第515回 1部勢がフランスカップに参戦(4) リール、ランスともに初戦突破

■期待を集めるリールとランス

 プロ3チームとアマチュア4チームがフランスカップのベスト32決定戦に進出したノール・パ・ド・カレー勢であるが、2部以下の5チームのうち、新年初めての壁を乗り越えたのは1部のトロワを破ったカレーだけである。半世紀ぶりの優勝をめざすこの地方の希望はやはり1部のリールとランスであろう。

■リーグカップの再戦となったサンテエチエンヌ-リール戦

 リールの対戦相手はサンテエチエンヌ、ノール・パ・ド・カレーと並んでサッカーの盛んなローヌ・アルプ地方の名門チームであるが、今回はその地域対抗と言うことに加えて、特殊な事情がある。それはもうひとつのカップ戦であるリーグカップでも両チームは対決しているのである。欧州カップが再編成されてカップウィナーズカップがなくなった現在、降らすカップとリーグカップは欧州カップ出場と言う点ではまったく同じ価値になったのである。そのリーグカップで料チームにとって初戦となるベスト16決定戦で対戦、サンテエチエンヌのジェフロワ・ギシャール競技場には2万7000人の観衆が集まった。緑一色に染まったファンの期待もむなしく、リールは序盤に2点を連取し、ベスト16へ駒を進める。昨季、リーグ上位に食い込み、インタートトカップに進出したサンテエチエンヌであるが、久しぶりの欧州を目指す戦いは不本意な結果に終わったのである。

■延長後半ロスタイムの決勝点でリールが勝利

 欧州への最初の道で足元をすくわれた緑の軍団であるが、フランスカップでも初戦の相手がリールとなり、10月26日のリーグカップ同様、ホームゲームで北の雄を迎え撃つことになった。冬場の週末、さらに地元サンテエチエンヌは主力選手をアフリカ選手権のため失っており、今回ジェフロワ・ギシャールに集ったファンは前回の半分程度の1万5000人、しかし、試合はスリリングなものとなった。両チーム、なかなかゴールネットを揺らすことができなかったが、試合はヒートアップし、両チームに多数のイエローカードが差し出された。しかも71分には地元サンテエチエンヌに与えられるべきPKのシーンで主審は反応せず、ファンの不満は募る。主審の判定に不満だったファンの反応が一転したのが81分のことである。リールのヨアン・カバエがこの日2枚目のイエローカード、リールは10人での戦いを余儀なくされたのである。アウエーゲームで一人少ないリールは残り時間を耐えて、延長戦に突入する。前後半30分の延長戦もお互い譲らず、ロスタイムに入りPK戦で決着かと思われた123分、リールのマット・ムシルーが緑のスタジアムを暗黒の沈黙に落とし込む一撃を放つ。リールは昨秋のリーグカップ戦に続き、アウエーでサンテエチエンヌを下し、51年ぶりの優勝へ最初の一歩を踏み出したのである。

■監督の采配に明暗、ランスも初戦を突破

 一方のランスであるが、リーグカップは初戦のベスト16決定戦のオセール戦で敗れており、フランスカップでは心機一転巻き返しを図りたいところである。1998年のリーグ優勝、そしてその翌年のリーグカップ優勝とタイトルを獲得しているが、フランスカップ優勝の経験はリールと対照的にいまだかつてない。リールの対戦相手のルマンは日本の松井大輔を擁して今季2部から昇格したばかりであるが、リーグでも中位で健闘しており、リールとの差はほとんどない。そのルマンは松井をはじめ、多くの選手を入れ替えてこのランス戦に臨んだ。この選手の起用を決めたのはルマンのフレデリック・アンツ監督であるが、アンツ監督は2年前にブリーブを率いてフランスカップ準々決勝に進出した手腕を買われてルマンの監督に就任したと言う経歴を持ち、確信を持っての選手起用である。
 ところが監督の采配はランスのフランシス・ジロ監督に軍配が上がった。ランスは通常の布陣とあまり入れ替えをせず、70分に投入したガボン代表のダニエル・クーザンが、決勝点をあげ、ランスはリールとともにベスト32に進出したのである。(続く)

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