れ、2005年に完成予定だったが、完成予定は2008年に延期されている。
 カレーにとって重要なベスト32決定戦のトロワ戦はブローニュ・シュール・メールでキックオフされることになったのである。(続く)

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