第1543回 フランスカップ準決勝への道 (5) 4強はトロワ、ロリアン、ボルドー、エビアン

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■2部降格圏内同士の対戦は最下位トロワが勝利

 フランスカップのベスト8はパリサンジェルマン、サンテチエンヌ、ロリアン、ボルドー、エビアン、トロワ、ナンシーという1部勢7チームと2部からRCランスという顔ぶれになった。
 準々決勝は4月16日と17日に行われた。この時点でフランスのクラブはすべて欧州カップで敗退しており、リーグカップも決勝戦を残すだけであり、また代表の試合もフランス代表以外の他国の代表も試合は基本的に5月末まではなく、各チームとも国内のタイトルに集中できる環境になった。
 準々決勝の組み合あわせであるが、初日の16日はトロワとナンシーという東部のチーム同士で始まり、夜はリーグカップの決勝を控えるサンテチエンヌがロリアンと対戦する。2日目の17日はRCランスがボルドーを迎える1戦で始まり、最後の試合はファン注目のパリサンジェルマンがエビアンとアウエーで対戦する。
 試合順に紹介すると、トロワ-ナンシー戦はトロワがリーグ最下位(20位)、ナンシーは18位である。1部残留を目指す両チームにとってリーグ戦に専念したいところであるが、フランスカップでは同じ思いを持つチームとの対戦となった。この両チームが10日前のリーグ戦でも対戦し、その時はナンシーが1-0とトロワを下している。試合は両チームがリーグの下位に低迷していることがわかるような内容で、攻撃に重点を置くバランスの悪い戦いでありながら、前半は無得点。後半に入ってトロワは52分、75分、80分と立て続けに得点し、ベスト4一番乗りを決める。

■リーグカップ決勝を控えるサンテチエンヌ敗退

 夜になり、サンテチエンヌがロリアンを迎える。サンテチエンヌはリーグ戦では前節は3位であったが、バランシエンヌと引き分け、マルセイユに抜かれ4位、優勝は難しくともチャンピオンズリーグの出場権をかけて3位以内に入りたいところである。また4日後にレンヌとのリーグカップ決勝を控えており、まさに国内で三兎を追う立場にある唯一のチームである。4月になってリーグ戦以外の試合を週に2回するケースは極めて珍しいであろう。しかし、負傷者が多く、万全の態勢でこの準々決勝を戦うことができない。対するロリアンはリーグ8位、準々決勝の中で一番の好勝負と言えるであろう。ジェフロワ・ギシャールには多くのファンが詰めかけ、ファンの期待通りにサンテチエンヌが試合を支配する。しかしながら前半終了間際にロリアンが先制する。
 後半に入って74分にサンテチエンヌはガボン代表のピエール・オーバミヤングが同点ゴールを決めるが、ロスタイムにロリアンのジェレミー・アリアディエールが決勝点を決め、ロリアンが2つ目の準決勝進出チームとなった。

■唯一の2部勢RCランス、逆転負けで姿を消す

 翌日の17日、RCランスがボルドーを迎える。1990年代から2000年代初めにかけて1部優勝など全盛期を誇ったRCランスも2011年からは2部暮らしが続く。今季も2部では中位であり、1部復帰は難しい。そんな地元のファンはボルドー戦ということで4万人近い大観衆が集まった。11分にボルドーのオウンゴールによりRCランスがリードする。1-0とリードしてハーフタイムを迎えるが、ボルドーは59分にRCランスに所属していたこともあるグレゴリー・セルティックが同点ゴール、81分にディアバテが逆転ゴール、さらに89分にもディアバテが追加点をあげ、RCランスの反撃をロスタイムの1点におさえ、3-2で勝利した。

■リーグ首位のパリサンジェルマン、PK戦で敗れる

 準々決勝最後のカードにリーグ首位のパリサンジェルマンが出場する。クラブ史上初めて準々決勝に進出したエビアンはスイスのジュネーブでフランスカップを戦うことも検討したが、結局通常通りアヌシーで試合を開催する。リーグ首位の貫録を見せ、8分にハビエル・パストーレが先制、しかし、エビアンも前半終了間際に追いつく。エビアンはリーグ首位チームと互角に渡り合い、120分を戦い抜く。120分終了し1-1のタイスコア、パリサンジェルマンはチアゴ・モッタがレッドカードでピッチを去り、10人になってPK戦を戦う。先蹴のエビアンは4人連続で成功、一方のパリサンジェルマンはトップのズラタン・イブラヒモビッチと2人目のチアゴ・シウバが失敗、1部昇格2年目のエビアンはフランスカップの準決勝に進出した。
 このように準決勝にはトロワ、ロリアン、ボルドー、エビアンと1部勢の下位チームが進出したのである。(この項、終わり)

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