第457回 オセール、フランスカップ制覇(2) 4度目の優勝を花道に名将ギ・ルーが勇退

■1961年に22歳で監督に就任したギ・ルー

 ロスタイムの決勝ゴールでフランスカップを制覇したオセール。その殊勲者はコートジボワール代表として前日にトリポリでリビアと戦ったばかりのボナバンチュール・カルーであった。選手がそれだけこのクラブを愛していることがこのクラブの強さであろう。そしてそのクラブの精神的支柱ともいえるのが監督のギ・ルーである。本連載でもしばしば紹介してきたが、ルーの一生はオセールの一生であり、オセールの歴史はルーの歴史でもある。
 ルーは1938年にフランス東部で生まれたが、幼少のころオセールの近郊に移り住む。そして13歳でオセールのクラブの一員となる。当時のオセールはプロと程遠いアマチュアの地元のクラブチームであった。選手として頭角を現したルーは5部リーグに相当するDHリーグのポワチエに1年、そして4部リーグに相当するリモージュに3年在籍したが、22歳でユニフォームを脱ぐ。これからプロになろうという選手もいる年代で、ルーはオセールに戻ったのである。
 ルーはオセールで1961年から1970年までプレーイングマネジャーを務める。ルーが現役を引退する1970年についにオセールはDHリーグから上位のリーグへ昇格することになったのである。そしてルーが監督専業となってからクラブはとんとん拍子で出世し、4年目の1974年には2部リーグへ昇格したのである。通常は1部昇格あるいは2部残留をするためにここで大型補強を行うところであるが、ルーの選択肢は異なった。1975年には下部組織の育成センターを設立し、フランス内外から若いタレントを集めて育成したのである。この育成センターから生まれ育った選手は数知れない。

■フランソワ・ミッテラン大統領にとって最後のフランスカップで初タイトル

 そして前回の本連載でも紹介したとおり、1979年にはフランスカップの決勝に進出、ナントに敗れたものの、フランス国内中に衝撃を与えた。その翌シーズン、リーグ最終戦で勝利して1部に昇格、ルーは監督就任20周年を飾ったのである。その後はリーグ戦では必ず中位あるいは上位をキープしている。これも育成組織が次々とタレントを輩出してきたからである。逆にそのタレントがビッグクラブへと移籍するため、タイトル獲得はなかなか実現しなかった。しかし、1990年に監督協会の会長に就任したルーはサッカー界全体の利益を考え、そのようなサイクルを肯定的に受け止めていた節があった。
 そのオセールの初タイトルは1994年のフランスカップである。モンペリエを3-0と圧倒し、この大会が最後のフランスカップ授与となるフランソワ・ミッテラン大統領からカップを受け取ったルーは逆に大統領にチームのユニフォームを献上したのである。
 オセールは1996年にもフランスカップを獲得し、リーグも制覇している。リーグとカップの二冠を獲得したチームはそれ以来出現していない。

■断然トップの通算793試合の指揮

 1999-2000シーズンの終了後、ルーは一旦、監督の座を辞し、ジェネラルマネージャーとなり、2001年夏は監督に復帰する。しかし、2001年の秋、ルーは心臓病に倒れる。青年監督だったルーもすでにこの時63歳であり、さすがのルーも限界かと思われた。ところが、名将は戻ってきたのである。病に倒れて1年近くたった2002年9月11日、あの忌まわしい同時多発テロからちょうど1年のその日のソショー戦で監督に復帰したのである。そしてこの試合はルーにとって1部リーグでの783試合目の指揮となり、ニーム、トゥールーズ、モンペリエで監督を務めたカデ・フィルーの持つ記録を更新したのである。現在までに890試合を指揮し、断然トップである。2位は先述のフィルーの782試合、そして3位にはランス(Reims)の闘将アルベール・バトーの656試合という数字である。過密日程が問題となっている昨今のヨーロッパのサッカー界であるが、リーグ戦そのものの試合数はほとんど変わっておらず、このルーの残した数字の偉大さにはただただ敬服するだけである。

■歴代最多タイの4度のフランスカップ優勝を花道に勇退

 その後のタイトル獲得は心臓病から立ち直った2002‐2003シーズンのフランスカップ決勝でパリサンジェルマンを倒し、そして今シーズンもスダンを下して4度目のフランスカップ制覇となる。フランスカップ決勝はリーグ戦とは異なり、共和国大統領の前での試合となり、勝利監督は特別な立場となる。監督としてフランスカップの優勝を4回というのもリールの監督を務めたアンドレ・シューバと並ぶ記録である。そのルーがさまざまな記録とともにオセールの監督を勇退し、後任にはフランス代表を務めたジャック・サンティーニが就任することとなったのである。(この項、終わり)

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