第933回 着々と進む国内カップ(2) リヨン、マルセイユをフランスカップで36年ぶりに下す

■青いダービー、モナコ-ニース戦

 前回の本連載では1月24日に行われたフランスカップの注目の2試合を紹介し、日程遅れで行われたベスト32決定戦でリヨンがコンカルノーを下し、7部からベスト16決定戦に進出したシラインがトゥールーズに敗れたことを紹介した。
 ベスト16決定戦ではシラインの登場以外に注目を集めた試合が2試合ある。まず、モナコとニースの戦いである。「青いダービー」あるいは「太陽のダービー」と呼ばれているモナコとニースと古豪対決は古来、幾多の名勝負を繰り広げ、今回が実に97回目の対戦となる。
 1980年代から2000年代初めにかけてフランスサッカーでは頂点を狙う勢いのあったモナコであるが、2004-05シーズンでリーグ3位に入ったのを最後に不本意な成績が続き、今季もリーグ戦では14位である。赤と白のユニフォームカラーのユニークなデザインはグレース・ケリーの手によるもので、採用した1960-61シーズンにリーグ優勝を果たしている。
 一方のニースは長い低迷を経て復活してきた。昨季はリーグ8位に入り、今季も6位に位置している。
 両チームとも観光地にあるが、特にモナコは観客動員が振るわず、ニースから大量のファンが押しかける減少が続いている。そのせいか、過去8回のモナコでの対戦はニースの4勝4分、モナコが地元のダービーマッチで勝利したのは1996年までさかのぼらなくてはならない。

■リカルド・ゴメス監督の采配が的中し、モナコがベスト16に

 試合はクレルモンに所属し、23歳の若さで心臓発作を起こし、3日前に亡くなったクレモン・ピノーへの黙祷で始まった。昨季までは松井大輔と同じルマンに所属していたことから日本の皆様もよくご存知の選手であろう。この黙祷にニースのファンは英国式に拍手で追悼する。
 両チーム得点がなかなか入ることはなく、延長戦も想定される中で、モナコのリカルド・ゴメス監督は1人だけ選手交代を行う。その唯一切ったカードが見事的中する。79分に投入されたアレクサンドル・リカタが84分に決勝点をあげ、地中海ダービーを制し、ベスト16にモナコが勝ち残ったのである。

■不安材料の多いディフェンディングチャンピオンのリヨン

 そして、もう1つの注目カードがリヨン-マルセイユ戦である。昨年のフランスカップを制し、リーグでは8連覇を狙い首位に位置するリヨンであるが、今季は2位以下を引き離すことができず、この段階で2位ボルドーとは勝ち点1差、3位マルセイユとも勝ち点の差は4しかない。また、リヨンとマルセイユは近年フランスカップで対戦することが多く、2005-06シーズンならびにその翌年の2006-07の準々決勝で対戦しており、いずれもマルセイユが勝利している。リヨンがフランスカップでマルセイユを最後に下したのは36年前の1972-73シーズンの準々決勝までさかのぼらなくてはならない。マルセイユにとっては敵地での試合とはいえ、相性は良い。マルセイユはここでリヨンを下してベスト16に進出して20年ぶりのフランスカップ獲得を目指すとともに、リーグ戦にも弾みをつけたいところである。一方のリヨンには決定的な不安材料がある。エースのカリム・ベンゼマが不振で、シュートを放てども放てども、ゴールネットを揺らすことができず、フランスカップではまだ得点をあげることができないのである。ゴールラッシュとなったコンカルノー戦でも17本のシュートは一度もゴールにならなかった。

■ベンゼマの復活の一撃でリヨンがベスト32へ

 そのように対照的なチーム状態の両チームの戦いは満員のジェルラン競技場で始まった。両チームのゴールを守りるのはマルセイユがスティーブ・マンダンダ、リヨンがウーゴ・ロリスと現在のフランス代表の第1GKと第2GKであり、2月11日のアルゼンチンとの親善試合を控えて注目したいところである。
 しかし、予想は見事裏切られた。不振が伝えられたベンゼマが立ち上がりの2分に得点をあげ、この1点をリヨンのイレブンが守りきり、リヨンはフランスカップでマルセイユを36年ぶりに下し、ベスト16に進出した。実に昨年から通算するとフランスカップでは5試合連続無失点、延長戦の試合も含めると、480分間無失点ということでロリスの株が上がったのである。
ベスト16には1部から9チーム、2部から5チーム、3部に相当するナショナルリーグと4部に相当するCFAから1チームが進出したのである。(続く)

このページのTOPへ