第1199回 早くも大荒れのフランスカップ (1) 次々に敗退した1部勢

■大混戦のリーグ戦、荒れるフランスカップの予感

 前回までの本連載では今季のフランスリーグの前半戦は、1試合消化試合が少ないリールが49年ぶりの首位で折り返し、大混戦であることを紹介した。
 そのフランスリーグの後半戦は1月15日から再開される。この大混戦のリーグ戦の最下位の前に立ちはだかるのがフランスカップのベスト32決定戦である。例年本連載でも新春には取り上げ、読者の皆様からの反応も良いフランスカップのベスト32決定戦であるが、今季はリーグ戦でとびぬけた力のチームがないため、例年以上のジャイアントキリングが期待されそうである。

■最初に登場したトゥールーズ、ナショナルリーグのパリFCに敗れる

 1月最初の週末に行われた32試合のうち、1月7日の金曜日に1試合だけ先行して行われ、フランスリーグの序盤戦で首位に立ったトゥールーズが3部に相当するナショナルリーグのパリFCを迎えた。この試合でアウエーのパリFCは2点を先行、トゥールーズは1点返し、さらにパリFCの選手が1人退場となったが、追いつくことができず、フランスサッカー界で今年最初のトップレベルの公式戦はトップリーグのチームが2つ下のカテゴリーのクラブにホームで敗れるという波乱の幕開けとなったのである。

■PK戦にもつれ込んだモナコとニース、逆転負けしたオセール

 翌日の8日の土曜日には昼から夜にかけて22試合が行われた。15時に3試合がキックオフされ、1部勢はニースとモナコという南仏勢が登場する。ニースはナショナルリーグのクレテイユ・ルジタノス、モナコは5部リーグに相当するCFA2部のシャンベリーとアウエーで対戦する。しかしながら両試合とも下位チームが開始早々に先制点をあげ、1部のチームをあわてさせる。ニースもモナコも追いつくことは勝ち越しをすることはできず、勝負はPK戦に持ち込まれた。ニースは勝ち抜いたもののモナコは敗退してしまったのである。
 そして16時からの試合に登場したのがオセールである。オセールはCFA2部のワスクアルと対戦する。これまでの本連載でも紹介した通り、チャンピオンズリーグで、レアル・マドリッド(スペイン)、ACミラン(イタリア)、アヤックス(オランダ)とほぼ互角に戦ったばかりのオセールがアウエーでCFA2部のワスクアルと対戦することに不安を持ったファンはいなかったであろう。このオセールを迎えるとあってワスクアルは500人しか収容することができない本来の本拠地ではなく現在リールが仮の本拠地としているビルヌーブ・ダスクのノール競技場を使用する。オセールは序盤の12分に先制し、1-0というスコアのままで試合は終盤を迎える。しかし、ワスクアルは3000人の地元ファンの前で意地を見せ、81分に同点ゴールを決め、終了間際にはPKを獲得し、これを決めて2-1と鮮やかな逆転勝利を決めたのである。
 このようにここまで登場した4つの1部リーグのチームは1チームしか勝ち抜くことができず、しかもPK戦での薄氷の勝利という具合であった。

■最下位のアルル・アビニョン、2000人の地元観衆の前でPK負け

 17時からは7試合が行われたが、1部からは対照的な2チームが登場する。首位のリールと最下位のアルル・アビニョンである。初めての1部昇格チームであるアルル・アビニョンは本連載第1144回で紹介した通り、開幕から3連敗したが、その後も苦戦は続き、監督を元ユーゴスラビア代表でボスニア人のファルク・ハジベジッチに交代させたが、開幕から8連敗する。昨年グルノーブルが記録した11連敗という1部リーグの記録を更新してしまうのではないかと思われたが、ようやく第9節のブレスト戦をスコアレスドローに持ち込み、初めての勝ち点をあげる。リーグカップも含めた今季の地元での6試合目となる第10節のリヨン戦でようやく地元での初得点をあげる。初勝利はリーグカップの初戦で敗れたカーンを迎えた第12節、3-2と記念すべき1部での初勝利を挙げたが、前半戦の勝ち星はこの1試合のみ、折り返し地点での成績は1勝5分13敗の勝ち点8であり、19位のランスと勝ち点で8も差が開いている。
 このアルル・アビニョンは2部のスダンを迎えるが観客はわずか2000人余り、ファンがいかに期待していないかを如実に物語る数字である。そして試合は90分を終えて両チーム無得点、アルル・アビニョンは延長前半に1点取りながら、延長後半に追いつかれ、PK戦で敗れてしまった。
 このように1部勢が軒並み苦戦する荒れるフランスカップの幕開けとなったのである。(続く)

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